明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

ゴルフ通信(3)女子ツアー観戦記:5月の陣 ①

2021-05-03 18:48:20 | スポーツ・ゴルフ

今回開催される浜野GCは、プロにとっては距離は短くてフェアウェイが広い。言うなればアマチュアが喜びそうなコースだ。だが多方向から風がビュービュー強く吹くので、思ったようには落ち所をコントロール出来ない。最低限自分で球を操る技術のないアマチュアに取っては、「そもそもゴルフにならない」難コースであるという(そうなんだ、ガチョーン!)。どちらかと言えば「飛ばし屋有利」とのことだが、いずれにしろグリーン勝負になりそうである。

1、勝負はキャディの違いで決った?
上田桃子のキャディは、小祝や永井も教えているプロコーチの辻村明志である。最近は例えコーチといえどもロープの中に入れないガチガチの試合が多くなったため、コーチがキャディとしてバッグを担ぐのが流行っているらしい。辻村コーチは小祝さくらのバッグを担いだり松森彩夏のバッグを担いだり、ここの所毎回試合に出ているから試合慣れしているとも言える。そんな辻村コーチが満を持して上田のバッグを担いだのだから、鬼に金棒という所だろう。今回はプレーオフの厳しい場面で上田と大里のショット力の違いが明暗を分けた格好だが、同郷熊本の先輩後輩でもある上田を意識しすぎたのか、ティーイングエリアでの大里は何故か無用な「緊張」をしているように見えた。

ゴルフは目標とする地点にボールを運ぶという意識「以外の事」を一瞬でも脳裏に思い浮かべたら、特にプレーオフのような一発勝負のシチュエーションでは致命傷になる。程度の違いこそあれ、我々アマチュアでも「ここは飛ばしてセカンドでピタリと付ければ」云々と、チラッとでも甘い事を考えたら途端に動きがおかしくなり、球は思ってもいない方向へ飛んでいくことになる。私もこないだ取手桜ヶ丘の OUT 8番パー5(途中を川が横切っている名物ホール)で、ティーショットを思いっきり飛ばそうと力んだ結果、30mもない所に立っている左の樹に当てて真下に落ちてしまった。空中のハザードでも何でもない、ただポツンと立っているだけの賑やかしのようなものに過ぎない樹だが、「全く思ってもいないのに当ててしまう」ミスを犯してしまった。「何で〜?」である。

ゴルフはメンタルの戦いとはいうが、正に上田と大里の違いはこのメンタルの違いだったと言える。そこでキャディが重要な役割を果たす、というのが私の見立てだ。私が取手桜ヶ丘で「ハーフ41」を出した時は、邪念や雑念の全くない「ボールだけを見る事に集中した状態」でショットすることが出来た。そういう風に選手の心理を持って行ければ、キャディとしての仕事は完璧である。後は選手の技量にかかっているわけであるが、例え結果が思うように行かなくても、選手はやり切った満足感を持てるのではないだろうか。最後に上田の優勝が決まった時、グリーン脇で大里が拍手していたが、果たして満足行く結果だったのかどうかは私には分からなかった。まあ今回は上田優勝で良かったかな?、と思う。

2、次々と脱落する選手たち
原英莉花の4パットは見ているほうもガックリしたが、古江彩佳の77も「どうしちゃったの?」レベルのスコアの落し様である。まあ優勝の上田が73で大里も73、最終日アンダーパーを出したのは比嘉真美子と林菜乃子と石川明日香の3人だけだから、オネェ風に言えば「どんだけぇ〜!」というコースコンディションな訳だ。グリーンがアンジュレーションがきつくて、入る方向が「一方向」しかないというのが難しい理由だが、そこにパーオンさせるのがまた一筋縄では行かないのが浜野GCなのだ。上田は無理に乗せようとはせずに、もし少し曲がっても比較的芝の余り深くないグリーン脇のラフに落ちるような方向に、持ち前の正確なアイアンショットで攻めていた。プレーオフでもピンの左手前に落として2パットという戦略(マネジメント)のパー狙いだったと思う。プレーオフで最初っからパー狙いと言うのもちょっと考えると弱気なようだが、その結果大里の心の中に「一瞬の気の緩み」のようなものを引き摺り出したとすれば、さすがベテランの恐ろしい心理戦である。

それにしても稲見萌寧や山下美夢有やアマチュアの岩井明愛など、「来るのか?、来るのか?」と期待して見ている中を次々と脱落して行くのは、如何に熾烈な戦いだったと言えるのではないだろうか。そう言う意味では今回のパナソニックレディースは、期待する勇者が次々と倒れて屍の山を築いていく「サバイバル・コンバット・ゲーム」を戦うような、爽快な達成感を視聴者に与えた名勝負だと言えよう。いわばゴルフ版の「三国志」だ!

3、もはや20歳前半が旬?
今回優勝したのは34歳の大ベテラン、ツアー15勝海外1勝の上田桃子だが、上位でフィニッシュした選手達を見ても、30代の選手は全美貞・藤田さいき・若林舞衣子・西山ゆかり・穴井詩と数えるほどしかいない。今や女子ツアーは20歳代前半までの若い選手が優勝争いに絡む「秋元康率いる坂道グループ」さながらの若年層の戦う時代に突入した。勿論これはゴルフに限った話ではなく、テニスでは大分前から当然の如く言われている事であり、近年は卓球や将棋の世界でも「若年層の活躍」が当たり前になってきた。理由は色々と考えられているが、スポーツという体を使う種目の中でも「体幹と瞬発力、それに平衡感覚」を争う競技であるゴルフは、若者が「ベテランの蓄積された経験から来るアドバンテージ」を楽々クリアするようになった。

それに殆どの若い選手が「3、4歳から」ゴルフを始めており、練習は勿論のこと「多くの試合を通じて」経験もずば抜けて豊富である。特に吉田優利・西村優菜・安田佑香などは日本代表として海外の経験も山ほどあり、大学を卒業して社会人になってから初めてクラブを握りプロゴルファーを目指したという「レジェンド岡本綾子」のような、従来のプロゴルファーが苦労を積み重ねてやっと試合に出るイメージでは考えられない程「上手い」のである。肉体的には「18歳から23歳位」でピークがくると言う、女性ならでは現象だとも言えるがそれに加えて、社会的な訓練がさほど必要ではないスポーツの世界であれば当然のことながら「ツアー全体の若年化」が進むのは避けられない。まあ現代はスポーツに限らず、「全ての戦い」において若い世代が勝ってしまう時代に突入した、と言えよう。思い起こせばその昔「鎌倉・室町から戦国江戸期の日本人」は人生が50年と考えられていた。そう考えれば、ピークが20歳でやって来ても「何の不思議」も無い。

何故若い世代ばかりが勝つのか?、と私の友人「S・Y」氏が嘆くこと頻りだったが、むしろ嘆くべきは「能力が下がっているのに寿命は延びている現状」の方だろう。どうやって「実力で勝てない若手」に伍して人生を生き抜くか?、またしても新しい課題が立ち塞がってきたようである。

どうも暗い話になってしまったが、ここらで「ニッコリするニュース」を一つ。

4、やっと登場、セキ・ユウティン!
今まで予選は通るも棄権とか体調不良とかハラハラして眺めていたが、ここに来てやっと3位タイ4アンダーの快挙で実力を発揮してくれたユウティン!。余りテレビに映らなくてイライラが募ったが、YouTube でも映してくれなかったので「ホント歯軋りする」思いだった。まあ試合はそれなりに緊張感のあるデッドヒートだったので仕方ないとは思うが、柏原明日架や山下美夢有や穴井詩・稲見萌寧・原英莉花・アマチュア岩井明愛と並んでの、3位タイと言うのは評価できる。ドライビングディスタンスも LPGA ホームページによれば「254ヤード」飛ばしたホールもあり、平均でも226ヤードあるから飛距離の問題は「ほぼ無い」と言えそうだ(穴井詩288、鶴岡果恋286、川岸史果284、渡邉彩香281と、飛ばし屋になるには大分飛距離の差があるけど、まあ普通かな)。

ユウティンの魅力はピンをデッドに狙って行く「果敢な攻め」である。顔はあどけない幼顔だが、体付きは去年トレーニングで鍛え上げた「鋼の筋肉」を持っていて、そこから繰り出す「渾身の一打」は期待を超えていて、もはや「清々しいとまで言えるほどの美しい映像美」を堪能させてくれる。今回は惜しくも3位だったが次回のサロンパス・ワールドレディスチャンピオンカップは是非とも優勝して、「かわいい笑顔」で優勝スピーチして貰いたいと願っている(ウッホホーイ!)。ウェアも世界標準仕様のデザインでカッコいいから、是非テレビでも映して欲しいんだよね。とにかく次回の注目はセキ・ユウティンで決まりダァ!

なお私一推しの「堀琴音」が今回もいい位置でフィニッシュしたのも嬉しい誤算である。初日は4アンダーと絶好のポジションだっただけに2日目74・最終日73と伸ばせなかったのは悔しいが、意外にもスイングを「ドローからフェード」に変更したのが確実に効果を出してきているのがわかる。我々アマチュアはドローでもフェードでも「打ち分ける」なんて技術はないから「出たとこ勝負」のやっつけ感は否めないが、彼女達ぐらいの技術を持っていれば「飛ぶドロー」よりも「マネジメントしやすいフェード」の方が、断然試合では有利なのではないだろうか。実力はあるので新たな「武器」フェードを手に入れた今、まず来季のシードを取りに連続上位フィニッシュを決めて欲しいと思う。・・・優勝?。それはまだ早いんじゃないかな、出来たら嬉しいけど。

さらに嬉しいことに、ステップアップ・ツアーの常連が上位に進出した。「植竹希望と小野祐夢」だ。植竹はパワフルなスイングで、ステップアップでは剛腕とも言える活躍をしていたが、ここへ来てレギュラーでも上位に名を連ねて存在感を示し始めているようである。初日66とビッグスコアで飛び出したが、2日目・最終日と敢えなく崩れてしまった。特に2日目後半にダブルボギーを2つ叩いたのが痛かったと思う。最終日は調子を取り戻せないまま悔しい76で20位タイとなってしまった。まあ初回ということで、今後の活躍に期待しよう。取り敢えず来季シードが目標である。一方小野祐夢は2日間アンダーで頑張ったが、さしものショットメイカーも屈指の難コースに敢えなく沈没、29位タイに終わった。こちらもレギュラーで上位を安定して戦うにはもう少し時間がかかりそうである。

今までアマチュア時代から鳴り物入りでツアーに入ってきたスーパーエリートが綺羅星のように居並ぶ世界に、雑草のようにコツコツ練習を積み重ねて「這い上がり、よじ登って」来た叩き上げの選手が、果たしてどこまで通用するか。こういうドラマがたっぷり見られる女子ツアーは、さらにどんどん面白くなって来る「超優良コンテンツ」だと思う、マジで。だから LPGA のお偉方よ、コロナで無観客試合開催を余儀なくされている今、スポンサーを集めて「LPGA 主体のネット放送」をやってくれないか、とお願いしたい。アメリカのバスケット・リーグでは「全試合を完全網羅する NBA 公認ネット放送」を楽天経由でやって成果を上げている。それと同じ考えで、キチンとした企画と運営・マネジメントを LPGA が責任持って行い、視聴者の利便を図りつつ「コアなファン」にも楽しんで貰えるような放送を立ち上げる「チャンス」ではないか。ここが頑張りどころだと思う、期待してますよ小林会長!


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