おじんの放課後

仕事帰りの僕の遊び。創成川の近所をウロウロ。変わり行く故郷、札幌を懐かしみつつ。ホテルのメモは、また行くときの参考に。

財布をめぐる冒険(途中下車)

2025年02月28日 | ロマン

結局のところ、

いたがきの財布は、タンスの肥やしとなり。

惜しいなぁ。。。

皮と縫製は抜群なんだ。

ほんと、

素晴らしい技術持ってると思います。

でも商品って、

それだけじゃないから。。。

前のラケットクラブのやつはもう、

あまりにもボロボロで  (T.T) oh..

なんだかなぁと。

夕飯買ったついでに、

ゆきずりの紳士服売り場で、

一番薄いのを手に取った次第。

とりあえず、僕は、

ポケットに収まらなきゃダメでね。

正月だかの残りものらしい(笑

このタイプだけ、残1ヶだったの。

ほかのはだいぶん残ってたけどね。

みんな買ってるんだなぁと。

僕も買ってみた。三千円也。

なんかね、使ってみると、

けっこうよかったりして(笑

素材も縫製もソコソコなので、

長持ちはしないだろうけど。

あらこれ、ゴールデン・ベアのだわ。

財布も作ってるのか(笑

ゴールデン・ベアって言ったら

黄色なんだろうけど。

実は緑色もブランド色なのかなと。

前から使ってる、

着やすくてあったかい上着も、

そういや緑色だわ。

三千円に負けた二万円。

笑えない。。。

そういえば、前の記事のビュッフェ。

あれもだな、と。

2800円に負けた3400円とか、

6000円とかのビュッフェ。

笑えないです。

料理の能力だけ比べたら、

全然負けてないですけどね。

中小企業の繁栄は、

それを使う大手次第。

このごろ、

中小企業だけで集まって、

中小企業フェアみたいなこと

やってるけどさ。

買いたいものがない。。。

そうかと思えば、

ガシャポンの景品みたいに、

中小企業オンリーのもあったり。

けどあの企画の大成功も、

大手のアドバイスあっての賜物だしさ。

そう思うと、

やっぱエルメスはすごいなぁと。

いまだ店に入れてないけど(笑

ショーウインドウ(エルメス劇場)とか、

店内の楽しげな様子とかを、

チラッと眺めて満足してるわ(笑


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あのブイヤベースが食べたくて

2025年02月27日 | ごはーん\(^o^)/

冬はどうやら、明けたようですが。

今日は本当に、職場が寒くてね。

何か、あったかいものを食べたいなと。

いつもの立ち食いそばのぬくもりでは、

今回はどうも、足りなさそうで。

ふと思い出したのは、ブイヤベース。

そだ。だいぶん、ご無沙汰したなと。

そう思うと、

むしょうに食べたくなり(笑

もう昼近くなので、慌てて、

某じゃらんから予約を。取れるかな?

うぉ!あと2席あるじゃん!

変わってないな。

どのくらい?

1年くらいになるかしら。

ACCORのメンバーカードも、

ibisのビジネスカードも切って、

会員もやめましたわ。

あんな感じで、

日本再上陸してくるとはね。

ご無沙汰でした。

そっと添えてあるホダ木が

自然な感じでよいです。

欧米の外資系って、なかなか、

こういうの不得手な印象ですが。

ここはこの極小のスペースを、

うまく使っているなと。

おー!雰囲気変わってないなぁ。

よかった~ \(^^)/

縦型のトースターはなくなって、

横型のに変わってました。

ん?トースターの網は

自分でセットするのね?

へぇ、パンケーキ製造機があるよ。

これは初めて見ました。

写真とってない(笑

さぁ、いただきましょう。

コレを食べにきた。

物価高騰のさなか、

具材も変わらぬボリューム。

ビュッフェのお値段はそのまま。

かなーり、努力してるみたいね。

ブイヤベースって、どうしても、

生臭みが強めに出てしまうようですが。

他所のホテルのビュッフェで、

何度か悲しい思いをしたもんです。

けどここのは、変わってないわ。

あの日の味そのまま。

コレね、ぜひ、

バケットとマーガリンを

とってきて欲しいです。

こうして、マーガリンを塗ってから、

ひたして食べるとね。うんまい。

オススメの食べかたです。

バケットはトースターで温めてやると、

手元でスライスしやすいです。

手に持って、先にナイフを突き立てて、

そこへ横に刃を入れていきます。

んはぁ~。うんまいわコレ(笑

あったまるぅ~

おかわりは新しい皿を使ってね♪

ひとしきり、満足して。

寄り道(笑

会場向かって左が、

これら前菜類のブースです。

手前から時計回りに、生ハム、

香草入りハム、ガレット類、

真ん中はピクルス。

チーズとキウイの重ね、

アスパラをクリームソースで。

チーズとキウイのは、

ジョジョで億泰がうんま~いぃ!してた、

トマトとチーズの重ねに近いかもね(笑

キウイの上にチーズを乗せて、

キウイを先に舌に乗せると、うんまい(笑

キウイの酸味が生きてますわ。

再会を祝して、今回は奮発(笑

選べるひとしなは、

+800円でお肉にしました。

コレもうんまい。

マッシュポテトいいねぇ。

んー。

ごちそうさまでしたぁっ  (-人-)

いや~、久々だから、

いろいろ変わっちゃったかと思ったけど。

実によかった。満足満足。

この時間、宿泊客用の珈琲が用意されて、

ここもいい香りだ。

うん、いつもの喫茶、寄ってくかな。


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ここだけの話ですけど。。。

2025年02月27日 | 道央のホテル

行ってみ~たいなサンパレス♪

で、お馴染みだった、

洞爺サンパレス。

ほか、定山渓ビューホテルと、

摩周湖のレイクサイド。

この3軒のホテルに共通すること、

ご存じのかたも、おられるかと。

僕は今しがた

ググって知りましたが(笑

もう誰もググるとか

ネタ以外では言わないみたい(笑

市内では、薄野の2軒、

グランベルホテルがあります。

3月には北口に、千室を越す

客室を抱えてしまった

一棟まるごとホテルの、

札幌ホテルとかいうのが開業しますが。

コレ、通信販売大手の

ベルーナがやってると知って、

面白いなと(笑

だって、通信販売大手だよ。

今時の一般人の好みについては、

誰よりもよく知ってる。

どこまで必要か知ってる会社だ。

実際、youtubeの、

泊まってみた系の動画を観ると、

なかなか上手い造りをしている。

通信販売大好きなお客さんが、

キュンキュン言っちゃいそうな

ホテルだなぁと(笑

いつじゃない、今稼ぎたいっていう

ホテルならば、ココ知らない手はない。

学ぶところが洪水のように溢れてるわ。

今儲けたいホテルには、ね。

僕は興味湧かないです。

けどさ、この世は現世利益一本だから。

歴史より現ナマが欲しいです。

今もう僕もです(笑

一時の流行りですけどね。

長くても、せいぜい、

過去一万年弱のトレンドです。

若いひとたちはもう、

そういう世代じゃないですし。

だから、この3月に開業する

一棟まるごとホテルが、案外、

本体のベルーナの将来をも、

決めかねないなぁと。

今もう、若いひとたちの間では、

対面、現物、歩いて探す

なんて言葉が、

キーワードにまでもなりつつあり。

そういう、言わば昭和時代のような

トレンドへと回帰(いや回復)

しつつあると。

そういうひとたちが通販使うかな?

ネット販売は

これからもっと流行るだろうけど。

今これからのひとたちは、

通販みたいに用意されたもので

満足するようなひとたちなの?

10年前なら知らんけど、今ですよ。

このホテル、始まる前からもう、

時代遅れなんじゃ。。。

1勝9敗の精神とか言ってますが、

どこまでの範囲を10と言ってるのかな?

まさか、本体含めた連結企業全部とは

言わんでしょうな?

確かに、よくできたしつらえで

成功してるホテルもあると思います。

道庁の近くにできた「由縁」とか、

何だっけ、ランプ&ブックスだっけ?

時々名前を聞くようになりましたし。

そういうのはどこも、

数えるほどの部屋数しかない。

少数精鋭です(笑

老舗と言われるホテルが

苦戦してるのも、

まさにこの、部屋数の多さだし。

カフカに言わせれば、

徹底した個人主義が成就したその暁

なわけですから、少数精鋭は

実に理想的の構図なわけ。

ただでさえ少子化なんだしさ。

だからこのホテルに限っては、

やっちまったな、と。

完成前なら、手はあったけどね。

完成してしかも

報じられたあとじゃなぁ。。。


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バックカントリーで雪ダルマ

2025年02月25日 | 珈琲

山親爺、バックカン

トリーで雪ダルマ。

シャケでバランスを崩したか

今日正午ごろ、

笹の葉かついでシャケしょって、

スキーに乗った山親爺の親子が、

漁から帰る途中の山林を滑走中、

子熊が猛烈に転倒し、雪ダルマ

と化すハプニングがありました。

子熊のご飯だったシャケ1尾が

行方不明になったほか、転がる

子熊の可愛らしい姿がお菓子と

なり、お店を訪れる利用客が

思わず微笑みをもらす事態と

なっている。御歳65歳を迎えた

山親爺さんは「あれはワシらの

世界に新しい道をこしらえた」

とご満悦。筆者も1つ

いただいたら、山親爺と言えば

お茶であったところが、思わず

知らず珈琲を手に取ってしまい、

なるほど確かにこれはエポック

メイキングなひとしなではある。

なお、当の子熊にインタビューを

試みたが、照れくさいのか遠くで

手を振るばかりであったことを

書き添えておく。

なーんて(笑

パッケージの子熊があんまり可愛らしくて、

道々、空想が止まらなくなってしまい。

このイラスト、どなたが描いてるんだろ?

個展とか見てみたい。

あと、今回はもうひとしな、

競争率の高いお菓子が手に入り。

包丁で切ればよかった orz..

ずっと前に、どこの会社か知らないけど、

こういう菓子パンがあったなと。

あんバタって言ったら、

あらかじめ混ぜてあるのしかない。

そのなかで、その菓子パンだけは、

バタ(いやマーガリンかも)が

アンの上に乗ってた記憶。

間もなく見なくなっちゃって、ガッカリ。

それを老舗の菓子舗がやると、

この仕上がりですわ。

僕は、これもお茶かな。

やっぱ千秋庵って、お茶のイメージ。

利用者のひとりとして、そこは

ブレないでほしいんです。

けど、それだけでは、つまらない。

今回、新作の「ゆきだるま」を見つけて、

これは記事にしとこうと(笑


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雪解けはまだ先ですが

2025年02月24日 | 珈琲

札幌みやげといえば、僕にとっては、

やはり「とうまん」。冨士屋。

ほかにも記事あったわ。

そして、もちょっと広く、

北海道みやげといえば、僕にとっては、

やはり「山親父」。千秋庵。

ガキの頃、どの家へ遊びに行っても、

山親父の黒い筒があったわ(笑

アンテナショップの前を通りがかったら、

もう春一色だったので。

おもわず買ってしまいました。

好きなんだココのうぐいす餅。

右上で白とびしちゃってるけどご愛嬌(笑

ちなみに、ご家庭に

シール・コレクターさんがいたら、

このシール割と剥がしやすかったので。

他人が持ってないシールの候補かなと(笑

なんか昔の

ビデオテープからキャプチャした画像

みたいになってごめん(笑

ビミョーにピントずれるんよ。

もう5年も前のスマホだからね。

5年も前、かぁ。。。

自分で言っといて、

わずか5年で、5年も前とか言う

ご時勢になったんだなぁと。

言うなら、僕のなかではふた桁。

最短、10年も前とかですね。

5年はまだ新しいの部類だな。

けど。。。そっか。

対戦カードゲームとかだと、

5年前のアイテムは、もう古いよねぇ。

僕、前に若い同僚に教えてもらって、

「バディファイト」体験したことあるけど。

エクストリーム親爺は、お気にでしたわ(笑

二次創作です。一応書いときますね♪

どのカードもみたいですけど、

これも数字がどんどんインフレしてって、

初心者は入れなくなっちゃって。

あ、もう、やりかた忘れました(笑

 

置いといて。

 

千秋庵のもですけど、

甘さが目立たないのが好きなんで。

おしるこみたいに、

コレ甘っ!って(笑

甘さに徹するのも好きだけどさ。

こういう、

コレはお茶でしょってのが、

僕はことのほか好きであります。

花びら餅みたいに飾らない、

丸めてポンみたいな菓子だけど、

それ以上のものがあるわ。


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Q. 本を読むと何かできるようになりますか?

2025年02月23日 | 雑談

読み書きのアマチュアがお答えします。

 Q. 本を読むと何かできるようになりますか?

 A. なりません。

   が、ものによっては、

   自分と同じ種類のひとが

   その本という物証を介して、

   確かにいたということを

   知ることにはなります。

大体、故人ですけどね。

「ぼっち」なのは相変わらずです(笑


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気づけば年度末

2025年02月21日 | 風景

どこの写真だったか…

札幌だと思うんだけどね。

フォルダの中身を整理してると、

よく分かんない写真が出てきたりして(笑

記憶容量に限界があるのも、

お掃除のきっかけになっていいかなと(笑

道外(海外も)のは、今の会社のひとたちに

ほぼ身バレするので(笑

旅行で撮った写真なら心配ないですけど。

そんな時間もおカネもないわ(笑

ギリギリ、横浜行けたくらい。

はぁ。。。

なんだかんだで、今年も早かった~。

気づけば年度末ですよ。

今年度はズバリ、僕自身にとり、

マイナスの多かった年でした。

来年度はその分、

プラスの年になって欲しいけど(笑

今年の雪の降りかた見ても、

去年の降りかたと、

足して2で割るなんてことには、

なかなか、ならないご時勢のようで。

根っから、生きかたの違うひとたちと、

もう半世紀近く暮らしてきましたが。

昔のひとたちの残した本や、

ここをたずねてくださる

何人かのかたの存在に励まされもして。

今年度もなんとか乗り越えたかなと。

プロ・ユースな世界の動きは、

来年度、いよいよその真の骨頂に達して、

僕のようなアマチュアには、

本当に生きづらい世の中になるんだろう。

だけど、この混乱が、この世の望まない

若いアマチュアを沢山生み出してもいるし。

そうしたひとたちと、

ここでお目にかかる機会も、増えるだろうし。

まだそれとは分かんないとしてもね。

ま、なんとかなるさ。


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レトロではなくて、

2025年02月17日 | 風景

ふぅ。。。

このごろ客層が

変わってきたようですが。

今度もまた、

一過性の流行りだろうなぁと。

結局また、

以前からのひとたちが残る。

だから僕は、ここが好き。

客がタバコを吸うという前提。

荒らした銅の板をあしらった

テーブルの天板。

見事としか言いようがないねぇ。。。

誰もがアマチュアだったから、

こういうことが普通に出来ていたのさ。

んー。

ここで飲むコーヒーは、格別だわ。

若いひとたちのなかにも、

こういう場所を好むひとが、

わずかに、いるだろう。

今は少々騒がしいが(笑

それもまた、ここの歴史の

1ページだなぁと。


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本人が一番気晴らしになってます(笑

2025年02月15日 | 雑談

これまで1年ほどかかっていたのが、

このごろは、半年くらいで、

+1万PVになってます。

今年(てか今年度)も、

沢山のページをご覧いただきました。

ありがたい。ありがたい。(-人-)

これからも、テキトーに書いていきます(笑

気晴らしにでもなりましたら。

 


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趣味以外のなにものでも

2025年02月15日 | 小金井充の

電子本を作りました。

KindleUnlimited会員のかたは無料で読めます。

だけど今時、

“推し”の本ならともかく、

活字読む時間とか気力なんて、

働いてると、なかなか持てないですよねぇ。。。


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石狩之国から'25冬

2025年02月12日 | 風景

仕事を終えて(ここは札幌側)。

前にも記事にしたと思うけど、

現場の近くにマシな駐車場がないので、

勝手に公共交通機関を使うわけですが。

なんかもう更に便数が少なくなっ!!!

早く来るときも、遅く来るときもあるので、

かれこれ20分ほど立ち尽くしておりました。

言うまでもないかとは、思いますが。

さぶっ…

あ、来た来た。

定刻でした \(^^)/

あ~~

生き返るぅ(笑


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イエスのまねび

2025年02月12日 | 雑談

このごろになって、ようやくのこと、

飾り物の聖書を、手に取り、

中の文章を読むひとが、

キリスト信奉者のなかにも出てきたのは、

嬉しい出来事です。

トランプさんも、今回ばかりは、

宣誓式で聖書に手を置かなかった。

お読みになれば、分かるでしょう。

イエスと、キリストとの違いがね。


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月の庭(終)

2025年02月10日 | 小金井充の

 雲天の平日火曜日。二十三時を過ぎる頃だろうか。大きく左にカーブした、街灯のない田舎の坂道を、遠方から、二台のマイクロバスがのぼってくる。最初はわずかにエンジンの音が聞こえ、音は次第に大きくなり、路面を照らすヘッドライトの明かりが見えたかと思うと、突然のように目の前にバスが姿をあらわし、大きく右へハンドルを切って、かつてのベンチャー企業、今は大企業の一部門となったユニバス社の敷地内へと乗り入れていく。
 真っ暗な倉庫内。グオン、グオンと、電動シャッターが開きだす。マイクロバスのエンジン音はまだ遠く、シャッターがあがるにつれてそれは大きくなり、開ききる辺りで、その二台のマイクロバスが走り込んでくる。バスは並列に停車して、電動シャッターが閉まるのも待たずに、おのおの十名ずつの男女が、時折、ゴム長の作業靴の音をキュッ、キュッとさせつつ、バスから次々に下車していく。
 電動シャッターが閉まりきり、パチンというスイッチの音とともに、まばらに灯りだす蛍光灯の冷たい明かりが、倉庫の内部をほの暗く照明する。手前に置かれた四つの大きな銀色の箱の並びにならって、シャッター側に向かい、男女それぞれが五名ずつの隊列を作り、団長らの登場を待つ。キィッ、バタンと、金属製のドアの開閉する音がして、手前から角刈り頭の団長と、スラリとした短髪の女性副団長とが、威厳というよりも事務的な姿勢で、コツコツと軍靴の音をさせながら、隊列の前へとやってくる。
 見渡す限り、団員は、男女ともに薄緑色の作業服を着て、同色の帽子をかむり、ズボンの縫い目に中指をあて、ビシッと姿勢を正している。
 「マニュアルは理解したか」と、角刈り頭の団長。手を後ろへ組んで、胸を張る。言えば分かる奴らを前にしては、声を荒げる必要もない。
 「はい!」と、団員は一斉に返事をする。
 「シッ。」団長は白い手袋をした人差し指を、口に当てて見せる。「声がでかい。」
 まばらな笑い声が、団員の中で起こる。副団長も、顔を伏せてちょっと笑っている。
 「指令書は厳格だが、我々はリラックスして行こう。」団長は片手をあげて、笑いを制する。「作業もたいして難しくない。ただ本当に、今回ばかりは、この地上ではなく、あの月の腹の中で、一度きりのチャンスしかない。ここならば、ヘリでかけつけることもできるが。あそこで応援を呼ぶことはできない。男女の居住スペースは、五キロと離れていないが、どういうわけか、居住者は、互いの存在を知らされていない。たとえ五キロの距離であっても、女が男湯へ、男が女湯へかけつけるわけには、いかないのだ。事を荒立てて成し遂げるのであれば、わざわざ我々が出向く必要はない。」角刈り頭は、振り返って、副団長に話題を譲る。副団長は一歩前へ出る。
 「我々はこれから、あくまでも修理屋として、月に乗り込む。」副団長の厳しい口調が、場を締める。「我々が活動中、居住者は部屋に退避させるが、万一、居住者と出会った場合は、挨拶以上の話はするな。ただし、地球への送還を希望する者がいれば、すみやかに、宇宙船へ行くよう指示せよ。荷物はカバンひとつまで。プラグの入手方法、挿入箇所への経路と挿入方法は、マニュアルに従え。完了次第、速やかに離脱する。以上。」一歩下がって、副団長は顔を伏せる。あとを角刈り頭が引き受ける。
 「諸君も知っての通り、夕刊真実が伝えたように、ちかぢか、あそこは運用を終わって、主催者の手で、破壊されることになっている。それは表向きではないのかと、世界中が心配している。あれは、我々人類にとって、非常に危険な実験なのだ。といって、事を表沙汰にすれば、とにかく反対したい輩が、きっと出てくる。そうならんように、我々が出向く。今、この世に平安をもたらすことができるのは、我々しかいない。我々がやらなければ、ほかにやれる者などいない。もし、我々のうちの誰かが、あそこに残されたとしても、我々はかえりみない。計画を遂行するまでだ。計画の完了は、最終的に、この建物内の司令室にある、起爆装置の作動によって確認される。地盤を破壊して、構造物をすべて、月の内側へ落とす仕組みだ。観測可能な変化が、月の表面に及ぶことはない。それは、ちかぢか、月への進出を計画している、我が国の首脳部が望む結果でもある。お前らは、俺だけじゃない、全世界百億の人類から、期待されているんだ。それを忘れるな。」
 「出発!」副団長の号令に従い、団員は回れ右をする。男女各十名のなかから、おのおの四名ずつが、手前の銀色の箱を二つあて取りに来る。残りの団員が男女それぞれ、別々に左右のドアを出るのにならい、箱のロープ製の取っ手を持った二人一組の団員も、男女おのおの、別々のドアから出て行く。最後に副団長が、キビキビとした身のこなしで、女性陣のあとへと続く。
 「吉報を待っている。」角刈り頭が、副団長の背中に敬礼する。副団長は立ち止まり、回れ右をして、答礼を返した。

 夕食を済ませた僕は、机の完了ボタンをタップして、表示される明日の日課に、軽く目を走らせる。ピピッと、机が鳴って、これもまた、あの時と同じくらいの、長文の告知が表示される。
 「班長会より居住者のみなさまに。かねてお知らせした、汚水処理プラントの機器交換修理が、今晩、行われます。その件で、来場の作業班から、居住者のみなさんに、当夜、守っていただきたい事柄などをお伝えするよう、指示がありましたので、告知いたします。有毒ガスが発生する可能性があるため、居住者は今晩、部屋から出ぬように。殊に中庭への出入りは、ゲートの電源を切りますので、機械的に不可となります。各部屋からの排水については、今晩、極力、排出を控えてほしいとのこと。ただ、新しい機械を取り付けるまで、古い機械にバイパスを作るので、部屋に溜める必要まではないとのことです。最後に、帰還を希望されるかたは、作業班の到着次第、すみやかにハッチへ来るように。手荷物はカバンひとつまでとのことです。以上。」
 「ちょうどいいや」と、僕。前田さんとは、もう、会えないのだろう。斉藤さんは、同期の半数が帰還したと言っていた。僕も、前田さん以外、同じ船で来たひとを知らない。まあ、角刈り頭は……。
 歯をみがいて、ベッドに身を投げる。自分は、そんなにも、少数派なのかと。それとも、斉藤さんや角さんの時で、出尽くしたということなのか。絶滅という言葉が、僕の頭をよぎる。それもまあ、いいかな。
 「ひでぇ星だ……」どこかで聞いたセリフを、僕も呟く。本当に、ひどい星だと思う。横になり、掛け布団を抱き込む。モヤモヤとした気分で、とりとめもないことを思ううち、いつしか眠っていた。
 ハッチに着陸した船の中から、防水服を着て、酸素マスクをかむった六人が、一列に連なって、静かにタラップを降りてくる。続く四人の団員が、二つの銀色の大きな箱を携えて、そのあとに続く。
 ハッチから伸びる広い通路を、各部屋へと続く脇の廊下へは入らずに、そのまま進んで行く。誰一人、話す者もない。突き当たりの階段を、全員が下へ降り、汚水処理区画よりもさらに下へと降りて、最深部の扉の前に出る。各自、端末を取り出して、扉の前の脇の壁の、四角く囲われた部分へ、おのおの、端末をかざして中へと進む。
 天井からの、間のあいたスポット照明の下で、隊列はサイレント・フィルムのひとコマずつのようでもある。時折、中庭の側の壁の中から、ピシッ、ピシッという、何かが押し砕かれるような音が聞こえる。この最深部のフロアは、引力によって生じる、月の内部のわずかな歪みを利用して、発電の研究をしていた場所。歪みを電気に変える結晶が突然に砕けて、飛んできた破片で研究者が死亡したため、現在は放置されている。
 廊下は直角に曲がって、さらに先へと伸びている。隊列はしずしずと、道なりに歩いていく。やがて突き当たりとなり、先頭を務める団員が、目の高さにある囲われた部分に端末をかざすと、その突き当たりの壁が内側へと沈み込み、横へ隠れて、各部屋へと続く廊下のような、青白く縁取られた、短い廊下があらわれる。
 左右の壁、ちょうど両手が触れる辺りに、すべて違う形で縁取られ、ナンバリングされた部分が並んでいる。先頭の者が、そこを手でなぞりつつ、廊下の奥へと歩くと、その縁取られた部分が壁から剥離し、その部分の裏に固定された、六本の細くて長い、筒状の端子の一部分をのぞかせる。
 続く団員らが、それらを壁から、慎重に両手で抜き取り、持参した銀色の大きな箱の中の、それぞれのプラグの形に工作せられた穴の中へ、上から差し込んで収納する。全部で十個のプラグ・セットが、すべて回収せられた。
 団員らは隊列を整えて、今度は階段をのぼりにかかる。この階段で、最上階まで、行かねばならない。そこは中庭の天井裏であり、中庭の壁と天井とを支える十本の太い柱が、唯一、コンクリート打ちはなしの、生の表面を晒す場所でもある。
 到着した一行は、めいめい、箱の中から指定された番号のプラグを取り出し、その同じ番号がふられている、太い柱のひとつひとつへと向かう。隊列のさきがけをつとめる団員は、しんがりをつとめる団員とともに、おのおの五番と六番のプラグをたずさえ、はるか彼方の柱を目指して、黙々と歩き出す。銀色の箱はその場に放棄せられ、プラグの挿入を終えた団員らは、三々五々、階段を降り、宇宙船へと帰還する。計画上、一番最後に挿入されるこれらのプラグについて、警告するような仕組みは、元よりない。
 さきがけをつとめる団員は、今、ようやくにして、五番の柱に到着し、青白く柔らかな照明のなかにそびえたつ、その威厳ある物体の前にひざまずけば、ちょうど肩の高さに、プラグと同じ形状の穴が工作されてある。持参したエア・スプレーのスイッチを入れ、降り積もったチリや、穴の中の接点を吹き清める。おもむろに、持参したプラグを両手でかかげて、まずは番号と上下の間違いとがないことを確認してから、慎重にその穴へと差し入れる。
 最後にスッと吸い込まれるように入った感覚があり、プラグに書かれた数字の背景が、ほの青く光る。さきがけをつとめる団員は、そのほの青い光に、うむ、とうなずいて立ち上がり、六番の柱へ向けて歩きだす。
 途中、六番のプラグを担当した、しんがりをつとめる団員とすれ違い、軽く片手をあげて、プラグの挿入完了を伝え合う。半周分、五箇所のプラグのほの青い光を確かめて、さきがけをつとめる団員は、階段へと戻る。ややあって、しんがりをつとめる団員が到着し、二人で、足のつくようなものが残されていないか、周囲をくまなく確認する。互いにうなずき、チラリと辺りを見渡してから、二人は階段を降りていった。

 深夜、ユニバス社の、月のミッション専用の司令室に、背広を着た角刈り頭が、ひとり座っている。見下ろす端末の画面が明滅して、副団長からの、両船ともに離脱完了の通知が、音もなく届く。背広の胸ポケットに端末をしまい、角刈り頭は、グイと、背広の襟を引き締める。ユニバス者の襟章が、モニターの光に鈍く輝く。
 上着のポケットに手を入れると、かねてから準備しておいた、二個の小さな鍵が、指先に触れる。その存在を確かめて、椅子から立ち、角刈り頭は、最前列の責任者の席へと、ゆっくりと降りていく。
 指令席のコンソールの、その一角だけ、更新のたびに切り取られて、はめ込まれてきた、古めかしい、傷だらけの、五インチほどの液晶タッチパネルがある。左右の鍵穴にこの鍵を差し、回してやれば、電源が入る。ドラマのように、同時に回す必要はない。月のほうで、プラグが完全に差し込まれていれば、パスワードを要求する画面と、ソフト・キーボードとが表示されるはず。
 角刈り頭は、上着のポケットから、小さな鍵を取り出し、ひとつずつ、鍵穴にさす。ギュッと拳を握り締めて、力を解き、ひとつ、またひとつ、鍵を回す。確かに、画面には“PASSWORD?”の文字と、自分の指には小さい、アルファベットのみが順番に升目に並んだソフト・キーボードとが、表示されている。
 こんなもんだろうと、角刈り頭は苦笑する。内の胸ポケットに手を入れ、タッチペンを取り出す。ソフト・キーボードの上をさまよいながら“DAWN”と入力し、一番下の、横に細長く表示されたエンター・キーを押す。内の胸ポケットに、タッチペンを戻して、角刈り頭は結果を待つ。ややあって、画面が暗転し、数行の文章が表示されたが。しかし、文字が小さくて、角刈り頭は、両手をコンソールに置き、それを支えにして、画面にグッと頭を近づける。
 “THE SELF-DESTRUCT CIRCUIT 
  WAS SAFELY LOCKED DOWN. 
  NOW, ERASING SOFTWARE."
 その下の表示が、五分の一、五分の二と、秒単位で分子の数字を上げてくる。角刈り頭は、両手の拳で、ガンガンと、コンソールを叩きつけるが、しかしそれも虚しく“COMPLETE”の表示。司令室のモニターが、その古風な液晶タッチパネルのみを残して、一斉に暗転する。角刈り頭の、赤く握り締められた両手の拳のなかで、画面が暗転し、新たな表示があらわれる。
 “YOU CAN TYPE THIS LETTER 
  INTO YOUR OWN CONSOLE 
  "DONE" THAT IS OUR SELF-
  DESTRUCT PASSWORD. 
  WHO KNOWS IT WAS 
  SUCCESSFUL OR NOT?”
 握り締められた拳が、次第に開いていく。

 仕事明け、喫茶「夜明け」で、内藤はひとり、ホット・コーヒーを楽しんでいる。佐々木さんは初孫の誕生日。福ちゃんはトルコ辺りで、何か買い付けをしているらしい。今日のコーヒーは格別に美味いと、内藤の顔が言っている。
 「ありがとうございます」と、店主に見送られ、内藤は地下一階の踊り場から、階段をのぼり、地上へと出る。ビルの高さすれすれに、ポッと、明るい月が出ている。ズボンのポケットに手を突っ込んで、内藤は道行くひとびとの流れに呑まれ、タクシー乗り場まで歩く。ビル街を抜けると、タクシーの窓からも、月が見えだす。
 「済んだよ親父。」内藤は呟く。もしも人が、この先も続いていくのだとすれば、彼彼女らは、いずれは、お互いの存在に気がつくだろう。月を見上げて、内藤は微笑む。あの人たちは、何と呼ばれるんだろうな。宇宙人?、月の人?。
 馴染みの、近所の商店の看板が見えてくる。今日の道は、割とスムーズだったなと、内藤は来た道を振り返る。座席に身をゆだね、両手を腹の前に組んで、目をつむる。たのむぞ、と、内藤は心の中で呟いた。


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月の庭(3)

2025年02月09日 | 小金井充の

 「こんな星はやく宇宙から消えろっつってんだよ!」
 目を開くと、机や窓の輪郭が、うっすらと見える。まだ夜明け前。起きるには早い。参ったな。叫んじゃったんだろうか……。掛け布団を抱き込み、胎児のようにちぢこまって、僕はあの、カンカンと鳴る、軽い造りの廊下のことを思う。まだ時々、発作のように、あそこでの夢を見る。
 暑い。ものうげに、仰向けになる。フゥとひとつ、溜め息が出る。天井はもう、元の天井にしてある。中庭に雨が降れば、連動して、天井にも雨が降る。天井が落ちた家で、ビニール・シートにくるまって見上げたのと同じ空。それを見てから、天井は天井のままにしてある。
 そろそろと、布団から片手を出して、汗で湿った前髪をぬぐう。でも、思ってみれば、誰かの叫びを聞いたことはない。はや存在を忘れかけた、窓枠と一体型のスピーカーから聞こえる中庭の音のほかには、自分が出す生活の音以外、聞こえてこないな。なら大丈夫かと、気分は軽くなる。外れた枕を手繰り寄せて、首の下へ詰め込む。スッと息が深まる。
 目覚めはよかった。ピピッと机が鳴る前に、起床完了のボタンをタップする。続けて日課が数行、表示されるが。しかしもう、見ずとも分かっている。昨日干した靴下を、浴室へと取りに行く。シーツ類と一緒に、衣類を全部、回収に出すひともいるけれど、僕は下着と靴下だけ、洗面所で洗っている。回収されたシーツ類が、どのように洗われ、仕分けされるのかは、当番で実際にやっているので、よく分かっている。下着や靴下を回収に出したとしても、衛生的に問題ないし、誰かの手間になることもない。あとは個人の好み。ここでは時間があるから。時間があるというだけで、部屋も綺麗になる。
 机の引き出しから端末を出し、昨晩支給されて、扉の前の壁のフックにかけておいた、今日の分の作業着一式を着込む。レイン・コートのような、防水性の作業着。帽子を前後ろにかむり、フードをかむる。あの日支給された長靴をはく。今日は軍手ではなく、厚手のゴム手。あの日、ずぶ濡れになった靴は、ちゃんと乾かされて戻ってきて、今は、なかなか履く機会のないままに、扉の脇へ置かれてある。
 キュッキュッと靴底を鳴らしながら、青白い光の回廊を歩き、緩やかに照度を上げる空間に立つ。ゲートの脇の細い換気口が開き、ゴロゴロとゲートが引き上げられる。端末の画面に出る矢印は、もう見なくていい。見学は頓挫してしまったが、あの日、斉藤さんに連れられて降りた螺旋階段を、まさにその地下二階まで降りていく。台風と洪水とを難なく過ぎて、廊下で酸素マスクを受け取り、汚水処理のプラントに入る。誰かポンと、僕の肩を叩く。
 「今日も早いね」と、斉藤さん。マスクの中で、いつもの笑顔が少し汗ばんでいる。「前田さん今起きたところだから、来たら始めましょう。」
 僕はうなずいて、細長い処理槽の奥で、段取りを始めている角さんの脇へつき、水のホースの接続を手伝う。
 「あ、おはよー。」と、マスクの中の、いつもの眠たげな顔で角さんは言う。斉藤さんの次の船で来た、ひょろりと背の高いひと。挨拶した日に、首の傷を見せてもらった。
 「おはようございます」と僕。「もう一機、使いますよね。」
 「うん。じゃあ、任せたね。」と、角さんは、僕が横手に水ホースをつなげた、まるで酸素ボンベのような機械を、よいしょという具合に両手で抱え上げて、処理槽のさらに奥へと入っていく。機械の頭についている、太くて短い排水ホースが、前回の残りの水分を垂らしながら、ズルズルと、角さんのあとをついていく。
 僕は残りの一機に水ホースをつなぎ終え、角さんのように抱え上げようとするが。しかし、ことのほか重いこと。おまけに排水ホースのせいで、あちらへ、こちらへと振り回されそうになる。
 「コツがいるんだよ」と、僕の後ろで斉藤さんが言う。「後ろ、持ったげるから。」
 角さんは、機械を床に置いて、慣れた手つきで、排水ホースを処理槽の下のすき間へ引き回し、脇の乾燥機の下側につないでいる。見よう見まねで、僕もやってはみるものの。処理槽の下のすき間はけっこうシビアで、思うように通ってくれない。そうこうするうちに、太い腕がヌッと、僕の前にあらわれた。排水ホースをつかむ。
 「機械、も少し前に出してくれたら、俺つなぐから。」と、前田さん。宇宙船の中で、角刈り頭と、力こぶの見せ合いしていたひと。僕は排水ホースを手放して、機械を押しにかかろうとするけど、前田さんの力だけで、機械がグイグイと前へ出て行く。
 「つなげたぁ?じゃあ、フタ、開けよっか。」眠そうな角さん。でもアクビは出ない。「これやらないとぉ、みーんな、生きていけなくなっちゃうから。」そう言って、ハハハと、力なく笑う。
 斉藤さんと僕とで、片手ずつ、処理槽のフタの取っ手をつかむ。「ィヨッ!」と、気合を入れて持ち上げる。重っ!。持ち上がるそばから、黒い泥があふれ出す。空調がうなりをあげる。
 「あー、カラカラ言ってる。」斉藤さんは、天井の吸い込み口のそれぞれに、耳を向けてみる。「次の班のひとたちに、お願いしなけりゃ。」
 角さんはそつなく、前田さんは力技で機械を抱え上げて、泥のなかへ、その先を差し入れるが、しかしなかなか、ウレタンのような黒い泥の中へは、入っていかない。
 「水ぅ。」と、角さんが、マスクの中から表情のない顔で、僕を見やる。この顔には、最初はドキリとさせられたものだ。
 フタが倒れないのを確かめて、僕はさっき、機械に水ホースを組み付けたところまでとって返し、かがんで、壁から出ているコックに手を伸ばす。ブォォォという、プロペラの回る音が聞こえだす。
 「ぶはっ!」という、前田さんの声。振り返れば、前田さんの側から、黒い水しぶきが上がっている。角さんが、前田さんの機械を、グイと引き寄せる。水しぶきは止んだが。しかし、二人とも、泥をかむって散々な姿。斉藤さんは、元よりフタの陰に隠れていて、無事の様子。
 「もっと出せ!」前田さんの、マスクのせいでくぐもった、太い声が響く。出し過ぎると、かえって泥があふれてしまうから、単純に全開というわけにもいかない。斉藤さんが僕のほうを向いて、両手で大きく丸を作る。
 乾燥機の底からは、ゴボゴボと泥があふれ、コンベアで、一段目の電熱器の下へと運ばれていく。生乾きになった泥は、ローラーで押されて薄い板状になり、二段目の電熱器で焼かれて、養分に富んだ、無菌の土になる。粉砕されたあと、コンベアで中庭におろされ、居住者の食卓にあがる菜園の、新たな土壌として利用される。
 「もういいでしょう。水、止めてください。」斉藤さんが、僕に手を振る。泥が引いて、澄んだ水が流れ始めたころあい。角さんと前田さんは、泥の散った床へ機械を寝かせて、水ホースを外しにかかる。
 「水ぅ。ちょっとね。」と、角さん。前田さんと、お互い、かむった泥を洗い流す。それからホースを床へ向けて、「いいぞ」と、前田さんは僕に言う。ここからは水全開。処理槽や天井に跳ねた泥を、丁寧に洗う。
 角さんは、機械を洗ってから、床の泥を流しにかかる。常に空気が吸われるために、どれだけ濡らしたところで、じきに乾いてしまう。綺麗にしておかないと、虫や動物に侵食されかねず、次に自分らがやるとなれば、気が滅入ることにもなる。それは誰だって同じだろう。
 斉藤さんと僕は、機械を引いてきて、コックの向こうの、二つあいた横穴に、それぞれ押し込む。頭までは入らないので、そこへ排水ホースを巻きつける。
 「おーい」と、前田さんの声。コックを閉めて、斉藤さんと僕は、水ホースを引っ張りながら、手前のフックへと、巻き収めていく。
 「ちょっと出して、私らも洗いましょう。」斉藤さんが、僕にホースの口を向ける。上はフードから、下は長靴の底まで、互いに水をかけあう。まあとにかく、みんなビショ濡れだ。年をとったら、こんな作業はできないだろうなと、僕は思った。
 プラントの出口で、酸素マスクと防水服、厚手の手袋をあずけ、長靴は、消毒槽の中でジャブジャブやって。満足げな面持ちで、四人はプラントを出る。青白く縁取られた螺旋階段をのぼりだす。上からの光が眩しい。
 「ごくろうさんです。午後は牛をやりますから。」と、斉藤さん。頭上の枝に、小鳥のさえずりが聞こえる。
 「あの汚水は、あの先は、どうなるんです?」と、僕は斉藤さんに聞く。
 「この中庭の土からの蒸発と、木々の蒸散とで、いわば濾過されて、あの上の換気扇とパイプで」斉藤さんは天井を指差す。「回収されて、生活用水になります。その一部がフィルターを経て、飲用水になる。」
 「吸い出した臭いは、どうなります?」と僕。この際だから、聞きたいことは聞いてしまえ。
 「場内の排気はすべて、ダクトの中を流れて、一度、月の表面に出るんです。」斉藤さんは、片手の指を上へ向かわせ、その手にもう片方の手の指を、上から降り注ぐ感じで当てて見せる。「そこでは、宇宙線から二次的に出る粒子を適当に減速して、脱臭の効果を持たせてあります。そして」
 斉藤さんは、自分らの行く手にそびえる、中庭の周囲の壁と天井とを支えている太い柱の一本の、その一番上のほうを指差して見せる。「あそこら辺から横へ噴き出したのが、中庭を大きく、ゆっくりと巡るうちに、虫や木々や細菌、建材、ホコリなどで成分を調整されて、この地べたで、私らも呼吸する空気になります。」
 「だからぁ、変なもの、使っちゃダメだよ。」角さんが、相変わらずの眠そうな顔で、僕らに微笑む。自分の部屋へと、やんわり、歩き出す。
 「さあ、飯だ飯だ。」前田さんも、ズンズンと先へ歩いていく。
 「私らも、ご飯にしましょう。食べてから、あの泥を見る気には、なれないなぁ。」斉藤さんは、背中越しに、手を振って見せる。みなさん、なんだか楽しそうな。前田さんは飯があるとしても、斉藤さんや角さんは?。僕も、だな。
 「ニャア」と、脇の木陰で、猫氏の鳴き声がする。今日もオヤツにありついて、ご満悦の様子。ここにいる動物は、僕の見た限り、オスだけだ。午後から世話に入る牛も、オスしかいない。牛とは言うものの、子牛ばかりだし。
 猫氏の隣に座って、僕は木にもたれる。はるか以前の記憶に、こんな景色があったかもしれない。猫氏は、頭をかいてやると、気持ちよさそうに顎を出して、目を細める。この中庭に何匹かはいて、それぞれが誰か彼かからオヤツをもらうので、少々太り気味。イヌやカラス、騒々しい輩は、ここにはいない。
 ドヤドヤと談笑しつつ、他の班のひとたちも戻ってくる。僕がここにいることを、誰もとがめない。一人が立ち止まって、僕に声をかける。
 「泥の掃除、大変だったでしょう。」港さんは、斉藤さんと同期。小柄ながら、作業服の似合うひと。あそこでは、無理をして、電気工事の下請けをしたのが、最後の仕事だそうな。
 「みんなズブ濡れになりました。」と僕。港さんは、うんうんとうなずいて、片手を振って、自室へと戻っていく。科学の進歩。見た目では分からないが。しかし、感電して墜落して、左足を失ったことは、みんな知っている。僕は……。
 そうだ。午後も力仕事。飯、食っとかなきゃ。猫氏とお別れして、僕は自分の部屋へと続く、高いゲートの前に立った。
 部屋へ戻ると、麦の焦げた、いい香りがする。思い出したように、唾が湧いてくる。机の上に帽子を放りだし、ビジネス・チェアを押して、洗面台の横へ。いい感じに焼けた分厚いトーストが、四角く斜め半分に切られて、編みかごの布の中に、鎮座している。
 「さすが」と、思わず声が出る。今日のうちに何もなければ、僕らは明日、これを作る。黄身のトロリとした茹で卵の脇には、ジャムと、バター風味のマーガリン。ジャーマン・ポテトも、いい塩加減。ここでは希少品のコショウも、惜しげなく入っている。牛肉なのを除けば、本場もビックリだろう。
 半分くらい、一気に食べてしまったが。しかし、昼の時間は、十分にある。デザートのリンゴを一切れ。紅茶を飲み、気分を落ち着かせる。子供の頃、あそこでは、よく噛んで食べろと言われたなと。ここではおのずと、よく噛むようになる。よく噛むというか、味わうようになる。
 机に戻って、完了のボタンをタップする。昼から散水の告知が出ている。うまく水が回ったようだ。午後の仕事は、それからだな。ビジネス・チェアの背にもたれて、あれも自動化すればいいのにと、僕は思う。思ってから、考えてみれば。忘れかけていた。ここは研修所なのだから。
 ピピッと、机が鳴る。ここに来て以来、見たことのない長文の告知が、画面に表示されている。
 「班長会より居住区のみなさまに。汚水処理プラントの、昨今の故障頻発の状況にかんがみ、本社へ修理改修を打診しておるところです。その返答が来ましたので、みなさまにお知らせいたします。まだ期日は決まっておりませんが、準備が整い次第、緊急の要件として、新たな装置持参で、作業班が派遣されます。おそらくは、次回の物資輸送に伴って、来場するものと思われます。その際、みなさまの日課には、一日から数日の間、汚水貯留の作業が追加されます。方法などについては、追ってお知らせいたします。以上。」
 「故障かよ……」思わず声が出る。いやしかし、どんな故障にも、対処していかねばならないのだろう。サーッと、ホワイト・ノイズのようなかすかな音が、窓から聞こえてくる。散水が始まったようだ。僕はビジネス・チェアを立ち、窓辺へ寄る。雨というよりは、霧に近い。見上げれば、けぶった天井の所々から、水が噴きだしている。いずれ、あれも修理しなけりゃならなくなるのか。僕はいつしか、窓枠に添えた手を、握り締めていた。
 牛舎と畑とは、地下へ降りる螺旋階段を過ぎて、中庭のもっと真ん中辺りに設営されている。僕は散水が終わってすぐ、中庭に出た。道端の、つややかに光る芝生を眺めながら、螺旋階段を過ぎて、稀に、どこかで水浴びしている小鳥の羽音を聞きなどしつつ、牛舎へと歩く。後ろから、ドシドシと迫ってくる、長靴の音。振り返らずとも、前田さんとは知れる。
 「告知見た?」前田さんは、横へ並ぶなり、少し背をかがめて、僕の横顔を覗き込む。「俺、帰ろうと思うんだ。」
 「帰る、って?」どこへ?、と聞きそうになって、僕は言葉を呑む。もうすっかり、ここの住人だな。
 苦笑いを浮かべる僕の顔を、別の意味で見取って、前田さんは黙ってしまう。
 二人並んで歩いている姿は、きっと、僕が子供のころ好きだった、獣人さんの漫画みたいだろう。何となく筋書きを思い出して、僕は微笑む。
 「なんだよ。渋い顔したり笑ったり。」隣で前田さんがいぶかる。「まあいいや。ちかぢか来るっていう修理の船に、便乗させてもらうつもりだ。部品をおろしたら、そのくらい余裕はあるだろ。」
 僕は、うんうんと、うなずいて見せる。実際、希望すれば無条件で戻れるんだし。希望しなくても、戻されるくらいなんだから。
 「ここへ来る前、前田さんは、どんな仕事をしてたんですか。」と僕。宇宙船で乗り合わせた時から、聞いてみたかったこと。
 「トレーラー運転してた。運び屋さ。半日かけて荷物を積み込んで、半日かけておろす。ティッシュの箱は辛かった。」ズボンのポケットに手を突っ込んで、前田さんは、中庭のはるかな天井を見遣る。クンクンと鼻を鳴らして、渋い顔になる。
 「ンゴォォォ」という、子牛の鳴き声が聞こえてくる。作業、もう始まっているんだろう。
 僕らは軍手をして、戸口に立てかけられたフォークを手に取る。とりあえずは、斉藤さんと角さんとで集めた古いワラを、一輪車に積んで、脇の堆肥場へと運ぶ。土をかけて、臭いをおさえる。
 ちらりと、斉藤さんたちのほうを見れば、角さんが、僕らを手招きしている。
 「これから牛舎へ戻すんですが」と、斉藤さん。角さんは、何かを取りに、牛舎の中へ入っていく。
 背後の柵に立てかけてある、黒く塗ったベニヤ板を、斉藤さんはコンコンと、僕らにノックしてみせる。「どれか一頭、二人で、この板で追って、向こうの小屋へ閉じ込めてください。子牛とはいえ、力が強いです。甘く見ないように。」
 見渡せば、十頭もいない。次の物資補給船が来るまで、もてばいいくらいの数字。運悪く、一番遠く、小屋の近くに、一頭、草をはんでいる子牛がいる。
 角さんが、牛舎の中から戻ってくる。背中にポータブル電源を背負い、手には、磨かれた分厚い電極が先っぽについている、棒状の器具と、アース線のクランプとを持っている。太い一本の電線が、棒をつたって、角さんの肩越しに、背中の電源へ接続されている。
 「肉の在庫が不足気味です。」と、斉藤さん。「さばくのは、別の班ですが。私らは、絶命させるところまでです。」
 ここへ来て、初めて、嫌な仕事だなと、僕は思った。角さんは、そんなそぶりも見せないが……。
 「僕もねぇ、悩んだ。」角さんは、例の表情のない顔で、電極を、僕らの前へ突き出す。「だいじょーぶ。スイッチ、入れてないから。」電極には、研がれて薄くなってはいるが、確かに、焦げた跡がある。
 「僕の答えは、言わないョ。」角さんは、いろんな意味で当惑する僕らに、ニッコリと笑って見せ、小屋のほうへ歩いていく。
 前田さんが、無言で板を取り、小屋の近くにいる子牛のほうへ、スタスタと近づいていく。僕も板を持って、そのあとを追う。僕らの狙いが定まると、斉藤さんは僕らに近い側から、子牛を牛舎に追っていく。
 閉じ込められても、子牛は暴れる様子もなく。おそらくは怯えてしまっているのか、でなければ、何か新しい遊びでも始まるように思っているのか。角さんが、アース線のクランプを、小屋の床に敷かれた金属板につなぐ。
 「スイッチ、入れてぇ。」背負ったポータブル電源を、角さんは、たまたま近くに突っ立っていた僕に向けてくる。「右の上の、丸ぁるいツマミ。右にひねって。」
 カンッと、スイッチが入る。四角い赤いランプが灯る。ヒューと、電流回路の動作音が聞こえる。角さんは頭をかしげて、その音を確かめてから、小屋を覗き込み、子牛のおでこの位置を確認する。棒を差し入れる。ピーと、ポータブル電源が鳴った。
 「そのままでいいです。」いつの間にか、斉藤さんが、僕らの後ろで見ている。「別の班のひとたちが、回収してくれます。スイッチ、切ってあげて。」
 「自動で、切れるんだけどー。」角さんは、僕のほうへ、背中を向ける。四角い赤いランプは消えて、ヒューという音もない。スイッチを左へひねると、ただ、カチッという、小さな音だけがした。
 「子牛なのは、輸送費の問題ですか。」と、前田さん。「大きいと、扱いも難しそうだ。」
 「そうです。」と、斉藤さん。角さんは、道具を置きに、牛舎へと戻る。
 「そうですが、それだけではないです。」斉藤さんは、腕を組んで、ちょっと、首をかしげる。話したものかどうか。話して何かになるのか、思案している様子。やおら、斉藤さんは言葉を継いだ。「その生物の文化や秩序を受け継ぐことができるのは、大人だけです。子供に、何の価値があるのでしょうね。」
 「子供がいなければ、その生物は絶えてしまいますよ。」と、前田さん。僕は何も言えないまま、二人の問答を聞いている。
 「その通りです。だから、沢山生まれてくるんです。時間をかけて、大人を残していくために。」と、斉藤さん。僕らに寂しく微笑んで、牛舎へと歩きだす。
 前田さんは、渋い顔をして、何か決意したとでもいうように、うんと、無言でうなずく。僕のことは忘れたふうで、スタスタと、牛舎へ歩いていく。
 僕はそこに突っ立ったまま、胸の鼓動を感じていた。僕は気がついた。いや、改めて、確認したと言うべきかもしれない。僕がここへ来た理由。ここが好きな理由。もう何があっても、あそこへ戻ることは、けっしてない。戻っちゃダメなんだ。僕には今、そのことがハッキリと分かった。


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ねぇねぇもう食べた?

2025年02月07日 | ごはーん\(^o^)/

たまたま入ったセブンで、

たまたま見つけたコレ。

背後でボケてるのは

定番のポトフです。

あればほぼ買う(笑

今日みつけたのは、手前のやつ。

汁のなかに

焼きおにぎりが1個

入ってるだけなんだけど。

コレ、美味いわ。

コロナ長期休業以前の

ANAクラウンプラザホテル札幌の

ランチビュッフェで味わった、

今となってはもう幻の

出汁茶漬けを思い出すくらい美味い。

最初、ワサビまでついてるの知らなくて、

一緒にチンしてしまった(笑

チン前に外してね♪

ワサビは汁に入れるんじゃなくて、

箸でつまみ出した焼きおにぎりにつける。

別途、冷凍の焼きおにぎりをチンして、

追い飯してもいいくらい。

ワサビは冷蔵庫に入ってたやつだけど(笑

2度目からは、小さめの碗に移して

食べてます。

残念ながら、入荷量が限られてるようで、

次にお目にかかれるのは、

いつになるかなぁ…


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