引っ越し顛末記

このたび、古風な築５０年のアパートから引っ越すことになりました。
そのうち、私が３０年暮らしたので、自分の家みたいでした。
住人がだんだんといなくなり、長い間に渡り自分だけでした。
アパートなのに持ち家みたいで、お得感を味わっていたのです。
それが、近所の半キチによるゴミの不法投棄で、解体と決まったのです。
大家が見切りをつけての、立ち退きです。
それさえなければ、まだまだ住むことができたのでした。

でも、引っ越して正解でした。
フロ場がカビでポロックの絵のようになり、肺炎になりました。
老朽化で地震のときは揺れるし、ダニにやられバルサンを焚くは、
アリの大量発生にあうは、ゴキブリとのタイマンもあり、
ハトが屋根裏に闖入するは、なんたって土壁の埃の多さったら。
農家育ちの私でも、本当にまいっていました。
立ち退きでなければ、リフォーム代を相当取られる。

懐かしくて、後ろ髪を引かれる思いで準備を進めました。
幸いに３００メートル先に、いいアパートを見つけたのです。
そこは築３２年ですが、作りのいい、住宅みたいな所です。
旅好きな私からすると、旅館か民宿に来た様です。

引っ越してから、ひと月経ちますが、毎朝、旅行気分を味わっています。
解体ゆえの立ち退きなので、立ち退き料が出る。
自分から越さなくて良かった。

あの半キチよ、悪質な不法投棄の数々、少しだけ許す。
瓢箪から駒が出るをもじると、半キチから歎異抄を貰うである。

何はともあれ、引っ越すはめになって良かった良かったの巻きでした。