Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

絶滅危惧ⅠA類 ツツザキヤマジノギク

2006-10-11 06:55:30 | 自然から学ぶ
 ツツザキヤマジノギクが咲き始めた。知っている人は知っているが、そんな人は専門家ぐらいである。一般の人でこの花の名前を知っている人はまずいない。奥原弘人氏が書いた『信州の珍しい植物』には次のように書かれている。

 イナカワラノギク Heteropappus hispidus var. inaensis H.O.  天竜川の支流小渋川の河原で見られ、伊那地方に分布するヤマジノギクから変わったものと思われる。ヤマギノギクと違う点は、小石がごつごつしている河原に生え、高さは40~50cm、葉の幅が4mm内外と狭いことで、関東地方に分布するカワラノギクとは舌状花の冠毛が不完全というだけであって、極めて似ている。根出葉はラケット状で幅1~2.5cm。花には変化が多く、舌状花が純白のシロバナイナカワラノギク、上端まで筒状のツツザキイナカワラノギク、下部まで2~4全裂しているシデザキイナカワラノギク、下部だけが筒状で上部は舌状か3~4裂しているもの等がある。最初これに気付いたのは1975年秋である。その頃は広い河原一面に広がっていたが、その後樹木が生長して森林となったので、今では樹木のない一部と増水すれば水をかぶるような低い所だけになったのは残念である。

 この記述にある「花には変化が多く・・・」というように花の姿は一様ではない。同じ種でありながらツツザキヤマジノギクもあれば普通のヤマジノギクもある。同じ株に咲く花であっても、ツツザキのものもあればそうでないものもある。簡単に言えば突然変異的な花をつける、そんな感じなのだ。しかしながら突然変異なら稀なものであるが、稀ではないのである。その花が咲き乱れる場所には筒状になった花があちこちに現れているのである。

 この花の名にはいくつかの呼び方がある。クダザキヤマジノギク、あるいはイナノギクなどある。近年発刊された『中川村誌』においては、イナノギクという名称で紹介している。たしかにここでしか確認されていない花だからイナノギクという名称もよいだろうが、花の形、印象からいけばツツザキヤマジノギクとう名が最も似合っているとわたしは思う。

 さて、この花は中川村小渋川沿いに多く生育している。天竜川への合流近くで初めてこの花を見たのは、3年前である。その3年前の印象ではもっとたくさん咲いていたと思うのだが、今年は株の数がずいぶん少なくなっている。まだこれから咲くところで、つぼみになっているものがある。しかしながら、さきほども言ったように、必ずしもツツザキになるとは限らない。長野県にしかない花だから環境省のレッドリストには記載がない。しかし長野県版のレッドデータブックには絶滅危惧ⅠA類と分類されている。もっとも絶滅の危険性が高いとされる分類である。

 撮影 2006.10.8

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