よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

経常収支の拡大が意味するもの

2024年07月10日 | 先進国の経済学
 「日本経済はコロナ後の回復が鈍い。にもかかわらず政府は有効な手立てを取ろうとしない」ということを、この間述べ続けている。
今回は興味深いトピックがあったので紹介したい。

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5月経常黒字、2兆8499億円=過去最大―財務省


 
 財務省が8日発表した5月の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引、投資収益の状況を示す経常収支は2兆8499億円の黒字だった。黒字は16カ月連続で、前年同月比41.8%増。5月としては過去最大を更新した。利子や配当金の収支を示す第1次所得収支の黒字額が13.0%増の4兆2111億円と単月で過去最高を更新し、全体を押し上げた。
 輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆1089億円の赤字(前年同月は1兆1998億円の赤字)。輸出額は12.1%増の8兆1324億円。輸入額は9.3%増の9兆2413億円だった。
 サービス収支は23億円の黒字(同1803億円の赤字)。旅行収支が黒字幅を拡大したことなどが寄与した。 

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 記事中、二つの「過去最大」があるので混同しやすい

・経常収支の黒字額は5月として過去最大
・利子や配当金の収支を示す第1次所得収支の黒字額は過去最大

 ということを言っている。ちなみに
経常収支=貿易収支+旅行や知的財産権・特許使用料などのサービス収支+海外との利子や配当の受払いからなる第一次所得収支+政府開発援助(ODA)等の第二次所得収支(移転所得)の四つから成る。

 日本企業の海外投資の収益が過去最大となり、貿易赤字を相殺した経常収支は「5月としては」過去最大になったということだ。日本以外の国はコロナから順調に(あるいは順調すぎる)回復を示しているから海外投資の収益が過去最大となっても不思議ではない。さらに言えば投資先の各国のGDPも過去最大となっている可能性が高いということだ。

 海外投資収益はドル建てだから円に換えられて日本企業の懐に入る時には、この間の円安でさらに膨らむ。1ドル100円時代に比べれば1.5倍以上になっているだろう。

 企業の経営陣は。役員室で居眠りをしていても日本以外の各国の景気回復と円安のおかげで企業業績が上向くのだから結構な事である。ただ、筆者は「そういう人に支えられているから政府は円安を是正しようとしない」といった陰謀論はとらない。問題はもっと深刻である。

 貿易収支の赤字を海外投資の収益でファイナンス(手当てする、補う)する状態は日本が成熟した資本主義国であることの何よりの証拠である。

 問題は、資本主義のこの段階に見合った金融・財政政策が採られていないことにある。

 金融政策(日本銀行)は、そのような財政政策をとるように「異次元の金融緩和」で促してきたのに政府は一向に聞こうとしない。

 さらに世論も、円安は日銀の低金利政策に原因があるように言う。

 まさに問題は深刻なのである

続くよ~

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