Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ササユリ咲く

2013-06-26 23:24:33 | 自然から学ぶ

 

 ササユリが盛んに林野を中心に咲いている。近ごろの里山にしてもそこに近い耕作地域にしても、管理されずに伸び放題の木々、あるいは雑草の環境が増えた。故に日差しが遮られ、かなり暗がりとなったりして、ササユリを含めて背丈にして1メートル前後の植物の多くに影響を与えた。いっぽうでそうした環境に整合した植生が広がったりして、人の手による管理と自然との微妙な関係がさまざまな姿を表すことを教えている。

 ササユリは本州中部地方以西から四国・九州に分布する。これとは逆に北海道と関東地方や北陸地方を除く近畿地方以北の山地の林縁や草地に分布するのがヤマユリだ。地域によっては、ササユリをヤマユリと呼ぶところもあるというから、対比できるユリと言える。伊那谷では天竜川の西側にはササユリが、東側にはヤマユリが多く見受けられる。ちょうど西と東の接点というわけだ。妻の実家の裏山との境界域にヤマユリが咲くが、ササユリを近くで見ることはない。写真を撮影した阿智村伍和ではその両方を見ることができるというが、やはりササユリの方が圧倒的に多い。

 ササユリとヤマユリ花期は1ヶ月ほどずれて今は前者が、もう半月もすると後者が咲き始める。実はどちらも長野県の指定希少野生動植物72種に選定されている種。「希少野生動植物のうち、特に保護を図る必要のあるもので、捕獲・採取、踏み荒らし及び開発行為等による減少の動向を監視するため、行う際に、あらかじめ知事に届出を提出しなければならないもの」とされている。ようは勝手に採取してはならないという種にあたる。どちらも長野県レッドデータブックの準絶滅危惧種でカテゴリーはさほど高くはないが、採取制限のある種なのである。長野県では、希少野生動植物のうち規制の必要な種として、指定希少野生動植物72種、内19種を特別指定希少野生動植物に指定し保護を図っていて、その前者の部類である。もちろん後者はさらに希少とされているもので、「指定希少野生動植物のうち、特に緊急に保護を図る必要のあるもので、捕獲・採取、踏み荒らし及び開発行為等による影響を回避するため、それらの行為を原則として禁止するもの」。先ごろここに紹介したタデスミレは後者にあたる。

 写真を撮影した場所では近年工事をしたようだが、幸いにも実際に工事によって土が移動された場所にもちゃんとササユリが咲いていた、というよりも群生に近いほど株が見えた。まさに微妙なものだと感じるわけだ。


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