Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ある庚申講が廃止された理由

2024-06-25 23:17:44 | 民俗学

 一昨年7月30日に「続・上野庚申総本山を訪れて」を記した。当日、梓川真光寺へ納められた庚申掛軸の調査をした際に、ある廃止された庚申講から納められた資料にわたしの目が留まった。掛軸はなかったが、昭和2年1月と表紙に記された「預金集金帳」と桝、領収書の類と預金通帳、そして規約が入っていた。規約には次のようなことが記されていた。

○小路庚申仲間の会 規約
第1条(名 称)この団体は「○小路庚申仲間の会」と称する。
第2条(所在地)この団体を次の所在地に置く。
        長野県安曇野市○○○
第3条(目 的)この団体は、○小路庚申仲間における信仰・親睦活動を維持していくことを目的とする。
第4条(構成員)この団体の構成員は、○小路庚申仲間の講員をもって組織する。

第5条(役 員)この団体は、次の役員を置く。
        代表者 1名 ○○○○
        役 員 若干名「初当」「後当」の当番とする。
        但し、役員に事故あるときは、会議を開催し改選するものとする。
第6条(運 営)当団体は、講員の輪番制により「初当」「後当」として、年2回祭事を行うものとする。
第7条(財 務)活動に必要な資金については、会費及び負担金等とし、当番がこれを適正に管理し、その都度講員に会計報告するものとする。
第8条(改正) この規約は、講員の過半数の同意をもって、その必要事項を改正することができる。
第9粂(設立年月日)本会の設立年月日は、平成28年2月8日とする。
本規約は、平成28年2月8日初当の席において全講員の過半数の承認をもって成立したことを証する。
        安曇野市○○○ 代表○○○○

以上のような内容であった。平成28年に規約を定めたばかりなのに、廃止された要因の背景に何があったのか、気になっていた。また、規約とともに封入されていたものに、「庚申講」に関する説明文があった。それには次のようなことが記されていた。


庚申講
仲間の結束を固める目的で行われた小さな集団で維持された
庚申の日(60日に一度のかのえ・さる」)にしんぶつを
農家の守り神
語り合い・ごちそうを食べ、お酒を飲み明かすという行事
青面金剛像の掛け塾
 ・目が三つ
 ・腕が4または6本それぞれの手に三さ激・法輪・剣‥弓矢等
 ・傍らに童子を従え・邪気を踏みつけ
 ・農業
 ・天台宗 比叡山の守護神がサルの影響
中国の道教の影響 三尸の虫が棲むという考え方
  上尸‥頭に、中尸‥腹に、下尸・・足に
人の寝ている間に抜け出し玉皇天帝にその人の悪事・罪科を報告
その悪事を天帝は鬼籍という台帳に書き込み、ツミガ5百条になるとその人の死を決める。
  見ざる・聞かざる・言わざる
  二羽の鶏・・一番鳥が鳴くまで寝てはならない・・鳥がすべてのトリとして仕える。
  サルの日・・猿田彦を祭神とする
同ギン・夜業・髪結い・肉類・ネギ 禁忌

以上、誤字はそのまま記した。

 そもそも掛軸の調査だったため、「預金集金帳」に記された昭和2年以降の全ての記録を確認することはできなかったが、講が開催された都度「協議事項」が記されており、最後のページには令和2年1月19日に実施された初当における協議事項が記されており、確認してみた。それによると講員14名の内10名が参加。協議事項にはこの日2名の脱退が報告されている。さらに「これからの庚申のあり方存続について、後当番の時に決める」と予告されているものの、その記録は「預金集金帳」に記されていない。その背景を知りたいと思い、昨日楡を訪れた後に、この庚申講のあった○小路の規約を作成された際の当番の方を訪ねてみた。

 規約については通帳を作る際に提出が求められたため、作成したもので、たまたまそうしたことに詳しかったため作成したという。庚申信仰がどのようなものかはまったく知らないといい、廃止した理由は、若い人たちに「やりたくない」という意見が多かったため、廃止することにしたという。既に葬儀に特別なかかわりがなくなり、庚申講そのものの意味も知らなかったため、講を行う主旨もないから自ずと廃止に至ったというわけである。とりわけ「若い人たちがやりたくない」を聞いて、納得した次第である。


コメント    この記事についてブログを書く
« 楡の集落を歩く | トップ | 旧武石村の自然石道祖神 外編 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

民俗学」カテゴリの最新記事