刀伊というのは朝鮮高麗の東にある女真族の事で、11世紀に北部九州で略奪破壊を繰り返した海賊集団だ。その刀伊の襲撃を海辺で迎え撃ち、見事な戦い方で殲滅・撃退した日本側の総大将が「藤原隆家」である。
隆家は中関白家の御曹司という「れっきとした貴族社会のヒエラルキーの中枢」にいた人物。それが関白道隆の急死から運命が狂い始めて「花山院襲撃事件」でついに失脚し、兄の伊周共々政治の舞台を追われて彼は九州太宰府の師に赴任させられる。まだ若い隆家もこのまま歴史の闇に消え去るかと思われたその頃、都では藤原道長の娘が三人も皇后になるという絶頂期を迎えていた。平安文化の爛熟期である。
だが私の興味は道長の栄華や「刀伊の入冦」にあるのでは無い。そして外国からの侵略に対し在地勢力が一致団結して力を結集し、勇猛果敢に応戦して見事な戦略を演出した隆家の能力を称賛するのでも無い。それは番組の中でも取り上げられて議論になっていたが、実際に海賊と戦ってそれを撃退した武士達への恩賞を巡って貴族の間で「必要ない」と言った意見が出た、という事実である。
結果は何とか恩賞は与えられたが、この「国民の生活感覚」と余りにも掛け離れた「中央政府の浮世離れした実態」が、現代の自民党政権と「良く似ている」んじゃないか?、という驚きだった。岸田首相はこないだの所信表明演説であちこちから散々叩かれたそうだが、もはや今の政治家は言うならば「平安末期の公家政治」の程度にしか、時代対応能力が無いと言えるかも知れない。
言う事成す事、岸田首相は抽象的な掛け声ばかりで中身が全然無く、具体的な方法や予算または期日が不明確な「やってる雰囲気だけ」の話に終始している姿は、国民からすればただただ「不信感」の塊である。
このような、厳しい現実から遊離して何等有効な対策を打ち出せない政府と、そのまた上に乗っかって胡座をかき富を築き上げた富裕層との安穏な時代は、実は底辺で動き始めている「強力な草の根実力主義」によって「転覆・交代」させられる流れであり、何れは大々的に「歴史的な権力移動」が起きる兆候であろう、と番組では指摘していた。
現実に日々の生活に困窮している家族は年々増えていて、政府は場当たり的な給付金や一時減税でお茶を濁している状況だ。日本の国力は下がる一方だし、国民の生活程度はOECDの中でも下位に沈んでいるという。ところが現状は自民党だけで無く、政治家全般が国を良くすることを忘れ「権力の分け前の奪い合い」に汲々として隠そうともしない醜悪な状態である。正に平安時代の「公家そのもの」ではないか!
番組を見終わった時、私はふと政治と言うものに初めて「虚しさ」を覚えた。これじゃ、投票に行かない人の気持ちも分かるってものである。本気で日本を大改造しようと言う人、今に出てくるんじゃないだろうか。
次の時代はもしかして「工場労働者や移民」の中から首相が生まれる、そんな時代がやって来そうである。勿論私はもう死んでるとおもうけど・・・
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