三浦綾子著「道ありき」
「…この「きけわだつみのこえ」には若き学徒たちの遺書や日記やノートが載っていた。大方の若い魂は、戦争を一応は批判し、一応は否定していた。しかし彼ら学生は、その否定する戦争に赴いてしまった。徹底的に戦争を批判させるもの、そして否定させるものは、ここにはなかった。体を張ってでも戦争を否定するという、一筋通った強いものはなかったのだ。私はその時、究極においては学問さえも甚だ弱いものであることを感じて、心もとない淋しさを覚えた。」
「…この「きけわだつみのこえ」には若き学徒たちの遺書や日記やノートが載っていた。大方の若い魂は、戦争を一応は批判し、一応は否定していた。しかし彼ら学生は、その否定する戦争に赴いてしまった。徹底的に戦争を批判させるもの、そして否定させるものは、ここにはなかった。体を張ってでも戦争を否定するという、一筋通った強いものはなかったのだ。私はその時、究極においては学問さえも甚だ弱いものであることを感じて、心もとない淋しさを覚えた。」