メンバー:t田・A坂
◆登攀記録(A坂)◆
【1p目】50mリードt田
ルンゼを岩稜脇にそって登攀、灌木でピッチをきる。
【2p目】50mリードa坂
1p目同様、岩稜から生える木をおっかけて登攀、しかし岩峰とルンゼの際はスカスカ雪、身体が入っていきそうな為ルンゼ中央にでる。支点になる木をめがけてラインを繋ぐ。ナッツと乾いた木でピッチをきる。
【3p目】60mリードt田
次第にルンゼは狭まり3mくらいの小滝、氷結は甘く滝基部にスノーバーで中間支点をとり滝をのっこす。
斜度が急になり草つきの壁になる。天気が良く周りを見渡す限りの青空だが、幸い登攀ルートは日陰。
草付きで凍っていてアックスアイゼンが刺さる。草付き壁を登り切って灌木でピッチを切る。
【4p目】30mリードa坂
見上げるとルンゼをそのまま繋げるラインと雪のついたカンテ状になる。ルンゼの斜度は60度~70度になっている。
支点を考えるとカンテ状のラインには多数の木がある。カンテ状を登攀ラインとした。
いざ登ると腐れ雪。雪の下はシャクナゲと草。何度も蹴りこんでアイゼンの先を根っこにきかせながら登攀する。
危ういので支点も細かくとり泥壁にペッカーを打ち込んだのが一番信用できた。比較的大きい木でピッチをきる。安定したスペースもなくハンギングビレイとなる。
【5p目】40mリードt田
フォローのt田がそのまま終了点まできてしまうと厳しいトラバースからの登攀スタートの為、フォロー途中からライン修正、ザイルをトラバースする距離を見込んでたるませインクノットで固定した。トラバースして安定してからビレイをセットし、登攀。
ラインが厳しいので0ピンセット。見るかぎり10mはロクな木も生えていなく支点をとれそうにない。1ピンを取ってすぐに滑落、1ピンは軽く吹っ飛び支点からの0ピンで止まる。
もしこのビレイ点も吹っ飛んでいたら二人とも急なルンゼをどこまで転げ落ちていただろう。
半ば草や枝にぶら下がり登攀でアックスやスノーバーなどの雪道具は邪魔にしかならない。急な草かべの先は雪のついたルンゼ状で一安心かと思いきや、雪が柔らかくルンゼ状に乗り上げの為に身体を持ち上げるにしてもアックスを打ち込んでも支持力が得られない。
足元は夏の沢登りの柔らかい草付きみたいで蹴りこんでも安定しない。一番の核心ピッチ。
フォローで回収しながら良くこんなんでイケたなと思いながら登った。岩セクションになり狭いリッジを通過しスーパークロワールーというルンゼが入りすこし平担になる。その少し先でピッチをきる。
【6p目】30mリードa坂
リッジ状を登る。斜度は少し緩むがやはり腐れ雪。もう何度もアックスで雪を掘り草や木を探す。
掴めるくらい掘り出したら登るの繰り返し。小ピナクルでピッチを切る。
【7p目】40mリードt田
岩が完全に露出したリッジを登攀。ピークを中央ルンゼ側に巻く。終了点からは中央ルンゼの踏み跡がはっきり見えた。
【8p目】60mリードa坂
終了点からは10mほどのクライムダウンで中央ルンゼに合流、そっからはひたすら詰めあげる。登攀終了。
【所感】
今回、雪壁は初めてだった。2週間前の悪天候からの敗退から何度も悩んでの登攀だった。怖くてしょうがなかったから正直登りたくなかった気持ちがあった。けど目標の山に向けてやるべき時なのかと自問自答した2週間だった。
パートナーでありクライミングの先生でもあるt田さんのおかげで登れました。最近は口論もしながら登っていますが心底、信頼しあってるからだと勝手に思っています。
◆総括(t田)◆
磐梯山東壁と言えば中央ルンゼが登攀ルートとしては最もポピュラーですが、そのルンゼを見下ろす右側にある岩稜が東壁右岩稜と呼ばれています。岩質は脆く雪と寒さでコンクリートされた冬季のみの季節限定のルートです。
登攀記録は非常に少なく事前情報が乏しいルートであるため、自分がどう対応できるか試してみたかったのが今回の動機の一つです。もう一つは福島県人として福島県を象徴する一番の山磐梯山を、登った人がかなり少ないバリエーションルートから登れたら素敵だろうなと思ったからです。
事前の自分のイメージでは中央ルンゼに毛が生えた程度の難易度だろうとたかを括っていましたが、終始緊張を強いられ、久しぶりに味わう感覚が心地良かったです。
内容的には、雪壁、雪稜、アイス、ベルグラ、草付き、土壁といろいろな場面へ対応するのが楽しく、支点用ガチャも総動員でした。アイススクリュー、イボイノシシ、ペッカー、スノーバー、ナッツなど携行するのも面倒くさいのもこんなルートでないと経験できないことと腹を決めてしまえばそれもまた楽しと言う感じでした。
私のつたない経験からは、バリエーションルートは開拓されたルートを追いかけていく、ピンを追いかけていくような、つまりはルートから外れていないかを確認しながら登ることがほとんどでしたが、今回は自分たちでルートを見いだし、切り拓いていくという意味では大変有意義な山行でした。
ちなみに私がイメージしていたラインは相方A坂がリードした時に無残にも無視されることとなり、この右岩稜最難関と言われている宮森ルートに引き込まれていくこととなったわけですが、でなければ最難関でないルートを登っていたわけですし、宮森ルートをいつの間にか登ってしまっていた、いや登ることができてしまっていた事にまんざらでもない達成感を味わう事ができてとても良い山行となりました。
A坂は頂上で緊張から解き放たれたのか「おりゃーっ、どうだっ」と叫んでいました。私は日も傾いてきているので早く降りようと荷物を片付けていましたが「t田さん、嬉しくないんですか。もっとゆっくりしてきましょうよ」といつにない言葉をかけてきましたが、私も嬉しくないはずはなく、少しだけ休憩することとしました。小っ恥ずかしいですがA坂に敬意を払うこととしたわけです。
谷越しにIガイド撮影