本ブログでは、Fantasy Footballの結果や、実際のプレイオフの試合結果のほかに、
数字を使ってNFLの面白さを考えるコラムも掲載します。
Excelなどを使って計算する例もいくつかあるでしょう。
その第1回はNFLのタイブレークルールを
大相撲の優勝決定にあてはめてみるとどうなるかというお話です。
2016年1月24日に千秋楽を迎えた大相撲初場所。
日本出身力士として10年ぶりの優勝にあと1勝と迫っていた大関琴奨菊が、
豪栄道を下し、見事に初優勝を飾りました。
トーマスも優勝決定の一番をテレビで見ていました。
もし琴奨菊が負けて白鳳が勝つと、優勝決定戦でしたね
(結局その後の取り組みで白鳳は負けたらしいですが)。
先に戦った琴奨菊が自力で優勝を決めたのは立派でした。
NHKはその瞬間にニュース速報を、Asahi.Comは号外を打ちました。
そんな星取表を見てたトーマスに、あることがひらめきました。
「NFLだったら、そもそも優勝決定戦はなくて、昨日の時点で琴奨菊優勝じゃね?」
つまり琴奨菊は白鳳に直接対決で勝っているので、
たとえ琴奨菊と白鳳が千秋楽の勝敗によって並んでも、
NFLのタイブレークルールなら琴奨菊が優勝という意味です。
じゃあ相撲の優勝を、NFLのタイブレークルールで当てはめるとどうなるのだろう。
それが今回の妄想の出発点でした。
NFLのタイブレークルールは以下の通りです(Wikipediaからの引用です)
2チーム間のタイブレーク
1.直接対決があれば、その試合の勝率
2.同じカンファレンスのチームと対戦した試合での勝率
3.共通のチームと対戦した試合での勝率(2試合以下の場合、適用しない)
4.勝利した試合の対戦相手の合計勝率
5.レギュラーシーズンの対戦相手の合計勝率
6.同じカンファレンス内での総得失点差順位
7.リーグ内での総得失点差順位
8.共通のチームと対戦した試合での総得失点差
9.レギュラーシーズン16試合での総得失点差
10.レギュラーシーズン16試合での総得失TD差
11.コイントス
ここで相撲の場合、原則上位力士はほぼ総当たりで、
しかも場所中は取り組みは1回なので、
(同地区だと1シーズンに2回対決があるNFLとはここが違いますね)
1.の直接対決の勝者が、自動的にタイブレーク上位者になります。
2016年初場所の場合、琴奨菊が白鳳に勝っているので、
勝ち星が同じでもNFLならこの時点で琴奨菊が優勝です。
大相撲のほとんどの場所では、優勝を競い合っている力士には直接対決をさせるので、
相星で並んでも決定戦は存在しない(直接対決で勝った方が優勝になるため)ことになります。
では、相撲で直接対決がないのに優勝を競い合うことはあるのでしょうか。
あるんです。それは、同部屋の場合。
相撲では同部屋の力士とは原則、本場所で取り組みがないので、
直接対決がないまま優勝決定戦になる場合があるのです。
これまで同部屋同志の優勝決定戦は8回あったようです。
その最後となったのが
平成9年(1997年)11月(九州)場所
大関貴ノ浪と横綱貴乃花の対戦でした。
両者ともに千秋楽を終えて14勝1敗でしたが、
優勝決定戦では貴ノ浪が勝ちます。
ではそれぞれのレギュラーシーズン(15日間)の星だけで、
タイブレークを付けるとどうなるのでしょう。
平成9年11月場所の取組星取・番付表が、Sportsnaviのサイトにありましたので
このデータからはじき出してみましょう。
まず、
1.直接対決があれば、その試合の勝率
は上に述べたとおり、ありません。
次の
2.同じカンファレンスのチームと対戦した試合での勝率
は、大相撲にカンファレンスという概念がないのであてはめられません
すると
3.共通のチームと対戦した試合での勝率(2試合以下の場合、適用しない)
で差が付きそうです。
その前に2力士の勝敗表を見てみます。
貴乃花は5日目の旭豊に敗れています。
初日 栃乃洋
2日目 武双山
3日目 土佐ノ海
4日目 玉春日
5日目 旭豊●
6日目 浜ノ嶋
7日目 琴錦
8日目 小城錦
9日目 魁皇
10日目 千代大海
11日目 栃乃和歌
12日目 肥後ノ海
13日目 巌雄
14日目 栃東
千秋楽 武蔵丸
貴ノ浪は9日目の小城錦に敗れています。
1日目 土佐ノ海
2日目 千代大海
3日目 浜ノ嶋
4日目 栃乃洋
5日目 玉春日
6日目 魁皇
7日目 旭豊
8日目 琴錦
9日目 小城錦●
10日目 栃乃和歌
11日目 武双山
12日目 琴稲妻
13日目 肥後ノ海
14日目 武蔵丸
15日目 栃東
では貴乃花と貴ノ浪の共通の対戦相手を調べてみると、
旭豊
魁皇
玉春日
琴稲妻
琴錦
小城錦
千代大海
土佐ノ海
栃東
栃乃洋
栃乃和歌
肥後ノ海
浜ノ嶋
武双山
武蔵丸
が共通です。
貴乃花が13日目に戦った巌雄と、
貴ノ浪が12日目に戦った琴稲妻以外の14力士がすべて共通の対戦相手です。
では再度、
3.共通のチームと対戦した試合での勝率(2試合以下の場合、適用しない)
を考えてみます。
結論はわかりますね。
どちらも14戦やって13勝1敗なので、勝率は同じでした。
では
4.勝利した試合の対戦相手の合計勝率
を見てみましょう。
これは、14力士の星取表をいちいち見なくてもよく、
差分に当たる、巌雄と琴稲妻の勝ち星を数えればよいのです。
貴乃花が勝利した試合の対戦相手の合計勝率は
(14力士の勝ち数+巌雄の勝ち数)/(15力士×15日)です。
一方の貴ノ浪が、勝利した試合の対戦相手の合計勝率は
(14力士の勝ち数+琴稲妻の勝ち数)/(15力士×15日)です。
では巌雄と琴稲妻の勝ち星はいくつだったでしょう。
巌雄は7勝8敗、そして琴稲妻は5勝10敗でした!
つまりこのルールに当てはめると、
貴乃花の方が、勝利した試合の対戦相手の合計勝率が高かったことになるので、
貴乃花が貴ノ浪を上回っていることになります。
つまりNFLのタイブレークルールを適用すれば
平成9年九州場所は、優勝決定戦をする前に貴乃花の優勝ということになりました。
念のため、当該場所の巌雄と琴稲妻の直接対決を調べてみたとところ、
なんと初日に巌雄が琴稲妻に勝利。もしこの勝利が逆転していたら、
巌雄も琴稲妻も6勝9敗でした。
そうなると、4.の条件も同じになるので
5.レギュラーシーズンの対戦相手の合計勝率
が適用されます。
この場合、差分は巌雄も琴稲妻の勝率がモノを言うのですが、
どちらも同じ勝率なので5.でも決着はつきません。
6.~10.の条件は相撲には当てはまらないので
残る決定法は11.コイントスになりますね。
なお現実では、優勝決定戦を制した貴ノ浪が優勝しています。
もちろんレギュラーシーズン16試合が終了した時点で
全チームの順位を決めないといけないNFLと
レギュラーシーズン(本場所15日)を戦った後、
千秋楽に優勝決定戦を戦える大相撲とでは事情が違います。
でもこうした詳細な順位決定ルールができていると、
対戦相手の勝敗までを気にしないといけなくなり、さらにファンの関心は広がりますね。
このあたりも、NFLの魅力の一つ、という見解を示して、
今回のコラムは終わりにします。
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