タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪ 天皇陛下の諡号 ≫

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 皇室にかかわる法律や仕来りについて、私はほとんど知見を有しないが、明治天皇・大正天皇・昭和天皇という諡号が、御生前の事蹟を称え、崩御後に公式に贈られることくらいは知っている。現に在位されている天皇陛下は、今上天皇と呼称される。
 立諡制度の起源は中国にあり、「秦の始皇帝によって一時廃止されながらも、西漢以降中国の歴代王朝に踏襲され、日本には少なくとも天平宝字六年(762年)以前に律令政治の成立と前後して輸入された」(フリー百科事典『ウィキペディア』)らしい。日本では天皇諡号に、国風諡号と漢風諡号の二種類が生じ、時代の変遷と共に衰微廃絶を経て、江戸時代に漢風諡号が復活し(上掲百科事典を参照)、今日に至っている。
 今回の投稿で、天皇陛下の諡号を取り上げたのは、雑誌『諸君』第39巻第12号(文藝春秋)の、「輝ける文士たち 文藝春秋写真館(20)」<サトウ・ハチロー>の頁で、いささか気に障る文章を見つけたからである。カギカッコ付きで、<昭和24年、「昭和天皇と民間人の団欒を」と、入江相政侍従、辰野隆(仏文学者)らが企画。話し相手に徳川夢聲とサトウが選ばれ、実現した>とある。
 カギカッコ使用の原則の一つは、人の話した、あるいは書いた文言をそのまま引用することである。他の者ならいざ知らず、入江侍従が、時の今上天皇を「昭和天皇」と呼ぶことは絶対にあり得ない。筆者の樋口進氏の言葉尻を論うつもりはない。彼自身の地の文の意識がつい出たのだろう。
  <写真は、昭和24年5月29日、終戦後の地方巡幸で福岡県大牟田市を訪れた    際、三井三池炭鉱三川坑の切り羽に入るため人車に乗られた御姿。雑誌『アサ    ヒグラフ』通巻第3470号(朝日新聞社)から転写>

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