事件が起きた時の現場の映像がテレビで流れていたが、安倍元総理の演説が始まった時、背後に国道を挟んで立っている犯人の姿も画面に映っていた。元総理との間には車が通っていて人はいなかったが、歩道には警備のSPや私服の警察官も大勢いた筈である。公開の場で演説している政治家を襲撃する方法はいろいろ考えられるとは思うが、安倍氏の背後は「国道を挟んでいる」ということから、警備体制も手薄だったんじゃないだろうか。むしろ遠くからライフルで狙うプロに対しての警備を重点的に固めていたのかもしれない。
とにかく私の感じた疑問をいくつか書いてみたい。
疑問その(1)
映像を見ると、この時既に「犯人は歩道のガードを越えて、道路内に立っている」のが見える。何故、警備担当者はこの段階で「危険人物」(普通でない行動をした人間)と認識し、「即座に確保」しなかったのか?、大いに疑問である。不審者という判断まではまだしないにしても、車が頻繁に通行している国道であるから「危ないですよ」と言って、歩道に戻すべきである。映像を見る限り警備担当者はぐるりを見回してはいるが、この「道路に立っている不審な男」には全く注意を払ってはいない。これが警備体制の1番の疑問だ。
疑問その(2)
映像で見る限り男は「両手に何も持っていない」から、「途中で凶器を出し」て、手に持って突進したと思われる。まず、凶器をどこに隠し持っていたのか。多分カバンの中だろうと思われるが、そうであれば取り出す時に警備担当は「最大限の緊急アラート」を発していなければならない。例えば取り出すのに「5秒」くらいかかったとすれば、元総理を「警備担当や盾で囲うように守り」、同時に犯人を確保するために飛びかかることぐらいは出来たと思う。犯人が邪魔されず接近して二発も発砲できたのは、驚きとしか言いようがない。海外のニュースでも取り上げていたが、何故犯人が無人の道路を進んで襲撃出来たのか、疑問だと言っていた。これが第二の疑問。
疑問その(3)
男は多分、車が通り過ぎるのを待って道路中央まで突進したはずだから(夕方のニュースでは静かに歩いて進んだという)、車の陰で安倍氏側からは見えなかった可能性はある。この点で、あらかじめ国道を通行止めにしなかったのは、警備上の落ち度である。脇を走り抜けながら車の中から銃撃することも十分可能だし、何よりも「自転車のおじさん」が映像に映っていることからも、背後からの襲撃を想定していなかったのは見て取れる。それにしても襲撃時に「歩道側にいるはずの警備担当」が即座に反応し、一気に取り押さえるのが順当だろう。しかし、取り押さえた瞬間の映像からは「歩道側から警備が飛びついた」形跡は無い。誰もいなかったんだろうか。一人、腕章を巻いている人の姿が映像に映っていたが、その人は犯人んと「反対側の地面」に気を取られていたように見える。この時に何があったのかも検証すべきだろう。これが第三の疑問だ。
疑問その(4)
事件を捉えた映像を見る限り、一発目の銃声から二発目が発射されるまで「2秒ほど間隔」があいている。しかし一発目が発射された時に、安倍氏は全然「動いていない」ように見えるのである。この時咄嗟に「頭を抱えてしゃがむ」なりなんなりしていれば、少なくとも致命傷のような傷は受けなかったのではないだろうか。安倍氏が咄嗟に防御姿勢を取れなかったとしても、周りのSP とか警備担当者が無理矢理頭を押さえつけて姿勢を低くし、金属製の盾なりカバンなどで「銃弾から元総理を守る」行動を取るべきである。映像を見ている限りでは、このような行動を「反射的に取ることが出来たSP 」はいなかったようだ。この辺が、基本的に銃社会のアメリカと「出刃包丁」の日本との違いだろうか。残念である。これが4番目の疑問。
疑問その(5)
なお、犯人のいる歩道側からの映像、特に「道路を横切って突進し銃を構える犯行時の映像あるいは証言がないのは返す返すも残念である。他に怪我人がいないことを見ると、犯人と安倍氏の間には「遮るものが無かった」ということ。これが警備上一番のミスだと私は思う。普通、VIP を警護する場合防弾チョッキを着たSP が何人か取り巻いて狙撃されないようにするのが常識。犯人から直接ターゲットまでの空間が「ガラ空き」というのは、どうしても考えられないとしか言いようがない。これが最後の疑問だ。
以上の疑問点を、例えば日テレやテレ朝やTBS のワイドショーのニュースキャスターが「誰も発していなかった」のは不思議だ。病院に搬送されて治療している安倍元総理については、無事回復することを祈るばかりで何もすることはないから、テレビも報道のしようがない。できることと言えば、これらの疑問点がどうなっているか、ということの筈である。なのに全然疑問を発することもなく「犯人を許してはならない」の一点張りである。いずれ、これらの疑問に対しては警備担当者側からの回答が聞けるはずだが、それにしてもピントがずれているとしか思えない。残念である。
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なお、色々な人がコメントをしているが、小池都知事とか山本一太群馬知事などが涙ぐんでコメントしているのには驚いた。この非常事態に知事ともあろうものが「めそめそ涙を流している場合」ではないのでは。やはり知事には「正確な状況判断と指示」が求められると思うので、この二人は「適任者」とは言い難い。特に岸田首相は「しゃべりが途切れ途切れ」で要領を全く得ないのはなぜだろうか。途中空を見上げて涙をこらえているような仕草を見せていたが、現首相というには「どうにも頼りない」ではないか。こういう人が有事の指揮官として中国・ロシアと対峙するかと思うと、背筋がちょっと寒く感じる。今度の選挙は少し考えたほうがいいかも。
ところで政治家のコメントを聞くと、一様に「民主主義への挑戦」みたいな言い方をしているが、これは如何なものか。安倍元総理の状態はまだ危機的状況が続いている。選挙がどうとか政治がどうとかは、まだ早いのだ。しかも襲撃の理由については「犯人の頭の中」のことなので、どういう意図で犯行に及んだのかは、推測するしかない。なのに「民主主義の冒涜とか挑戦云々」と決めつけてしまって、「絶対許されることではない」とみんなで一致団結して(テロ組織から)民主主義を守ろう!、などと呼びかけるのは「やや扇動政治家=デマゴーグ」的な雰囲気がしないでもない。小泉議員などもコメントしていたが、どうも言い方が気に入らないのである。本人たちは悪気はないのだろうが、事件の内容がはっきりする前に「民衆を一つの解釈にリードする」やり方は、よくある「集団リンチ」の感情操作に近いものがあるように私は感じた。民主主義を標榜する政治家であればなおさら、このようなアジテーションは厳に慎むべきであろう。まずは安倍氏の回復を待つのみである。
当然、これからの選挙にどう影響するかなどの話は、安倍氏が回復して事件が一段落してからにするのが国民の節度ある態度ではないだろうか。今、安倍氏は生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。病院に担ぎ込まれて緊急医療を施している真っ最中に「選挙のこと」を尋ねるニュースキャスターの無神経さには呆れるばかりである。
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今、安倍晋三氏の訃報が届けられた。残念である。心よりご冥福をお祈りしたい。
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