保養施設で出会った人達 自傷行為を見せるおばちゃん の続きです。
その保養施設には、若者からお年寄りまで、色んな年齢の人達が来ていました。
おばちゃんも大分多かったです。みんな、抱えている背景、症状があって、どの人も印象に残る人達でした。
中でも強烈な、症状による個性を放つおばちゃんがいました。綺麗な顔の女の人で、発症前はそのように周囲に
扱われてきたことを偲びました。洗面所で一緒になる時、髪をといている私に、人生の先輩女性として、余裕の笑顔で
「そうそう、綺麗にして とっても綺麗よ^^」とお世辞の魔法を吹きかけてくれました。
ちょっと口紅など塗ってみる時も、「そうそう 綺麗よ…^^」と言葉の魔法をかけてくれました。
そう言ってる鏡越しに見えるおばちゃんの顔が、ドキっとするように綺麗でした。
こんな感じで…
そのおばちゃんは、精神を深く病んだ人で、奇妙な発作をもっていました。
食事中とかに私に話しかけて、私が質問に答えている最中に、動作や表情が突然止まってそのまま
別の世界に行って戻ってこないという発作が度々ありました。「ピアノはいつからやってるの?誰に習ったの?」
私が答えている最中に、彼女は突如 表情と動きが一時停止して、そのままどこかの世界に行ってしまいます。
……… ……… ……………………… ………………………
コントみたいで、内心、すごく面白かったです。
「お~い 戻ってきて~」 「どっか別の世界に行っちゃった~」 お~い
こんな面白いおばちゃん初めて出会った
最初、冗談か演技かと思いましたが、そういう発作が度々起こりました。
私から質問をふって、彼女が普通に答えている最中にも、この一時停止は起こりました。
「夫と、娘と 娘と 娘と む ……」
暫く、同じ表情、同じ姿勢でフリーズしたまま、戻ってこなかったです。
その保養所の利用者の人が、彼女を「失礼だ」と言っていました。失礼とか、そういうあれじゃないから…
旦那さんが面会によく来て、彼女のお世話を甲斐甲斐しく焼いていました。小柄で地味なおじさんでした。
本当に愛されてると、見ていて思いました。でもおばちゃんは、旦那さんに対してとても冷たく反抗的で、きかん坊で
子どもみたいに駄々をこねて跳ねっ返して、困らせていました。
「イヤ イヤ イヤーー!!><」 「イヤだって言ってるでしょー?!><」「要らない!!」とか叫んでました。
旦那さんはそんな彼女にとても優しく、無限に包容しているように見えました。
見ているだけで、色々な物語が漂っていました。
洗面所で彼女と一緒になった時に、「とっても優しい旦那さんですね」と言いました。
「えー そうかしら 優しくなんか …」 その時も別の世界に行ってしまい、しばらく戻って来られませんでした。
もう彼女の個性として馴染んでいたので、戻って来られたら、気づいていない彼女と
微笑み合って、互いの個室に戻りました。