長野県内地質図と主要河川、及び地殻構造線
伊那市美篶のあたりでは緑色片岩の自然石を道祖神に祀っているケースが多いことは、これまでにも触れた。三峰川は中央構造線の外帯から流れ出してくる。したがって上流域が三波川帯といわれる変成岩の地質だから、自ずと流れ出してくる石はそれら変成岩なのである。ところが流れ着く天竜川流域の多くは、領家帯と言われる花崗岩地帯が背景。天竜川の支流の多くは花崗岩を排出する。「川が白い」と思うのはその花崗岩のせいだ。図は圧縮しているので見づらいかもしれないが、長野県の地質図と、そこへ主要な河川を載せたもの。前述した三峰川の位置づけがわかるだろう。長野県内の河川をみたとき、地殻構造線を跨いで流れる川が少ないことに気付くだろう。梓川と奈良井川は跨いで構造線の糸魚川静岡構造線の東側に流れていくが、あとは主たる川は跨がずに県外へ流下していく。その中で三峰川は中央構造線の外帯から内帯へ流れ出す、県内の河川では珍しい川。同様の川は天竜川の左岸側に多くあるが、伊那山地を越えて天竜川へ合流する川は三峰川、小渋川、遠山川の三つくらい。これらの川が内帯には無い石を流してくるのである。特にその中でも三峰川は流路が長く、急流である。
伊那市長谷杉島内 三峰川
ここで三峰川の河川内を覗いてみよう。長谷杉島を流れる下る三峰川の河原で撮ったものが1枚目から3枚目である。遠目では白っぽくは見えるが、そこに流れ出している石は、緑色のものが多い。そもそも中央構造線の外帯側は、縦に地質が細長く猫の目のように変わっている。したがって多様な変成岩が流れてくる。もちろんその中で緑色の石は多い。3枚目の写真の大きな石は模様になっていてこのまま庭石になりそうな石。小さい石にもこのようなものが多く、どれでも自然石道祖神として祀られそうだ。この3枚目の大きな石は「三波石」と言われる石に近い。
伊那市長谷市野瀬 三峰川
続いて4枚目は杉島から1キロ以上下ったところ、市野瀬の下流側の三峰川である。市野瀬まで来ると、勾配が緩くなるため、堆砂が著しい。勾配が緩いから、流れ着く石も小粒になる。面白い光景は5枚目の写真である。川の中は緑色系の石がごろごろしていて、花崗岩など一つもないのに、護岸はほぼ全てが花崗岩なのである。国交省直轄の河川は、護岸は自然石が原則だ。したがって硬い石が選択される。したがって中央構造線の外帯側なのに、内帯側の花崗岩が運ばれてきて護岸の石に採用されているのである。
今でこそ美和ダムや高遠ダムが三峰川にはあって、大きな石が下流域まで流れ出すことはほとんどなくなった。しかし、昔流れ着いた石が、例えばかつて河川内であった。現在の耕作地から出て来て、奇怪な石は道祖神として採用されたというわけである。
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