よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

コロナ危機の対処法と貯蓄・投資バランス  円安の真因

2024年06月20日 | 日本経済を読む
 ケインズが「一般理論」において主張しているのは、先進国において供給は需要を上まわる傾向にあるということだ。

 有効需要の原理とは、資本は利潤が出なくなるところまで(有効需要の点)までは生産を続けるが、それ以上は生産が頭打ちになるという至極当たり前のことだ。その有効需要の点に到達したときに完全雇用は達成されておらず(正確には、その保証はなく)全ての需要が満たされているわけでもない。ケインズは先進国における「豊かさの中の貧困とその対策」を考え本にまとめた。それが「一般理論」である。

 豊かさの中の貧困を端的に示しているのが、消費にも投資にも回ることのない余剰資金の発生である。

 余剰資金の発生に対して、政府の重要な役割は貯蓄(余剰資金)と投資のバランスを取ることである。

 コロナ禍は世界経済に大きな打撃を与えたが、日本経済が被った打撃は比較的小さかった。



 しかしコロナ禍後の回復過程では大きな遅れをとっている。回復過程の遅れが金利差となって日本円を押し下げているのだが、これは政府の財政運営に貯蓄投資バランスという考え方がなかったからだ、というのが本稿の主張である。
 


 上図は2018年の政府の支出額を100とし、その後の増減を比較したものである。いかに日本政府がコロナ対策に後ろ向きであったか分かる。国民の生活と健康を守るのが政府の仕事だとしたら許しがたい事だ。さらに21年、22年と支出を減らしている。この間の貯蓄投資バランスを見ていなかったとしたら、それも大きな問題である。

 先ほど述べたようにコロナの経済への打撃は比較的小さかったが、その対処を誤ったために今の回復の遅れとなっているのだ。

政府支出のGDP比


 
 上図のように政府支出のGDP比はG7諸国の中でもアメリカと最下位を争い続けている。アメリカは年金も健康保険も「民間ベース」なので、それ込みの日本は断然最下位と言ってもいいだろう。2020年のコロナ禍で比率が上がったが、その時にアメリカより低かったのが象徴的である。 

  間の過程を省略して言うと、
 コロナ対策の不備が今の円安を招いていると言っていい。

では日本にはカネがないのだろうか?

 一国レベルでの金融資産の動向はこれまで散々論じてきたので、ここでは一つの例をあげるにとどめる。一国の経常収支のGDP比だ。


 
 大きくプラスとなっているのはドイツと日本だけだ。おカネは貯まるがその使い道が分からない人たちに財政を任しておくのは止めた方がいい。

 最後にもう一度言うが、政府の重要な役割は貯蓄投資バランスに配慮した財政運営を行うことである。

 その方法は、民間で資金が余っているときはそれを吸収して支出を拡大させ、民間で資金が足りないときには支出を削減して民間に資金を放出することである。

 決しておカネを刷って配ることではないし、いついかなる時でも財政再建をめざすことでもない。

データは全て IMF World Economic Outlook Database による。
*≪中央政府(いわゆる政府)+地方政府(地方自治体)+社会保障基金≫を連結したものを「一般政府」と呼ぶ。以下「政府」と呼称する。

政府の財政を考える 結論 国債の真の役割とは①


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