午前10時を過ぎたので、
朝ごはんを食べに行こうと。
札幌市営地下鉄の大通り駅。
改札を出て、
立ち食いそばの、
ほのかなネギの香りが混じる、
濃いつゆの匂いのするほうへと歩く。
その札幌の歴史でもある、そば屋の脇の、
狭めの階段を登ると、見えてくるのだ。
先の経営者が引退して、
一時は、廃業ということになったが。
現在も続く、喫茶ひので。
ガキの頃から知っていたんだが……
入ったのは、これが最初だ。
サロンというと、日本では、
高級な感じの言葉に思えるが。
それは、さしたる歴史もない業界が、
高級という言葉にすがるしかないと、
勝手に考えたからで。
せっかく歴史の出来てきたものを、
積極的に壊していったからで。
サロンってのは本来、
生活臭がある。
特別な場所ではなくて、
街の中の店屋の、一軒に過ぎない。
ただ、騒ぎたい連中は、
他所へ行ってもらって、
静かな場所で、まあまあな食事や、
自家製らしいケーキ。
コーヒーをすすりつつ、
ヒソヒソ話をする。
テーブルの小ささが、
それを無理なく可能にする。
小柄で固めのソファが、
身を傾け、あるいは、
天井を見遣るのにも、丁度よかった。
初めての朝ごはんは、
豚汁定食にした。
卵は、なま卵。
僕は、白身は豚汁に入れ、
黄身を卵かけご飯にする。
自家製であろう。
豚汁のザク切りの玉ねぎが、
家庭料理だと言っている。
うまい。ガキの頃、
鼻水たらしながら握り飯を頬張り、
すすった豚汁の、懐かしい味がした。
たばこが吸えるのは、ありがたい。
世の中の、いろいろな音がする店内で、
思わず知らず、小一時間を過ごしていた。
会計は現金にした。
カードや電子マネーの可否は知らん。
たばこが吸いたいひとは、
入店時に、たばこ吸いたいと伝える。
右の席の一部が、禁煙になっている。
禁煙というか、分煙というか。
風で煙を払ってくれる装置があるようだ。
朝10時前までは、
地下街の店屋は、まだ開店前なので、
待ち合いが、この喫茶しかない。
それでか、朝10時を過ぎるころから、
ぼちぼち、席が空き始める。
朝飯にはギリギリ、
間に合うということさ。