アベノミクスは存在したのか?
ケインズを生かす
安倍政権については、すでにいろいろな評価が出ており、筆者などが参入する余地はないのだが、あまり論じられていない点を一つ。
政権長期化の秘密
まずグラフを見ていただきたい。
- 2013年に有効求人倍率が1.0倍を超えた
- 2010年から2018年まで直線的に増加している
- 2013年を境にして増加傾向に変化は見られない
そして次のグラフである。
- 賃金総額、一人当たり賃金、雇用者数とも2013年を境に増えている
- 2013年は政権交代の年である。アベノミクスの「効果」のように見える
- 上げ幅は、賃金総額>雇用者数>一人当たり賃金の順である
賃金総額、一人当たり賃金、雇用者数とも2013年を境に増えている。これがなんだかんだ言っても政権が長期化した秘密である。そういう意味では安倍前首相は「強運」の持ち主である。強運というのは、たまたまその時期に政権交代があったという意味である。運でしかなかったのは国民の不幸だ。
アベノミクスは存在したのか?
その昔、中国の大人が「赤い猫でも、白い猫でも、鼠を捕る猫がいい猫だ」と言ったそうだが、安倍政権は鼠を捕ったのだろうか?
安倍政権の前と後では上昇傾向に変化は見られない。それどころか2018年には上昇傾向が頭打ちとなり、消費増税とコロナで崩壊している。
有効求人倍率が1を超えれば労働需給がタイトになって賃金は上昇を始める、という当たり前の真理を証明しただけである。筆者は、2010年以降は誰が政権を担当しても、アベノミクスを発動しなくても、結果は変わらなかった、と見ている。
民主党政権が、間もなく有効求人倍率が1.0を超え、賃金も上昇を始めるということに気が付かなかっただけだ。雇用動向に関心がない政権を労働者が支持する理由はないのだが・・・
結論は、「アベノミクス」は言葉のみで存在せず、民主党政権がもう少し我慢していれば自らの成果にできたものを、安倍政権にさらわれたというものである。
では有効求人倍率上昇の原因は?
日銀の金融緩和で円高が是正され輸出がよみがえったのがアベノミクスの功、という俗論がある。為替で輸出増と言う理論は「近隣窮乏化政策」と言われ、経済政策の邪道中の邪道、愚策中の愚策である。それも、そのような効果があったとしてだが。
筆者は、労働供給面と労働需要面の二つの原因があると考えている。
いずれも日本社会に根本的な転換を迫るものである。
以下、次回