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市場原理の下で格差が広がるのはいわば「自然」のことである。前回見たように共働き世帯の方が格差が広がるというのは日本独自の事情があるが・・・
自然のままなら、自由放任体制では格差は社会が耐えがたいほどに広がる。税と社会保障による再分配政策が先進国で行われている理由である。
日本の現状を見てみよう。
税制のゆるやかな累進性、社会保障の逆進性
以下は2023家計調査年報を元に筆者が加工したデータをグラフにした。世帯の賃金合計に占める税と社会保障それぞれの割合を示している。
税負担にはゆるやかな累進性があり(年収405万円以下が重くなっているが・・・)、社会保障負担は全所得階層であまり変わらない。変わらないどころか495万円以下では逆進性があり、特に第1十分位405万円以下では、その逆進性は高い。
このような社会保障負担の逆進性は、負担が報酬比例だけではなく大きな固定部分があり、かつ高所得階層には報酬比例の「負担の上限という免除」があるからだ。
さらに消費税という非常に逆進性の強い税制が導入され、その税率は10%となっている。上記グラフには消費税は入っていないから現実はさらに逆進性が強まっている。このことはつとに指摘されている。
今や与野党を問わず「賃上げ」を唱えるようになり、実際に上がってもいるが、所得の向上とともに減免措置や非課税限度枠を変えていかないと低所得階層の逆進性はますます重くなるが、この方向での政策論議は聞いたことはない。与野党のみならず、世間そのものが「貧困問題」に関心が薄いのだ。
*立憲民主党は低所得層への消費税の還付を提案しているが、あまり報じられない。
この格差は「先進国」において許容しがたいのではないだろうか?
以下に示すのは各所得階層の消費額(下段)と貯蓄額(上段)だ。月平均の可処分所得を消費と貯蓄に分けたものである。可処分所得だから税負担と社会負担は入っていない。
第1十分位の所得階層でも49,000円ほどの貯蓄があることより、消費額が212,000円ほどであることの方が問題である。この第1十分位の所得階層の平均世帯人員は2.68人である。どうやって生活していけというのか?
さらにグラフの色分けを見ていただきたい。第10十分位の貯蓄は396,583円だが、これは第9十分位の消費額と見合っている。第9十分位の貯蓄額は第4十分位の消費額に見合っている。第8十分位の貯蓄額は第2十分位の消費額に見合っている。
年収1167万円以上の貯蓄額は、971万~1167万の第9十分位とほぼ見合い、それ以下の層の消費額を超える!
このような格差は。先進資本主義国としての日本の維持・発展にとって有害である。
上図のように、高所得階層ほど消費性向(消費額÷可処分所得額)は下がる。しかも相当下がる。ということは格差の拡大は家計全体の消費性向を下げ景気の下押し作用がある。逆に税と社会保障による再分配は家計全体の消費性向を上げ景気の持ち上げ効果がある。
貧困対策は、「かわいそうだから」行うわけではなく
それが時々の景気、一国全体の長期にわたる経済成長に必要だから
行わなければならないのだ