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「〇年ぶりの円安」とかがニュースになっているが、心に刺さる評論は見ない。為替相場の決定要因は、株価の決定要因のように複雑怪奇である。興味のある方は小野善康先生の「景気と国際金融」を読んでいただきたい。筆者ごときが付け加えることは何もない。
しかし、今の円安が日米金利差によるものだということは多くの人が認めるところだろう。ところが何故日米の金利差が発生したのか納得のいく説明は見かけない。22年春まではアメリカもゼロ金利政策を取っていた。今の差はどこで生まれたのだろう。
金利差でなぜ円安になるのか?
A銀行の預金金利はほぼ0%、B銀行の金利は5%だとするとA銀行の預金は全てB銀行に移ってしまいそうなものだ。お気づきのようにA銀行は円預金。B銀行はドル預金である。そうなれば円は果てしなく下がってしまいそうだがそうはならない。両者の間には為替があるからだ。
A銀行の預金100円は一年後も100円のまま。B銀行の預金100円は一年後105円。両者の間に為替があるとA銀行の預金100円は約95円になることで5%の金利に見合うものになる。こうして円はドルに対して「減価」していく。こういう現象を指して「日本は貧しくなった」という人もいるが、逆に円高になれば日本は豊かになるのだろうか?考えるべきは金利差の原因である。
なぜ日米の金利差が開いたのか
原理的な話ではなく今の情勢に即して言うと、物価上昇率の差が金利差の原因である。物価の上昇はその国の通貨を「減価」させる。金利を上げないとドルはその分下がっていく。資金はアメリカから逃げ出し、アメリカの特権である自国通貨で世界中から輸入できるというメリットがなくなる。金融不安も生じる。アメリカは政策金利を上げざるを得ない。でも日本も物価が上がっているではないか?日本の物価上昇は円安が原因であり物価上昇⇒金利上昇の真逆である。
⇒「異次元の金融緩和の出口を探る?」
ではなぜ日米の物価上昇率に差が生まれたのか
物価を押し上げる直接の力は需給バランスだ。さらに言えば需要の拡大による賃金の上昇である。需要はどこから生まれたか?
下記グラフ(政府収支の対GDP比)のようにコロナ禍の下でアメリカの財政赤字は日本よりはるかに大きくなった。コロナによる景気後退にアメリカは十分な(十分すぎるほどの)手を打ち「景気の好循環」の軌道に乗せた。それに対して日本は大したこともせずコロナ禍の景気後退からいまだに抜け出せない。これが物価上昇率の差、金利の差を生み円安を招いているのである。
World Economic Outlook database: April 2023
円安を「是正」したいなら金利操作ではなく大幅な財政出動による景気の浮揚しかないのだ。