新年のあいさつを済ませたふじ子は、ふかふかの角巻を信夫に見せて言った。「永野さん、いい角巻でしょう。おにいさんとおねえさんが、去年の暮れに買ってくれたのよ。生まれて初めてきょう角巻を着てみたの。」ふじ子の桃割れの前髪に、銀色のかんざしがきらっと揺れた。
「外に出て、風邪をひきませんか」
「大丈夫よ。この冬になってから、一度も風邪をひかないんですもの。今度永野さんがおいでになる時は、わたし駅までお迎えにいきますわ」
そう言ってからふじ子は恥ずかしそうに真っ赤になった。初々しい表情が愛らしかった。
「ほんとうか、ふじ子」
吉川もひやかすように言った。信夫はふじ子がこのえんじの角巻を着て改札口に立っている姿を想像した。臥たっきりだった何年間かのふじ子の姿を思うと、うそのような幸せだった。
「外に出て、風邪をひきませんか」
「大丈夫よ。この冬になってから、一度も風邪をひかないんですもの。今度永野さんがおいでになる時は、わたし駅までお迎えにいきますわ」
そう言ってからふじ子は恥ずかしそうに真っ赤になった。初々しい表情が愛らしかった。
「ほんとうか、ふじ子」
吉川もひやかすように言った。信夫はふじ子がこのえんじの角巻を着て改札口に立っている姿を想像した。臥たっきりだった何年間かのふじ子の姿を思うと、うそのような幸せだった。