これから雨が降るのかという、
荒れた雲の下で、夕暮れ時、
一戸の建物に、明かりが灯っていた。
この時間、本来ならば、
明かりが灯ることは
なかったかもしれない、
この一戸の建物は、
解体中の工場だった。
あの蕎麦が、
ここで作られていたそうな。
よその社員さんに、
音威子府蕎麦のファンがいて、
仕事でご一緒したとき、
もう食えないよと教えたら、
「え……」
と言って黙ってしまった。
田舎にとって、
名産品を生むのは大変だが、
続けるのはもっと大変だと、
この蕎麦のことで実感したわ。
道北の鉄道とバスとの
玄関口になれていれば、
少しは事情も違ったかもしれんね。