佐藤さとる氏の小説「誰も知らない小さな国」は
人が心の中に育むその人だけの世界の貴さを描いた作品である
そしてその小さな世界の共有は
実はシリーズの1巻目からすでになされてはいるのだ
主人公と後に彼の妻となる人との出会いと再会を描くことで
しかしここで
なぜこの小さな国が主人公にとって掛け換えのないものであるのかと言えば
それを知っているのは主人公ただひとりだから
という側面も絶対にあるであろう
その秘密を知っているのは自分だけだ
というある種の特権意識を
主人公と共有することがこの作品の魅力の基であることは
否めないはずだ
みんなが知ってしまっては
この物語は成り立たないのである
それでもシリーズが進むにつれて
この小さな国は少しずつ他の人間へと開かれてゆく
自分と同じように他者にもその人だけの世界(つまり価値観とかだろうか)があって
それらは互いに等しく貴いのだ
というメッセージが込められているように思う
しかし、それはまだ、あくまでもその小さな国の価値観を
おびやかさない人達の間でのことに限られているのだが
小さな世界の門は広くはないのだ
なんだかこの辺のことが
私の性格にも反映されていると思う
みんなと同じよりも
違っていた方がうれしいのだ
そのお陰でちょっと生きにくかったりもするのだが
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