5月4日、国民の祝日<みどりの日>の朝、NHKテレビで7時30分から、「開発進む北海道富良野に森を再生・倉本聰さんに聞く」という番組が放映された。平成17年に、富良野プリンスホテルゴルフコースが閉鎖される際、その場所を森に戻すという提案が受け入れられ、倉本氏は、NPO法人CCC富良野自然塾を立ち上げ、事業を開始したのだという。
彼は、富良野自然塾HPの塾長メッセージで、「森に還すとは、単に植樹をすることではありません。近隣の森から、種や実生や若苗を採取し、移植可能な時期まで育てて初めて地面に植えつけるという忍耐と歳月の遠大な作業です」と述べている。蘇った森を自分が見ることのできないこの事業を、未来につなげたいという彼の壮大な気宇と、会社の経営破綻ゆえに、自然破壊の元凶たるゴルフ場を平気で放置しようとする財界人の無責任さとを比較してみるとよい。日本の財界人は、いつからこのような腰抜けに成り下がったのか。
上の写真は、釧路市近隣の某造林地である。倉本氏が目指している、「森に還す事業と同時に、そのフィールドを利用しての環境教育事業」とは全く無縁の、単なる<造林業者の、造林業者による、造林業者のための>造林事業にすぎない。このまばらなアカエゾマツの植列を見よ。地ごしらえを終え、苗木を植えたあと、翌年からの下刈り作業で、どれほどの苗木が、雑草とともにエンジン苅払機の餌食にされたことか。こんな哀れな造林地を私は見たことがない。
そもそも、岩盤の上に僅かに表土がのった急傾斜の森林を、皆抜方式で丸裸にし、何年も放置したのが間違いの元で、莫大な費用をかけて造林を行っても、見るも無惨な表土の崩落を防ぐことは至難の業と言わざるを得ない。左右の崩落箇所を記憶しておいて頂きたい。今後、植えつけられたアカエゾマツがどれほど消失するか、表土崩落がどこまで広がるか、崩落した土砂が沢を伝って河川に流れ込み、砂浜の海をどれほど荒廃させるか。漁業への影響は甚大であろう。
しかし、救いがないわけではない。山の急斜面から、林道の縁まで幅500メートルくらいの平坦地となり、小さな流れの両脇に、左の写真のように、アカエゾマツが2メートルの高さまで生育し、グリーンベルト状をなしているからである。急斜面でのエンジン苅払機による下刈りが、いかに難作業で苗木に損傷を与えるか分かるであろう。アカエゾマツの生育密度の違いが、そのことを明白に証明している。
今後、このグリーンベルトが生長し、崩落した土砂が沢に流入するのを防いでくれるかもしれない。サケ・マス中間育成施設ができたとたん、下流の小沢という小沢に、ずらりとコンクリートの土砂流出防止ダムを建設するだけが能ではあるまい。上流の支流で、山肌全体が崩落し土砂が流出している現状を放置し、見えるところだけをつくろって何の効果があるのか。地方自治体であろうと国であろうと、森林の管理に携わる者は、山の地勢を知り長期的展望を持つ必要がある。