2025.2.19
ピアニストの名前を聞いたことがありませんでした。
CDもなし。情報を予習することもなくミューザ川崎シンフォニーホールへ向かいました。
ステージに現れた青年は、童顔でまだ幼さが残る19歳。
早くも1曲目のショパンのバラードで、心を撃ち抜かれました。
本当に美しい。あんな美しいショパンを聴いたことがありません。
息を呑むほど感動し、涙も出そうでした。
演奏技術は完成されていて、何よりもその叙情的な表現の豊かさに魅了されます。
名前はケヴィン・チェン。
カナダ出身のピアニスト。演奏時は19歳(3月で20歳に)
5歳でピアノを始め、8歳でカナダ音楽コンクールに優勝、10歳になる前にはカナダ放送協会による「30歳以下の注目すべきカナダ人クラシック演奏家30人」等に選出されるという天才ぶり。
2020年3月 ヒルトン・ヘッド国際ピアノコンクール(米国)優勝
2020年8月 モーツァルト国際ピアノコンクール(スイス)優勝
2021年 リスト国際ピアノコンクール 史上最年少として優勝。
2022年 ジュネーブ国際音楽コンクール優勝
2023年 アルトゥール・ルービンシュタインピアノコンクール優勝
という快挙を10代にして成し遂げています。
演奏前半は、ショパンのバラード4番、幻想ポロネーズ、そしてドン・ジョヴァンニの変奏曲「お手をどうぞ」。
このドンジョバンニは、これがケヴィン・チェンの特性なのかと思えるほど自由闊達な演奏。
後半は、リストのバラード2番、シューベルト「魔王」のリスト編曲、リストの「イタリア」よりペトラルカのソネット104番、そしてリストのドン・ジョヴァンニの回想。
ケヴィン・チェンの本領は、リストで明確になりました。超絶技巧も難なくこなし、「魔王」についてはドラマティックに、ソネットは詩的にロマンチックに、どんな曲でも表情豊かに自由自在に弾きこなす。
演奏後は、客席からの盛大な拍手。四方の観客に向かって深々とお辞儀をします。礼儀正しいし、可愛い。
一度舞台袖に下がっても、急いで戻ってきてアンコールに応えてくれます。
アンコールは3曲。シューベルト(リスト編)水に寄せて歌う、ショパンのマズルカイ短調、シューマン(リスト編)の春の夜。
ケヴィン・チェンさんの評判はピアノ界では注目されているらしく、多くのピアノ演奏家や教育者たちが駆け付けた様子。
まだわかりませんが、今年のショパン国際ピアノコンクールの優勝候補と噂されています。
新たに、才能ある素晴らしいピアニストに出遭えました。
