一期一会
札幌駅ビル(ビックカメラ等)&JRタワー、
雪印パーラー(大きなアイスクリームパフェで有名)、
札幌テレビ塔&大通り公園、札幌時計台、等、
観光名所それぞれから、ほぼ等距離の位置にある、
立地バツグンな日本の老舗ホテル。
自身も檀家であった創始者が、その当時、
お寺へお参りに来る人たちの宿が足りてないことを憂慮して、
有志と始めた、日本の草分け的なビジネスホテルだそうな。
法華クラブとは、なんとまあハイカラなお名前だこと!
急な検査入院で、お盆休みの予定が、
玉突き事故のように、みな吹っ飛んでしまった。
すべての予定が、わずか1日ずれただけだが。
もうそんな至近距離からでは、
ホテルのキャンセルはきかないし、
友人知人もカツカツでスケジュール組んでるしで、
逆タイムマシンというか、自分だけ、
皆と噛み合わない、1日遅れの時間を過ごすことになった。
凹んだ。死ぬ前にとか、考えたさ。
そういう話になると、なんで、原点とか思うのかねぇ……
そんなことがあって、このホテルに来たわけだが。
ホテル法華クラブは、僕の記憶にある限り、
人生で最初に泊まったホテルです。
その札幌店が、ここ。
ビジネスホテルと言う割には、
見通しのよい、割と立派な、
明るいロビーがあったり。
五輪以来、近隣にも、
それこそ、雨後の竹の子のように、
いくつものビジネスホテルが建ったけれども。
こういう明るさを持ったところは、
他に無いな。どこも、入口の先は見えない。
大体は、エレベーターホールを兼ねた、
狭い造りのフロントがあるばかりだ。
そしてそういう造りこそが、
ビジネスホテルを、ビジネスホテルたらしめている。
おもてなしの、折り紙の鶴が、出迎える。
部屋は簡素だが、必要十分。
近ごろ有り勝ちな、気取ったデスクライトなどは無い。
あるのは、実用に足る程度の照明と、
幅、奥行きがソコソコはあるデスク。
液晶テレビの前にも、書類を置くスペースがあるほどだ。
加湿器だの、コーヒーメーカーだの、食器だの、
余計なものが乗っかってないのがうれしい。
ポットやカップは、机の右下に、
ちゃんとした収納場所が作られている。
ハイクラスと自称するようなホテルでも、有り勝ちなんだが。
あとづけで色々なものを買い足して、
しょうがないから、机をその置き場所にしている。
そういう、残念なホテルは、割と普通にある。
それが無いだけでも、このホテルの評価点はプラスだ。
背景は、落ち着いた色調の壁とカーテンなので、
リモートでのお仕事にも使える。
LANケーブルを使えば、通信速度も問題なかろう。
そしてこの、一貫したデザイン性を感じさせる、
ソファと丸テーブル、カーテンの模様。
カーテンの遮光性もよい。真昼間の写真だが、
ベッドの枕側は、十分に暗くなった。
京王プラザホテルの、普通ランクの部屋だと言われても、
クローゼットと金庫が無いこと除けば、
違和感が無いほどだ。
老舗らしさというか、ノウハウ持っているなと。
ユニットバスなのはまあ、ビジネスホテルだから(笑
だけど、あなどるなかれ。
壁はタイル調。バスタブには手すりがある。
この手すり、絶対に必要なもの。老いも若きもさ。
だから、ハイクラスなホテルには、必ずある。
ここホンマにビジホなんかな(笑
アメニティーがまたよい。
POLAのシャワー・ブレイクとか使ってるし。
手洗いは、花王のフィエスタってシリーズのやつだし。
肌触りがソフトで、香りもいいのよねぇ。
気が利いている。
振り向けば、地下の温泉へ持っていくバッグに、
かわいらしいユルキャラの入浴姿。
!!!
このプロフ……
このホンワカなお姿からは、想像もできまてん。
ホテル法華クラブは、
僕の、今に至るホテル三昧の、
原点にあるホテルです。
しかし、悲しいかな。その舞台となったホテルは、
2011年、東日本大震災で、天井が崩落してしまい、
惜しまれつつ、解体せられたと聞き及んでます。
もしも現存していれば、
飛行機に乗ってでも、今そこへ行った。
その日、僕は、
天井スレスレの二段ベッドが入った、
狭い部屋に、数日、滞在していた。
ベッドの上の段に寝ると、
すぐ目の前が天井で、触ると、
吹き付けの砂みたいなものが、
パラパラと落ちてきた。
そのころ、僕は、世間知らずの「良い子」だった。
何を思ったものか、ホテルのフロントの人に、
何か手伝うことはないか、と言った。
よそのホテルなら、相手にされなかっただろう。
そのフロントの人は、相手にしてくれた。
今にして思えば、仏教的だったなと思うわ。
とても自然な感じで、
各階のエレベーターの前にある、
エアコンの吹き出し口の結露を拭き取る仕事を、
自分に任せてくれた。
そしてその日の終わりに、
いいものを見せてあげようと、僕はその人に誘われ、
付属ホール(結婚式場)の、大シャンデリアを、
点灯して見せてくれた。
あの真っ白な光が降り注ぐ光景を、
今なお、覚えています。
泊まったのは、そのとき限り。
ずいぶん前のことで、そのフロントの人が、
ご存命かどうかも分かりませんが。
ほんとうに、一期一会だったなと。
そんな思い出が、ホテル法華クラブにはあります。
その札幌店に泊まって、
この思い出を、文字にしておこうと思いました。