映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のネタバレありの感想を書きました。
しかし長文になってしまったので、自動読み上げ機能を使って動画にしてみました。
【ネタバレあり】ゴジラキングオブモンスターズの独善的な解釈
突貫工事で作ったので荒いのですが……でも、今回の映画への私の個人的な解釈となります。
もしお時間ありましたら、ご覧ください。
尚、動画と同じ文字データを以下に記録します。
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先日観てきました「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の感想の続きです。
一晩経って、ネット上の様々なネタバレ感想を読んで、自分なりに考えをまとめて記事を書くことにしました。
そのためにはネタバレを避けて通れないので、あえて今回は「ネタバレあり」を掲げて投稿させていただきます。
なお、これはあくまで個人の感想による解釈ですので、公式の設定や見解と一致しているわけではありません。
また自分の考えを述べるために、あえて断定的な表現や、わかりやすくオーバーな表現を随所にしていることもお許しください。
――それでは、今回は【ネタバレあり】でお送りします! ご注意ください!
(以下、改行を開けます)
まず、何と言っても今回のゴジラ映画で驚いたのは――【ママが悪役!】という点でした。
ママとは、少女マディソンの母親であり、各国共同で設立された未知の巨大生物の案件などを扱う特殊研究機関「モナーク」の幹部クラスの研究者でもある、エマ・ラッセルのことです。
このエマ・ラッセルには古生物学者としての経歴と実績もあり、子供を亡くした傷に癒えない母親としての側面もあります。
この二つの側面を活かして悪役になるわけですが、わかりやすい悪役としての記号はいっさい演出的に使用せず、むしろ普通っぽい女性が――実は狂人になっていましたという“裏の顔”を持たせたことが高度な描き方だなと思いました。
例えるなら「ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒」のイリスと融合した少女、綾奈とも符合するキャラクターだと言えるでしょう。
そのエマは、自分が悪いことをしているという自覚がありません。
本当は「愛する子供が死んだ世界など死んでしまえ!」というエゴが原動力なのですが、それはやがて「怪獣たちを甦らせて、地球を掃除してもらう」という環境保護のナルシストや潔癖症が好みそうなお手軽思想に飛びついちゃったので、始末の悪い厄介な正論を吐く悪役(狂信者)に成長してしまったのです。
平成ガメラ3の綾奈は、ストレートにガメラへの復讐心によってイリスという怪獣を育てるのですが、こちらのエマはゴジラを恨まず、その思いをねじ曲げて二重構造化させてしまうという変化球に発展していきます。
【根拠1】
映画の冒頭で、娘のマディソンが「(父親へのメールで)お母さんのことが心配…」と、母親の異変を察知している描写が存在します。
【根拠2】
元イギリス陸軍大佐で、元MI-6(イギリスの秘密情報機関の)エージェントにして退役後エコテロリズムに立場を変えたアラン・ジョナにも見抜かれていました。
――などが挙げられます。
この狂信者の厄介なところは、一見して普通の女性に見えることです。話し合いが通じそうに見えて、実際はまるで通じない頑固者であること。
なので、自分のやってることを承認してもらいたくて(SNS的に言うと「いいね」が欲しくて)、わざわざ古巣のモナークに通信してきて宣言しちゃうという甘ったれぶりを発揮します。
これ、観客にはボスキャラとして物足りなく思えて仕方ないことでしょう。
どうしてそんなことしたかと言えば、「怪獣よりも人間のほうが愚か」という、この映画のテーマを打ち出したかったからなんですよね。
そうすることによって、「こんなに人間側が愚かなら滅んでも仕方ないかも…」と観客が思うかどうかはわかりませんが、そんな終末観がチラリと観客の脳裡によぎっていたかもしれません。
ここが新しい描き方だと思いました。
刑事ドラマの殺人犯クラスの犯行動機でしかないボスキャラが、環境テロリストや怪獣を解き放つという事件を起こすことによって世界的な犯罪者に昇華してしまうアンバランスさ――この危うさが現代なのかもしれません。
悪役には悪役らしさを求めたくなるところですが、この映画はあえてそれをしなかったんですね。
狂信者なのに、狂ったところを描かなかった。あえて、それらの描写を封印し、普通なところばかりを強調した……。
そうすることで、どんな人でも愚かになりうる――「怪獣よりも人間のほうが愚か」という作品テーマの象徴になりうる一個人を描き出したのです。
まさに女性は怖い――と言いますか、怪獣映画に女性的な要素がこんなにも合うということを改めてわからせてくれた映画でした。
その要素として他に外せないのが、怪獣の女王として紹介されるモスラがいます。
美しく描かれながらも、気の強さはハンパない。ラドンと格闘していて、「独りでは死なんぞ!」と言いたげに相討ちに持ち込もうとするサムライぶり――これが現代の女性の気概とマッチしていて、さらに最後はゴジラに反撃のチャンスを託すためエネルギーを分け与える(?)行為は、まさに女王としての風格と尊さに満ちていましたね。
こうした女性的要素に対して、男性キャラのマッチョぶりは結構削がれています。
それはゴジラが全部持って行ってると言っても過言ではありません。
「人間ドラマが物足りない」と言われる理由に、この男性キャラにヒーローがいなかった点もあるのかもしれません。
もし人間側に英雄(ヒーロー)を作ってしまったら、映画のテーマ「怪獣よりも人間のほうが愚か」を逸脱してしまうのでやらなかったのでしょう。
そのためなのか、この作品に出てくる登場人物はみんなドライでした。
人が死んでも、あっさりしています。
おそらく怪獣がいる世界では人間が生き残ることのほうが奇跡として、あまり他人の死について深く考えていられないのかもしれません。
そうした死生観の違いもあり、またオキシジェンデストロイヤーを簡単に撃つという政治的秩序のなさ、さらに命令系統を失ったのか途中から満足に機能しなくなる軍隊の無力さ、それらが終末観を高めていて怪獣を神々しい存在へと押し上げていました。
さて……最後に、触れておかねばならないことがあります。
芹沢博士のクライマックスシーンです。
クズ人間ばかりになった人間界に嫌気がさしたのか、死に場所を見つけたとばかりに「ゴジラを復活させるための作戦――ゴジラの棲み処へ単身赴く任務」に芹沢博士は立候補します。
そこからは至福の時間……。
長年の研究対象だったゴジラに、やっと触れることが出来る喜び……。
まるでそれは、友に再会できたかのような表情でした。
我が人生に悔いはなし……そう言わんばかりの微笑みを残して。
このゴジラとの短い交流の時間は、作品のテーマから離れた“神と人間が触れあう聖域”を描いたシーンとして異彩を放っていました。
愚かな人間の中にも、そうではない人間がいるのだというテーマへのアンチテーゼだったのでしょう。
そして核爆発が起きたあとの洋上、核爆発によって出た放射能はゴジラがすべて吸い尽くして安全となったのか、海の上で残された人間たちが見守る中、ゴジラが猛々しく復活し、咆哮し、放射線流を大空に向けて吐き上げる有名なシーン……。
このときのゴジラは、芹沢博士との交流によって、少し人間への警戒を解いているのが興味深く、またこのあとは人間に対して攻撃的にならないのも印象的でした。
平成ガメラシリーズのガメラの立ち位置を、このハリウッド版ゴジラが継承しているかのようで、前作よりも人間との共生のニュアンスが強まっていました。
ゴジラの気持ちに微妙な変化をもたらしたのも芹沢博士がキッカケとするならば、芹沢博士の最後は人類とゴジラにとってのターニングポイントとなるシーンだったと言えるでしょう……。
……というわけで総評です。
この映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は、「三大怪獣 地球最大の決戦」で怪獣復活を予言した金星人と名乗るサルノ王女と同じポジションで出てきた物語のキーとなる女性キャラ――エマ・ラッセルが、亡くなった子供の恨みをゴジラにぶつけることなく、ねじ曲がって環境保護のために怪獣に地球を清掃してもらおうと、復讐の気持ちを誤魔化し、正当化させた悪役らしくない悪役として登場するのがミソです。
わかりやすい悪役としての演出をいっさいしなかったのは、人間ドラマ側に「善悪」の要素を持たせたくなかったからでしょう。
善悪を描くと、人間側の都合が出てきてしまい、観客はゴジラより人間側に肩入れ(感情移入)してしまいます。そうなると、怪獣を人間社会から排除する話になってしまうんですね。つまり「シン・ゴジラ」と同じ路線になってしまう……。
それは、モンスターバースをめざすのなら、今後のシリーズの話がワンパターンに陥りやすいという足かせになりますので、避けたかったのでしょう。
むしろ人間側を愚かに描くことで、怪獣たちを主役クラスに格上げした――いや、それに成功したと言うべきでしょうか。
今後の怪獣映画(モンスターバース)が手本とすべき立脚点――怪獣、人間、宇宙怪獣などといった群像劇(群雄割拠)を可能とする舞台づくりの約束事が固まってきた記念すべき一作です。
これでモンスターバースが可能になりました。
そのことを私は、素直に祝福したいと思います。
以上です。
長い動画にも関わらず、ご視聴いただきましてありがとうございました。
皆さんもそれぞれの解釈で、この「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を楽しんでいただけたらと思います。
それでは、また!
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他にもラドンのスネ夫ぶりなところとか、触れたい項目があったのですが……それはまた次回にでも!
それでは、また!