前回のレッスン記の投稿から2か月振りです。その時に触れていたヴィヴァルディ協奏曲ト短調の第3楽章は、実は一週間前の発表会で弾く曲だったため、練習に励んでおりました。3ヶ月も同じ曲を弾き続けていたわけですが、これが発表会の準備というものですね。
5月下旬。発表会まであと数週間という時です。だいぶ出来上がっていてもおかしくないのに、突然不調になりました。前にきれいに弾けていたところが弾けなくなる、下手になってしまう現象が起きてしまいました。練習疲れなのか、練習不足なのか。因みにヴァイオリンの練習を1日休むと3日前に戻ってしまうそうですが、私の場合は、練習しなかった日の翌日は1週間前に戻ることもあります。
更に、ピアノと初合わせをした時は、途中の16分音符で私が暴走気味になったせいもあって、ピアノが速度を速めてしまい、リタルダンド(段々ゆっくり)のところもそのままの速度で弾かれてしまったため、弓が吹っ飛びそうなほどの勢いで弾くことになり、ピアニストは、こちらの演奏に合わせてくれないのか、とかなり不安になりました。然も、音合わせはたった10分でしたし。
この曲は、前奏がなく、ピアノと同時に開始するのですが、ヴァイオリンはピアノを背にして弾くので、アイコンタクトもできません。どのように合わせるのか疑問だったわけですが、3拍子の曲は、1で用意の姿勢、2で弓と顔を少し下げて、3で弓を高く上げる、と同時に息をスッと音を立てて吸う、ことで合図をします。この2と3の速さが曲の速さとなるので、それを見ればピアニストが、ヴァイオリン演奏者の弾きたい速度がわかるのだそうです。
初めてのことで慣れていなかったため、何度も練習しました。3で弓を上げた時に、勢い余って最初の一音がズレてしまったり、ボヨーンとバウンドしてしまうこともしばしば。結局、本番では、この合図は成功したのですが…
発表会当日です。今回の参加者はほとんど子供でした。コロナ禍で、無観客、グループ毎の入れ替え制でしたので、その中で大人は私だけ。楽屋での練習はまあそこそこ上手く行き、大丈夫かなと思っていたのですが、本番でこのような事態になるとは思いませんでした。
舞台袖には4人ごとに入り、椅子が用意されています。順番は、先に子供が3人、私は一番最後。この舞台袖でどう待てばよいか、が私の演奏に大きく左右しました。
きっと大人だけだったら、並んで座って、ヴァイオリンを膝の上で支えて大人しく待っていただろうと思いますが、子供達は発表会に慣れている上にに落ち着きがない。ヴァイオリンを椅子の上に置いたまま、ステージの脇へ近づいて、先の子の演奏を覗いて見ているわけです。
子供用の楽器は小さいので、椅子の上に置いておけるのですが、大人用は落ちてしまうので、持っているしかありません。
椅子に座っている人がいないため、私は何か落ち着かず、エアコンの冷たい風も直撃してくるので、ヴァイオリンの首を握って立ったり座ったり。その状態で10~15分だったでしょうか。
あまり緊張感はなかったのですが、強く握りしめていたんだと思います。
さあ、私の番です。ステージの定位置まで歩いていき、譜面を置いて挨拶して、楽器に左手を添えました。その時、何か、左手が冷たくて指が硬くなっていることに気が付きました。なんか、おかしいかも、と思いながらも、弓を高く上げて演奏開始した瞬間、指が硬直してスムーズに動きません。
指がもたついてピアノとテンポがズレ、ミスするはずのないところでミスを、あー、どうしよう。
そこから動揺が始まり、ちゃんと弾いていた記憶がほとんどありません。曲の中盤で、ピアノがどこを弾いているのかわからないほどズレているのに気が付きましたが、そのまま自分のペースで突っ走っていきました。
どこでピアノと合流できたのか覚えがありませんが、ちゃんと弾けた、ピアノと合ったと確信できたのは、最後の30小節だったかと思います。
フィニッシュは決まりました。終わり良ければ総て良し、ということにはなりましたが...悔しいですね。
練習に費やした3か月は一体何だったんだろうと、後悔と自己嫌悪です。
子供達の家族以外、無観客だったのが、せめての救いでした。
終わって落ち込む私に、発表会を何度か経験している小学高学年の女の子が、「今日は一緒に出られて楽しかった」と言って励ましてくれました。優しい子です。