夕べのフォーレの曲にのる
フランス語の美しき詩
カフェの主による訳詩が添えられていました。
美しき詩をここに。
歌曲集「優しき歌」作品61
1.後光に包まれた聖女
言葉が含む、優雅さと愛のすべて
無垢の白 勝ち誇るほほえみ
彼女のカロリング朝風の名前のうちに
そのすべてがきこえる
2.黎明は広がり
幸福がすべて
ぼくのものになろうとしている
優しい焔美しい目に導かれて
はかどらぬ道を
まっすぐに歩きながらぼくは歌う
あのひとは不愉快な顔もしないで
この歌を聴いてくれるだろう
ぼくはそれ以外の楽園を求めない
3.白い月は森を照らす
虹色に染まった星空から
広大なやさしい憩いが降ってくるようだ
この上なく美しい時間
4.ぼくは不実の道を歩いていた
ぼくは不実の道を歩いていた
なつかしい君の手がぼくの導き
遠い地平線に
かすかな希望が光っていた
君のまなざしは朝
5.本当に僕は怖いくらいだ
きみのひとつの言葉
ひとつのほほえみが
今後は僕の法律となってゆく
きみが好きだ きみが好きだ
いかに陰鬱な思いが繰り返されようとも
限りない希望を通して
きみを見ていたい
6.お前が消えてゆく前に
あおざめた暁の空
おまえが消えてゆく前に
まだ眠りからさめぬ恋人の
甘い夢のなかでお前のまなざしを
詩人の方へめぐらせておくれ
ひばりはのぼる陽とともに
空に向かって舞い上がる
7.さて それは或る明るい夏の日のことだ
ある明るい夏の日
太陽はあなたをさらに美しくうつす
青ざめた二人の幸福な額の上
空高くはられた天幕のような青い空
夕暮れの愛撫するようにたわむれる風
やさしくほほえみかける
星たちのおだやかなまなざし
8.ねえ そうだろう?
楽しく急がずに微笑む希望が
私たちに指し示す謙虚な道を
人に気づかれる心配もなく
二人の心は
安らかな優しさを呼吸しながら
夜に歌う二羽のウグイスとなる
子供のような魂をもって
9.冬は終わった
冬は終わった
大気の中に散らばった
限りないよろこび
春のみどりが炎が炎を包むように
ぼくの理想に理想を重ねる
ことごとく希望のかなえられた今
すべての季節が魅惑的なものになる
君を飾りあげるこの理想この理性!
まあ、なんという甘美な詩でしょう…。
さすがにこんな詩をフランス語で歌いあげられますと
ちょっとすごいわねえと
なおみちゃんとささやきました。
彼女も私も書物を愛する人でした(笑)
彼女は今でもそうですよ。
こんな詩を歌いあげられたら
ちょっとフランス語でも勉強したくなるものよねと
話していたのでした。
高校生の頃
どこに隠れてたの?
「私は丸善の中!」
「私はアングラな劇団の劇場の中!」
(笑)
(笑)
(笑)
似たようなものねえ。
クリスマスの前になると
教会で歌われてた聖歌のことが思い出されて
お互い、うちはクリスチャンではありません!洗礼などももってのほかと言われたねえと
笑っていました。
眠る前のお祈りの言葉
もう忘れた?
地下鉄の駅で
顔を見合わせてそんな話をしてました。
何が好きだったの?
「私はエッシャーやマグリッドが好きだったわ。」
私が言うと彼女は
「かなりマニアックねえ。」
そう言って笑った。
「わかるわあ。」
そう、そんな世界に隠れていたなあと。
丸善の洋書の中に
隠れる森はあったわねえと
そう言いました。
高校生の頃
一度も交わさなかった言葉を
今引っ張り出してかわしてました。
夜のとばりの中で
お互い生活がのしかかってはいるのですが
それをわかったうえで
感性のとがっていた十代の頃の言葉を
十代の頃の話し方を
まるで探しながらのようでした。
ヴェルレーヌの詩は
そんな我々のはかない十代を
引っ張り出してきたようでした。
望んだ進路に進まなかった二人は
「それがかえってよかったのよね!」(笑)
かつての文学少女のような世界の中に
ヴェルレーヌによって
とっぷりと浸っていたのでした。
彼女は先日の私の個展の時に
「おじさんシリーズ」というクロッキー画のようなものを描いていましたが
仙人にオルゴールの前でポーズをとらせて
それを描いたのよ~。って見せてくれました。
なかなかいい感じになってましたね。
「ねえねえ、描きためたらギャラリー翔で展覧会しようよ。」
「え~~?そんなことできるかなあ?」
「あわてないあわてない。ゆっくりじっくり描きためて、それを額装して飾りましょ!」
少女のように笑いました。
そう、ふたりとも
十代の少女に戻っているようでした。(笑)