わが家でもワシが子供の頃には
父親が杵で餅をついてくれとった。
その頃、納屋に足でつく杵の道具もあったけぇ、
その昔は大家族じゃったんで、
足でつきよったんじゃと思う。
昔は大家族じゃったんで
冬の保存食の餅は
薄い木箱に何箱もついとった。
ヘラ餅だけじゃない、
あんこ餅、大小の鏡餅、
かき餅、切り餅・・・
1つの蒸篭が1臼じゃった。
1升じゃったんか2升じゃったんか
覚えてない。
ワシが二人の父親になった頃、
もちつきを子供らに見せといてやろうと
1ぺんだけ石臼を出して、蒸篭を出して、
丸いコンクリート製の桝を
くど代わりにして庭でもちつきをした事がある。
たしか5臼くらいついたが
やねこいのなんの!
ほいじゃが縁側でワシの母親と
女房殿と子供たちが餅を丸めるのを見て、
汗を拭いながら
『ワシも一家の主になった』
そんな満足感があったのを思い出す。
あの時の石臼は今でも庭に伏せて置いてあるが
杵も蒸篭も木箱も餅をこねる広い板もない。