祝砲(いはいづつ)うつおとすなり横浜の港をさしてふねや入るらむ
いつの日か帰りきねべきいくさ人ねぎらはむとてやりし使いは
うらやすく世はをさまりて国民をねぎらはむ日をまたぬ日ぞなき
つはものの聞きながらやすすむらむ虎のすてふ山のかけぢを
むかしよりためしまれなる戦いにおほくの人をうしなひにけり
えぞのおく南の島のはてまでもおひしげらせよわがをしえ草
言の葉のまことのみちをわけみれば昔の人にあふここちせり
照るにつけくもるにつけたたかいのにはにたつ身をおもいこそやれ
身をすてし人をぞ思ふまのあたり軍のにはのこときくにも
万代もふみのうへにぞのこせ国につくし臣の子の名は
いかにぞとおもはぬ日なしいくさ人とひし使のかへりくるまで
ををしくも凍りきつるあた船をうち砕きけりわがいくさびと
さまざまにもの思ひこしふたとせあまたの年を越しここちする
ひささかのあめにのぼれるここちして五十鈴の宮にまゐるけふかな
明治天皇御製 明治三十八年