タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

断捨離を免れた我が書物たち=『 [詳解] 独ソ戦史 最新資料が明かす「史上最大の地上戦」の実像』

共著者:デビッド・クランツ/ジョナサン・M・ハウス
訳 者:守屋 純
出版社:株式会社 学習研究社
発行日:2003年5月2日(第1刷)

 上掲書は、1991 年のソビエト社会主義共和国連邦の崩壊によって利用が可能になった、ロシア語の公文書や回想録等の資料に基づく、史上最大の地上戦「独ソ戦争」についての軍事研究書である。

 第2次世界大戦後何十年もの間、西側の歴史家は、この戦争をほとんどドイツ側の視点から叙述してきた。その結果、旧ソ連軍の実態から目を逸らしたまま、ドイツ軍敗退の原因を安易に「冬将軍」や「泥濘」あるいは「国土の広大さ」などに求めるのが通例となったのである。

 それは主として、旧ソ連の秘密主義や専らプロパガンダに徹した政治的歴史的事実認識に起因するが、他方で、米ソ冷戦の発生によってアメリカや NATO 諸国の間で、独ソ戦争に従軍した旧ドイツの軍人の証言が重要視されたことが大きく与したのも事実である。

 しかし今後、プロパガンダとは無関係で、しかも旧ソ連側の立場に依拠するこの軍事研究書の公刊は、独ソ戦争の真実を解明しようとする研究者にとって明確な道標となるだろう。歳月の試練に耐えうる第一級の業績だと思う。

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