槍ケ岳 3日間計 24H 46.6km
メンバー: NT目さん、Tooちゃん、I姉、A井姉さん、M崎(記)、K野さん途中合流&途中解散
9月25日 晴 17km 7.5H
5:55 上高地 出発
肌寒かったが天気も良く、今日の予定は横尾までなので気楽である。夜にはK野さんが合流する。
起伏もなくなだらかな道が延々と続いてダレてくるが、みんなと話しながら気を紛らわせる。
しかし、はしゃぎ過ぎは禁物。あまりはしゃがないようにすると決めて来た。前回の反省があるからだ。いわき出発直後から喋りっぱなしで騒いだら穂高山荘手前で疲れ果て、翌日は下山まで体力が持たず地獄を見た
7:12 明神館 到着
ザックの重さから解放され、明神池へ。気になっていたが場所が分からなかった嘉門次小屋を発見。穂高神社に安全祈願をして、Tooちゃんとお揃いの御守りを買った。ついでに御神籤を引く。
末吉。恋愛、深入りするな。縁談、むりにすれば腹立ちごとありて後に困ります、、、、、
おいおいおいおーーーい。他はまあまあ良いのに、この2つだけどうなのよコレ
8:36 徳沢 到着
ここでは以前果たすことができなかった願いを叶えることができた。念願のソフトリームに夢中で神様への恨言もすっかり消え去った。
10:07 横尾 到着
テントを張り、今夜の寝床を確保。時間もあるので屏風岩を見に行く事に。正直言うと、眠くて横尾でだらだらしていたかったがそこは団体行動。荷物を置きみんなは手ぶら、私は水とお菓子をザックに入れ、A井姉さんはサブザックに変え、Tooちゃんを先頭に黙々と進む。黙々と進み過ぎて、先まで行き過ぎたTooちゃんと私をI姉が迎えにきてくれた。もっと手前までだったらしい。いつの間にかA井姉さんのザックはNT目さんの背に移っていた。Tooちゃんに『足が痛いサビオくれ』と言われ???と思ったが絆創膏のことらしい。
13:17 横尾に戻る
猿がキャンプ地を駆け抜け、近くの木の上でゆさゆさしていた。
屏風岩までサクッと歩くはずが結構な時間が経っていた。Tooちゃん差し入れのビールを頂いてまったり過ごす。だらだらしていたら睡魔が。I姉はすでにすやすやしている。みんな少し休憩することに
いつの間にか辺りは暗くなり外ではNT目さんとTooちゃんの話し声が聞こえた。そして予定より大分早くK野さん到着。上高地から走って来ただけあって早かった。しかもホットワインを私たちに振る舞うためにワインボトルを2本背負ってきてくれた有難い。
二度目の宴会開始。K野さんは大朝日岳の記録を読んでくれたようで、A井姉さんに介抱してもらうべく全身黒で決め『蜂に刺される準備万端です』と語る。A井姉さんモテモテですな
いろんな話で盛り上がり、K野さんとI姉で山行した際に夫婦と間違われたらしいが、こちらも夫婦に見えるNT目&A井姉さんペアがいる
上高地を出る際には、薬を飲み忘れたとNT目さんがつぶやくとA井姉がサッと水を差し出す。車中泊の際は、寒いからこれを使いなとA井姉さんに寝袋をかけていた。(I姉と私もいた)世に聞くオシドリ夫婦とは、きっとこんな2人の事を言うのだろう。実際には夫婦ではないが。
そんな話をしながら遅くまで宴会を楽しみ、Tooちゃんは座ったまま眠りに落ちてI姉&A井姉に支えられ移動後就寝、一同解散。
9月26日 雨 8.5km 6H
4:50 横尾 出発
トイレから戻る途中、大きい毛玉の何かが足元をすり抜けキャンプ地にある木の上に移動した。猿だった
雨かなぁ、嫌だね、そんな話をしているとパラパラっと降ってきた。くそぅ、やはり雨か。食べかけのアルファー米をしまい、急いで雨具を着込む。これまで奇跡と言っていいほど雨とは縁がなかったが、大朝日岳山行から雨運がついてしまった。だが安心してください。今回は万全ですよ。
低ランクながら雨具を新調、ザックカバーも購入した。もちろんザック内部の防水対策も施した。靴もガイドテニーではなく最近ご無沙汰だったモンチュラにした。大きいポリ袋も余分に持った。さあ来るなら来い、受けて立とう
暗い山道を6人で進む。1人だったら絶対に歩けない、雨でじっとりした暗い道を先導してくれるTooちゃんが頼もしい。
6:34 槍沢ロッジ 到着
途中少しだけ雨は止んだが、槍沢ロッジに着く頃には本降りになっていた。せっかくの望遠鏡も、雨で槍は見えず。しばし休憩。Tooちゃんが手袋を忘れたというので貸す。後にこの手袋が他でも役に立つことになるとは。
雨の中みんなで登る。いつの間にか視界は開け、高度が増してきた。少しずつTooちゃんのペースが落ちる。気のせいか?いや気のせいではないようだ。どんどん速度は遅くなり、グリーンベルト手前でついにTooちゃんが止まった。その場に座り込むTooちゃん 私はこんな様子は初めて見るので心配になる。ザックを下ろし、手持ちのチョコとアミノバイタル(通称◎力剤)を渡す。ザックを下ろしたついでにカバーに溜まった水を排出していると、座ったTooちゃんに笑われる。下から見たらお漏らしをしているように見えたそうだ。酷い!と抗議しつつ、笑う元気を見て少しほっとした。
雨は止まない、むしろ粒が大きくなっているようだ。NT目さんとTooちゃんが、先に進むように言う。
K野さんは女性陣をしっかりサポートして行きますと言ってくれた。
心配だがTooちゃんの回復を祈りながら先に進むことにした。あまり先頭の経験はないが、すぐ後ろにいるI姉にフォローしてもらいながら先を急ぐ
晴れていれば綺麗に見えるであろう紅葉した草木や連なる山々の姿を雨具の隙間から覗く。雨の景色も悪くない。振り返ると離れたところにA井姉さんが見え、その少し後ろにK野さんがいた。Tooちゃん達の姿は見えない。
10:06 坊主岩小屋 到着
Tooちゃん達と別れた際に、この地点で晴れていれば槍を目指すことになっていたが、雨は止まないどころか気温も下がってきた。先客の叔父様方に上に見えるのがヒュッテ大槍だと言われるが、I姉は首を傾げる。とりあえず、小屋を目指しましょうと右に行く。少し登り下を見る、K野さんが見え、こちらを見上げている。さっきまで間にいたはずのA井姉さんが見当たらない。どこかで迷った?いやK野さんが後ろにいるんだからそんなはずはない。きっと後発隊と合流したんだろう。
すでに息切れしていたが、ここから酷くなる。数メートル歩く度に息が苦しくて立ち止まる。体はどこも痛くないし元気なのに胸が苦しい。あぁ、キタキタ、穂高山荘手前と全く同じ状態だ。高山病的なアレですかね。I姉は平気で写真を撮っていた。防水カメラいいな、と違うことを考えてみたが息切れは治らない。I姉はゆっくりでいいと言ってくれたが、雨が冷たい、寒い。付き合わせてごめんなさい。
吐く息は白く、雨は冷たい。後ろからは誰も来ない。I姉と2人、寒さに耐えながら登る ヒュッテ大槍まで100mの手書き看板に救われる。あともう少し。そして奇跡の出会い。
ライチョウさんがいらっしゃいました。子供は連れておらず独り身です。なんか親近感が湧き凍える手で携帯を取り出した。ボヤけて上手く撮影できなかったが、足とお腹は白い毛が生えていてた。これからいい出会いがあるといいね、貴方も私も!笑
10:41 ヒュッテ大槍 到着
I姉に励まされながらやっとの思いでヒュッテ大槍に着いた時は嬉しかった。坊主岩小屋からそんなに時間は経っていないのにすごく長く感じた。息ができないとこんなに辛いんだな。
雨具を脱ぎ、乾燥室の有り難さを思い知る。そして靴、さすがはGore-Tex。湿るくらいでジャブジャブにはなっていなかった。
寒さで体が震える。濡れた衣服を着替え、干し、やっと一息ついた頃にK野さん到着。部屋に案内し、3人でお茶タイム。絶品チーズケーキの美味しさに痺れ、ココアの温かさに生き返るのを感じた
しばらくして、外から賑やかな声が聞こえた。あの3人だ。
小屋に入ってくるなり爆笑している還暦チーム。彼らがくる頃には雨は止み、みんなの雨具はそれほど濡れていなかった。
爆笑の原因は、寒さに耐えられず着替えるため素っ裸になったNT目さん、その間にA井姉さんもゴソゴソしていたら自分のズボンのジッパーを閉めることが出来ないくらい手がかじかんだらしく、NT目さんに怒られながら履かせてもらい、その様子を見て笑うTooちゃんも歩くたびにズボンがお尻まで下がり、半ケツ状態。ツボにハマったA井姉さんが笑い壊れたらしい(知られたら記録に書かれちゃうと言いつつも、その状況を丁寧に教えられたら書くしかない。むしろ書いてくれという振りと解釈したので書く)
相変わらずこの還暦チームはハンパじゃないと実感する。Tooちゃんだけは小屋まで100メートル地点で眩暈がしたらしいが、みんな無事に着いて安心した。
乾燥室に干す作業の手伝いをしようと奥の扉を開けて驚いた
半裸のNT目さんとA井さんがそこに並んでいた。思わず扉を閉めた方がいいと思ってしまった。正確にはそれぞれ作業をしていたのだが、一緒のはずのTooちゃが居ない。乾燥室を覗くとあまりこちらを見ない様にしているTooちゃんの姿が。A井姉さんのタンクトップ姿を見たら悪いと思い、乾燥室に隠れていたらしい。1番年上なのに純情なところがある可愛いTooちゃん
A井姉さんが乾燥室使って、男2人が出入口使えば良いのにと思ったが深く考えるまい。
ヒュッテ大槍は快適で食事も美味しかった。なにより黒生ビールが最高。
ふと、Tooちゃんが飾られた写真に目を止める。紅葉にそびえる槍が天狗池に逆さに映る写真を見て『綺麗だ』と
これでも明日のコースが決まった。TooちゃんにはI姉さんが同行してくれることになり天狗池へ、NT目さんが槍未体験のA井姉さんと私の引率、K野さんは槍から別ルート。食後の楽しい夜を楽しく過ごした。
9月27日 晴れ 21.1km 10.5H
5:46 ヒュッテ大槍 出発
朝食を済ませ、名残惜しいが山小屋を出る。風は冷たいが天気はいい。ありがとう山の神様、槍がはっきり見えます。日の出を待つ、ゆっくりと辺りが赤く染まっていく。綺麗だと思った。
殺生ヒュッテでTooちゃんI姉の天狗池組と、NT目さん、A井姉さん、K野さん、M崎の槍組に分かれた。
早い人はもう槍に登っていた。荷物を下ろし、登る用意をしているとK野さんが手袋を求めてきた。どうやらザックの底に入ってしまったらしい。昨日Tooちゃんが乾かして返してくれた手袋を渡す。この手袋、K野さんの山行終わりまで役に立ってもらうことになる。
さぁ、槍様へGO‼︎ K野さんを先頭に登り始める。梯子や岩は、昨日の雨が凍ってツルツルしていた。先行者が何組が居たので、待ちながら上を目指す
6:48 槍ヶ岳山頂
やっと頂上に着く 意外と人は少なかった。頂上から見る景色は晴れ晴れとしていて気持ちよかった。
K野さんとNT目さんは山影を見ながら明日以降のルートを相談し合っている。私とA井姉さんは社での撮影待ちをしていた。熟年男女の撮影会をのほほんと眺め、やっと私たちの番だと一歩前へ踏み出した。
ぐるんと視界から山々が消え青空だけに変わり、尻に衝撃が来た と同時に立ち上がる。やべ、槍の穂先でコケた。
一歩踏み出した足が凍った岩で滑って尻餅をついたM崎。見ていたA井姉さんはさぞびっくりしたことだろう。無様な初槍ヶ岳山頂の思い出が残ってしまった。
その後は無事に記念撮影、A井姉さんによるマーキングが行われた(見ているこっちは落っこちないかとか、周りの人から丸見えじゃないのとかハラハラした)。
下山はK野さんに梯子の折り方をレクチャーしてもらう。無事に降り、ここでK野さんとはお別れである。
ここから一気に上高地を目指す。まずはテントを回収しに横尾まで降りてTooちゃん達と合流だ。
8:33 坊主岩小屋
降りるのはあっという間で、あんなに近かった槍から離れていく。昨日はこの道を雨に打たれて凍えながらI姉と登ったんだなぁ。今日は晴れていて、歩くと暑いくらいだった。
登ってくる人達の表情は皆苦しそうだ。私達は寒かったけれど、かえって良かったのかもしれない。
抜きつ抜かれつ下山していると、空身の山ガールが降りてきた。あれ?そう思って声をかけると、昨夜お世話になったヒュッテ大槍にいたスタッフの子だった。お世話になったお礼を改めて伝え、いく先を尋ねると天狗池だという。Tooちゃんたちに会ったらよろしくと言伝てる。
天狗池の分岐あたりまで来ると、最後尾のNT目さんが「笛の音が聞こえる」と言った。
え?私とA井姉さんは互いの顔を見合わせる 耳に聞こえたのは前を歩いていた人のクマ鈴だったはずだが。。。
「いや、Tooちゃんが笛を吹いている。Tooちゃーん!」
大きな声で叫び、笛を吹き始めた。辺りの人が振り返る。少し恥ずかしい。
「あ!Tooちゃんだ!Tooちゃーーーーーーん!」
確かに天狗池の道を歩く人影が見える。でも1人だ。かなり離れた所にもう1人見えるけど、あれは絶対にTooちゃんだと言い張るNT目さん。
そうかなぁ?I姉はTooちゃんをしっかりサポートしているだろうから、あんなに離れて歩かないはずだよね、とA井姉さんと意見が合致する。だが、鳴り止まない笛の音とTooちゃんを呼ぶ声。だんだんA井姉さんがぷりぷりしだす。
「私達が一緒なのに、ここに居ないTooちゃんの事ばかり考えて!」
まぁ、合流したらTooちゃんに確認してみましょうとA井姉さんをなだめる。その後も笛の音はなり続けた。
ババ平まで来たが、長い道のりだ。ここから横尾までがだらだら続く。途中、大きなザックを背負う男性とすごく小さなナップザックを背負う女性のカップルを見かけた。
12:05 横尾
足がだれて集中力も切れてきた頃、やっと横尾へ到着した。テント場を見ると、I姉がタオルを絞っていた。
Tooちゃんの姿もあるので、早速答え合わせをしようではないか。
「笛なんか吹いていない。」
はい、あまりにもTooちゃんが恋しかったNT目さんの幻聴でした。
先に着いたI姉はデポした荷物を運び出し、水びだしのテント内を拭いて乾かしてくれていたのだった。で、2人で見に行った天狗池はと言うと、とても素晴らしい景色に出会い、キレイな逆さ槍を見ることが出来たそうだ。その画像を見せてもらった私は、次は私も見に行こうと決めた。
テントを畳んでいると、I姉のシャツからのぞくセクシーな横腹を虫が刺した。手持ちのポイズンリムーバーとアルコール消毒はしたけれどその後の経過はどうだったろうか。
少し休憩をとり、上高地まで戻る。3日間の中でこの行程が1番大変かもしれない。5人で歩き始めた。最初は会話をする元気もあったが、歩くほどにザックが肩に重くのしかかる。食料や水が減った分、少しは軽くなったと思ったが全然そんな感じはしなかった。
徳沢まで来ると、NT目さんが無言のまま歩く速度を上げる。すぐに彼の後をA井姉さんが追う。2人の姿はそのまま一緒に見えなくなった
そう言えば、岳沢を下りた時と同じだ。あの時も最後の頃、NT目さんとA井姉さんは2人で速度を上げ仲良く去って行った。私は石のような重さの体を引きずるようにTooちゃんと2人で歩いた。疲れ果て、一歩も動けない状態を初めて体感した。走って最初に降りたK野さんに、1番若いのにどうしたの的な事を言われ、少しムッとしたのを覚えている。
だが今回は疲労感はあるものの、あの時ほどの疲れは感じない。私はTooちゃんと最後まで一緒に歩こうと思った。I姉に先に行っても大丈夫と伝えると、先に行かず一緒に歩いてくれた。3人で色んな話をしながら歩く。少しでも歩く辛さを忘れられるように
明神館でババ平からの道に居た男女を再び見かけた。男性を見ると女性が背負っていたナップザックを前に抱えている。女性はペットボトルだけを手に持っていた。二桁近い荷物を背負う私達女子。世の中には色んな人がいるものだと意見を交わす。
16:03 上高地到着
タクシーを拾い、運転手さんの顔を見た私はA井姉さんの方を向き直る 何かを感じとったA井姉さんも思いあたったようだ。3年前の岳沢帰りに利用した時と同じ運転手さんだ。あまり感じの良くない人だったから良く覚えていた。なんの因果か、次回こそは別の人に出逢いたいものである
こうして、今回も沢山の思い出と経験をすることができた。それぞれ自宅に着いたのは深夜だった
自宅に帰り、3日振りのお風呂で今朝まで槍の頂上に居たなんて信じられないなぁと振り返っている時に思い出した。そういえば、A坂さんの海外遠征祈願を槍の頂上で行うはずだった!頂上ですっ転んで祈りもすっ飛んでしまった。ま、忘れてしまったものは仕方がない。あの場で転んで祈るより、無事に帰ってきたこの場で祈った方が効果があるかもしれない。というわけで、安全祈願は自宅の風呂場となった。
結果、この記録を書いている12月現在、無事に帰ってきたのだから何よりである