ラジヘリ空撮

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業務にも使用可能なガソリンヘリ用マフラーに付いて・・・パート4

2012-04-22 00:01:00 | マテリアル
前回までに、2サイクルエンジンに於いて、本来の性能を発揮させる為には、高性能なマフラーが必要になる事は説明した。

それが・・・エキスパンション・チャンバー(Expansion Chamber)と、言う名称のマフラーで有る事も説明した。

日本語に直訳すると・・・Expansion=膨張、Chamber=部屋・・・と言う事だが・・・一般的には、膨張室と
訳されている。


では、何故そんな・・・膨張室が必要なのだろうか?

2サイクルエンジンが燃焼する場合は、掃気と排気のタイミングがオーバーラップしている為に、
そのままでは生ガスが、燃焼室に効率良く充填されない。

それを改善する為に・・・2ストロークエンジンでは、一般的にチャンバーと呼ばれるマフラーが必要になるのだ。


その形状は・・・エンジンの排気口に取り付けられた、マニホールド(エキゾーストパイプ)に、膨張室と呼ばれる
ラクビーボールの様な形状をしたモノを取り付けて有る。

その膨張室は・・・入口と出口が急激に絞られた様な形状になっていて、折角燃焼室に吸入(掃気)された
混合気の一部が、燃焼しないまま排気ガスと一緒に大気中に放出されてしまうのを防ぐ・・・と言う訳だ。

因って・・・燃焼室への混合気の充填効率を損なわない様にする為に、チャンバーが必要になると言う事だが・・・。


では・・・その理屈はどうなっているのだろうか?


まず・・・エンジンの排気ポートから排出される排気ガスは、脈動(圧力波)しながらマニホールドを経て、
チャンバー前部の膨張部で急激に拡散しながら膨張室へ入る。

やがて・・・排気ガスはマフラー出口へと到達するが、その圧力波がチャンバー出口付近の絞り部に達すると、
その一部が反射波となって排気ポートへと、押し戻される訳だ。

この反射波が戻るタイミングが重要で、エンジンの特性をほぼ決定すると言っても・・・過言ではないだろう。


実際にチャンバーを設計する時には、使用目的に応じて計算で、チャンバーの長さや容積を
決定している様だが・・・最終的にはカットアンドトライで煮詰めを行うのが普通らしい。


最終的には・・・人間(テスター)の感性次第と言う事だろうか?

しかし・・・このテスター如何では・・・全てがぶち壊しになる。


このチャンバー・・・良い事ばかりではないのである。


それは・・・パワーを追求し過ぎた場合には、明確なパワーバンドを生じると言う点にある。


どう言う事かと言えば・・・あまりピーキーな性格にし過ぎると・・・バイクでサーキットなど
アップダウンが激しいコースでは・・・いとも簡単にパワーバンドから外れてしまう。


一度パワーバンドから外してしまった場合には・・・全くと言って良い程、アクセル操作による
エンジンのレスポンスを得られなくなると言う事だ。

これを・・・トルクの谷・・・等と、言ったりする。


こうなると・・・バイクのレーサーなどでは、再びパワーバンドに乗るまで(回転が元に戻るまで)
我慢しなければならないし、急に減速してしまうので・・・特にレース中などでは、
後続車に追突される危険性が高まる。



又・・・気候変動(温度・気圧・湿度)にも影響される事が多く、キャブレーションも結構シビアになるから
注意が必要なのだ。


まあ・・・バイクなどでは・・・回転が復帰するのを待っていれば良い?のだが・・・ヘリに使用する場合は・・・
最悪・・・墜落してまうから、厄介であると考える。



因って・・・特にラジヘリで使用するチャンバー(マフラー)の場合は、比較的大きな膨張室を持つ、
トルク型のチャンバーが適していると・・・思われるが、当然尖ったピークパワーを得る事は出来ない。


それから・・・一般的にチャンバーは、マニホールドと膨張室が独立している為に、構造上その全長がどうしても
長くなってしまうし、重量も・・・当然重たくなってしまうのもデメリットとして上げる事が出来よう。


その結果・・・これを機体に取り付ける時には・・・どうしても、その重心が後方へ移動してしまうと言う問題が
生じてしまうのだ。

ラジヘリでは、前後方向の重心が重要なので、これを改善する為に・・・カウンターウエイトなど
搭載しようモノなら・・・機体重量がどんどん増してしまうので、マイナスのファクターで有ろう。



それから・・・優れたチャンバーの場合には、出力も2割程度向上するのでパワー的には優位にあるが、
構造上マフラーサイズが大きく成らざるを得ないので、その重量と向上したパワーとを天秤に掛けて
マフラーを選ぶ必要があるだろう。


良くあるのが・・・実際に2割程度パワーアップしたが・・・その分機体重量が増えてしまい・・・結果、
パワーUPした分が帳消しになってしまったなどと言う事も・・・実際に発生するので注意が必要だ。


その様な・・・リスクを考慮すると・・・パワーはそこそこでも・・・出来の良い軽量な、ノーマルマフラーを
使用したいと・・・私は思っている。

空物は・・・出来れば・・・軽いに越した事はないのだから・・・。

その方が・・・機体の各部に掛るストレスが確実に減少し、機体の耐久性にも寄与する・・・
と、考えるからなのだが・・・皆さんは、如何お考えだろうか?

以下の写真は・・・これまで弊社でテストしたマフラーの内、現存する物なのだが・・・これらは全て弊社の
要求に答える事は出来なかった。



一番上の・・・チャンバータイプのマフラーは、テストを依頼されたのが7~8年前になるが・・・その当時は、
マニホールドが如何ともしがたく・・・格好こそ、それらしい形状ではあったが・・・唯の重いマフラーだった。

このマフラー・・・最近、マニホールドを変更して、リニューアルされたらしい。

先日の・・・富山のイベントでも使用していた機体があったが・・・とても、その性能を発揮している様に
見えなかったのが・・・残念であった。


左端の縦に2本並んでいるマフラーは、一時期人気が有ったマフラーだが・・・ヘンテコリンな理屈で
製作されていた為に、興味本位から使用してみたのだが・・・エンジンが異常燃焼を起こすなど・・・
全く良いところが無かった。

やはり・・・理屈に合わないモノなど・・・所詮使い物にならないと、言う事なのだろうか?


右下のマフラーは・・・マニホールド形状が悪く・・・整備時に、エンジンからマフラーを外したくても
外せないなどと言う、オカシナ状況になった。

原因はマニホールドの熱変形によるモノだった。

S45cで製作されているマニホールドのフランジ部分を、もっと厚くして、加工精度を上げれば
良かったのだろうが・・・これには・・・流石に困った。


以上の様に・・・なかなか業務用に使用出来るマフラーが市販されていないのが、現状と言う事ではないだろうか?


これまで色々と2サイクルマフラーについて、理論的な事を話して来たのだが・・・
結論として・・・業務用のラジヘリに使用する事を考慮すると・・・その最適なマフラーとは・・・

パワーはそこそこでも、安定したエンジンの回転が得られ、尚且つ、軽量で消音効果に優れ、
マニホールドの緩みが出ないモノが最適なのでは無いかと、私は考えますが・・・
皆さんは如何お考えでしょうか?

マニホールドの緩みが招く・・・排気漏れなど・・・最悪ですからね。


次回は・・・消音効果を一段と向上させる・・・サブマフラーの話をしたいと思います。

では・・・又~。






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