生活保護費の4分の3は国が負担し、4分の1を自治体が負担する。
生活保護費の総額は平成29年で約3.8兆円 受給者数は約214万人で近年ほぼ横ばいで推移している。
生活保護費のうち圧倒的に大きな割合を占めるものは、生活扶助でも住宅扶助でもなく
医療扶助費であり、全体のほぼ半分を占め年間約1兆8000億円に上る。
医療扶助費のうち約6割を入院が占め、医療扶助費の15%が精神疾患による入院医療費である。
精神入院患者のうち2割超が生活保護受給者である。
日本は世界でも突出して精神科のベッド数、入院患者数が多い国であり、長期入院が生活保護費を上昇させている。
日本の精神医療はいわゆる先進国中、入院患者の比率が高いことで知られている。
また社会的入院も多い。社会的入院 ( Social Hospitalization)とは
入院の本来の趣旨を逸脱して、必ずしも治療や退院を前提としない長期入院を続ける状態のことを指す。
医学的には入院の必要がなく、在宅での療養が可能であるにもかかわらず、ケアの担い手がいないなど家庭の事情や引き取り拒否により、病院で生活をしている状態。高齢者の寝たきりや精神障がい者の社会復帰の阻害を作り出す一因でもある。
行き場がなくて、引き取り手がいなくて、病院で生活をしている状態。
こういった実態が、生活保護における改善すべき大きな課題となっている。(関連:私にとっての治療)
各地の精神病床に生活保護受給者がどの程度いるのかは分かっていなかったので、研究がなされた。
以下、生活保護受給者における精神病床入院の地域差に関する研究 2018 年 12 月 10 日修正 (2018 年 11 月 20 日発出)より
2. 研究方法 厚生労働省による医療扶助実態調査を活用して分析しました。2016 年 6 月審査分の生 活保護受給者のレセプトより、2016 年 5 月に精神病床に入院していた 46,559 患者を研究対 象としました。
3. 研究結果のポイント
3.1. 精神病床入院中の生活保護受給者の背景 (表 1)
年齢の内訳は、0~19 歳が 0.4%、20~39 歳が 6.6%、40~64 歳が 45.3%、65~74 歳が 28.9%、 75 歳以上が 18.8%でした。
在院期間の内訳は、1 年未満が 31.6%、1 年以上 5 年未満が 25.2%、5 年以上が 43.2% でした。
1 か月あたりの精神病床入院中の生活保護受給者による医療費の中央値は 372,250 円 (四分位範囲: 339,640~398,900 円) でした。
入院料種別としては、精神病棟 15:1 入院基本料が 47.3%、精神療養病棟入院料が 34.0%、 認知症治療病棟入院料が 6.0%を占めていました。
都道府県ごとの精神病床入院中の生活保護受給者数 (表 2)
1位 長崎県
2位 沖縄県
3位 鹿児島県
4位 福岡県 九州率が異様に高い。
5位 大分県
6位 徳島県
7位 ⾼知県
8位 北海道
9位 宮崎県
10位 熊本県
11位 東京都
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46位 岐⾩県
47位 長野県 (最も低い)
3.3 都道府県差を説明する地域要因 (表 4、図)
人口あたりの精神病床数が多い地域は、精神病床入院中の生活保護受給者数が多い傾向が認められました。
また、人口あたりの生活保護受給者数が多い地域は、精神病床入院中の生活保護受給者数が多い傾向が認められました。
在院 1 年以上 5 年未満の患者層でも、同様の傾向が認められました。
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