45゜を超えるような斜面、とりわけ連続していると登るのも容易ではない。立木や株につかまって登るからまだなんとかなるが、何もない斜面だったら何度となく滑り落ちたことだろう。久しぶりに急斜面の山に入った。谷底から一旦尾根に登り、再び反対側の谷に下る。仕事とはいえこんな現場はめったにない。ふつうの長靴で入るには疲労が溜まるし、踏ん張りが効かなくてつらいものがある。「葉が出る前に」と思って入った現場は、すでにかなり葉が生い茂り、視野を悪くして出足を鈍らせた。もはや山の上にもすっかり春が訪れ、ワラビの伸びも良い。急斜面だからなのだろうが、倒木が多い。いわゆる根の浅いものが倒れるのだが、今は倒れた木々はそのままにされるから、ますます荒れた雰囲気が山に漂う。そんな山を登ったり降りたりを繰り返していて、さすがのわたしも「遅昼になっても現場を片付けよう」と思っていたが、疲労が溜まってしまって片付けるまでは持たず、途中に同僚と昼に向かった。
会社まで毎朝登る坂道もそこそこ急な坂道だが、山の斜面とは違う。それでも休日後の月曜日は足が重い。しかし、火曜、水曜と日を重ねて行くとその重さはしだいに抜けていき、平地とそう変わらぬ速さで坂をパスする。そして再び休日がやってくると、翌月曜日は同じように重い足取りが蘇る。そんな繰り返しだ。
さて、山の斜面も枯葉が地面を覆っていると、なおさら歩きづらい。そんな一面枯葉に覆われた斜面に、紫色の花が顔を出していた。グランドカバーのような丈のない小さな花である。キランソウである。ジゴクノカマノフタという別名もあるというが、それは「「病気を治して地獄の釜にふたをする」ということから」らしい。ようは薬草効果があるということだ。どうりで葉の形が薬草系のものに似ている。「牧野富太郎は「医者倒し・肥後ではセンブリをイシャダオシと言うとの事であるが、土佐では唇形科のキランソウをイシャダオシと称する。それはこの草が何かの病気によく効くために言うのであろうが、その辺は不明である」と記述していますが、民間薬として古くから各地で使用されていたことがうかがわれます」と薬用植物一覧表というページに紹介されていた。この季節、それも枯葉の中にこんな花が咲いているとちょっと足を止めたくなる。
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