野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

ナデシコのなかま

2023-03-31 | 兵庫の自然

ナデシコのなかま

なでしこといえばなでしこジャパンが思い浮かびます。ナデシコの花は秋に目にするはなですが、春にさく小さな花の紹介です。

カーネーションでおなじみのナデシコ科の植物はどれも葉が対生に付きます。春に見かけるのアは、小さいので目に付きにくいものが多いです。ナデシコ科の花弁は5枚です。花びらに深い切れ込みがあって、見ため10枚に見えます。

ハコベ(コハコベ)

春早くに小さな花をつけます。めしべの先が3つに分かれるのが特徴です。茎に一列毛があります。

ウシハコベ

コハコベが咲き終わる頃、やや大きめの花をつけます。めしべの先が5つに分かれます。

ツメクサ

葉の形が細く、つめの先のようなのでツメクサといいます。アスファルトの間などにたくましく生えますが、小さいので見落とすことも多い花です。

オランダミミナグサ

ハコベに似ていますが、茎や葉全体に毛が多くあります。

ノミノフスマ

花びらの切れ込みが深く、10枚の花びらのように見えます。

(「生きている猪名川」より)


里山の貴重な両生類アカハライモリとセトウチサンショウウオ

2023-03-30 | 兵庫の自然

両生類の仲間

多くのものが「水の中と陸の上J両方の環境で生活をすることから、この 仲間の動物を両生類といいます。

 

里山保全活動の場所の山の縁では田や畑が広がっています。

この時期、アカハライモリとカスミサンショウウオが卵をうみにやってきます。

里山さでの作業中に見つけました。山からの清水が山すそに流れ込み、小さな水路を作っている場所です。

まず、水の中にアカハライモリを見つけました。その見つけたすこし上流に大きな卵かいが4から5こ見つけました。

また、水の流れがほとんどない場所にはセトウチサンショウウオの卵塊がありました。

山の中にある小さな水たまりで見つけたことはあったのですが、里山の縁で見つけたのは今年がはじめてです。

アカハライモリ(有尾目イモリ科)

アカハライモリは繁殖期(卵を産む時期)になると水の中にいます。ふだんは陸上で生活をし、卵や子どもは 水中で生活をします。両方の環境がないと生きていけません。

 

下右はイモリの腹部の方の写真です。上がメス、下がオスです。イモリのオスは、肛門の部分が丸くふくらんだようになっている、しっぽが幅広く、短いなどで区別することができます。

国RD:準絶滅危惧;兵庫:要注目種

セトウチサンショウウオ(有尾目サンショウウオ科)

これまでカスミサンショウウオと呼ばれていたものが2019年に9種類にわけられ、加古川流域に生息するものはセトウチサンショウウオとされました。 本州(和歌山県•大阪府•兵雎県•岡山県)、四国(香川県•徳島県)に分布 します。

水山周辺の森林や竹林に生息し、普段は落葉•倒木•石などの下にひそみ、ミミズ、節足動物、軟体動物などを食べています。2月〜5月に、生息地付近の浅い池や水田の周りの溝などに産卵します。卵からかえった幼生は水中で生活し、初夏に成体になって陸に上がります。

国RD :絶滅危惧Ⅱ類 ;兵庫県RD : Bランク

(生きている加古川より引用)

 

つぎに、兵庫県の分布図を示しておきす。里山保全の活動場所の三田市はどちらもいることになっていますが、この時期同じ場所で見られるのは、素晴らしいことです。


すみっこぐらし 春のすき間の植物

2023-03-29 | 兵庫の自然

すみっこぐらし

 

春のすき間に生えている植物

 

種子が風にのって運ばれたり、雨に流されたりして、たどりついた安住の地。

植物が成長するとき、細胞が膨らみます。その細胞の膨らむ圧力は、最大で16kg/cm2あるそうで、アスファルトは15kg/cm2の力がかかると、ひずみはじめ、最後には引きちぎられてしまうそうです。

アスファルトから植物が生えているわけはそんなところもあります。

 

春、道路の下の土にあった種子が芽を出して、アスファルトやコンクリートの隙間の「すみっこぐらし」する植物を紹介します。

 


畑作業のめやす タムシバの花

2023-03-28 | 兵庫の自然

タムシバ(モクレン科モクレン属)

落葉小高木、花期:3月末から4月半ば頃

冬枯れの木々の間から白い花が点々と彩っています。遠くからもよく目立ちます。

昔の農家の人たちはタムシバが咲いたから種を蒔こう、畑を耕す時期が来た、と農事暦の目安とされていました。

 

コブシが有名なので、この白い花をみてコブシと呼ぶ人がいますが、但馬地方の一部をのぞいて、兵庫県下で自生しているのはタムシバです。(最近はコブシを公園や街路樹として植えられています。)

コブシとタムシバ見分け方は、花の付け根に若葉があるかどうかで判断できます。若葉がある方がコブシ、若葉がない方がタムシバです。

 

人の生活に近い樹木だったのでいろいろな呼び名があります。

「カムシバ」、「噛む柴」という意味で、小枝を噛むとキシリトールみたいな甘味や、爽やかな香りがするため。東日本のタムシバは背が3~4mと高くならず柴状なのでこの呼び名がある。

ほかに、「サトウシバ」「ニオイコブシ」など

タムシバの雄しべは棒状になっており、赤褐色です。一方で雌しべは緑色で、らせん状になってついています。


兵庫県で自生するサクラの種類

2023-03-26 | 兵庫の自然

兵庫県のサクラ

ようやく兵庫県でもサクラの開花が始まりました。近畿の各県から比べて遅くなりましたが、

サクラの名所は全国各地にありますが、ほとんどかソメイヨシノを代表としたサクラの栽培品種です。

兵庫県下に自生するサクラ(バラ目バラ科サクラ亜科)は5極類で、開花の順に並べるとキンキマメザクラ、エドヒガン、ヤマザクラ、カスミザクラ、オオヤマザクラです。

これらの中で葉が開く前に開花するのはキンキマメザクラとエドヒガンです。サクラの仲間の葉を並べて特徴を調べてみました。

兵庫県では、瀬戸内海と日本海をサクラでむすぶ全長170キロ メートルの「ふるさと桜づつみ回廊事業」

を実施し、阪神、丹波、但馬の各地域ごとに、桜の回廊、桜の名所、桜の巨木などを紹介した楽しい「さくらマップ」を発行しています。(兵庫の林業第222号 兵庫の樹木(59)より)

オオヤマザクラ

北海道、中部以北の本州及び四国(石鎚山周辺のみ)に分布する

花径は3~5センチの大輪で、花の色は淡い紅色である。 ヤマザクラに比べて花が大きく、花の色も濃い。

 

 

エドヒガン

本州・四国・九州および中国中部、台湾、朝鮮半島に分布します。

他種のサクラに先駆け、春の彼岸のころに咲くためこの名がつけられました。

花の基部にある萼筒(がくとう)がひょうたん型であることと、幹の樹皮に細かい縦の裂け目が多くはいることがあげられます。

キンキマメザクラ

マメザクラの変種で、主に北陸、長野、愛知、近畿、中国地方に分布

萼筒がマメザクラよりも細長い。花期は4~月。

カスミザクラ

北海道、本州、四国、九州(対馬)、朝鮮、中国に分布します

花は4~5月。同じ場所のヤマザクラより、2週間ほど遅れる。

花は白色で、花柄は有毛、萼筒はほとんど無毛で赤味が入る。萼片は全縁。

ヤマザクラ

日本の固有種。宮城県及び新潟県より西の本州、四国、九州に分布する。

開花は3~4月。ソメイヨシノとサトザクラの間ぐらいに咲く。開花とともに若葉を展開させる

萼筒は長めの鐘型だが、エドヒガンなどのように膨らまない。花柱、萼、子房は無毛。

ソメイヨシノ

北海道から九州の各地に植栽される。開花は3~4月。日本全国のソメイヨシノはすべて同一のソメイヨシノから接木して作られたもの。オオシマザクラとエドヒガンの交雑種


ヌートリアが兵庫県でひろがったわけ

2023-03-25 | 兵庫の自然

ヌートリア

ネズミ目ヌートリア科ヌートリア属の動物で、南アメリカが原産です。

この写真は、伊丹市の昆陽池で撮ったものです。

20年ほど前から市民にはなじみの動物です。

「哺乳類げっ歯目カブロミス科。南アメリカ原産の動物で、本来の名はコイプ。ヌートリアはその毛皮をさします。

体長50cm尾長40cmほどで、体形はドブネズミに似るが、はるかに大きい。

水辺にすみ,岸に直径 20cm,深さ数メートルの巣穴を掘って生活する。植物食で、イネ、イモ類 のほか畑作物を荒らす。加工した毛皮は水に強く、1900年ごろは国際的に高価に取引された。

日本への渡来は明治 40年(1907)、最初の繁殖は昭和13年 (1938)に淡路で成功している。

その後,加工の困難さや毛色から毛皮獣としての価値が低下したが、日本では軍用毛皮用として飼育が推奨された。しかし、次第に野生化し、農業害獣になっている。

兵庫県下でも飼育が行われていたが,野生化しているものは、京都府福知山市仏谷で、第2次大戦後飼育されていたものの子孫といわれる。この系統は昭和35年ごろから由良川本流に現れ,竹田川をさかのぼって氷上郡市島町、春日町に被害を与えた。また 土師川からは多紀郡西紀町、多紀町などにも出現している。竹田川からは分水嶺をこえて,50年篠山川へ移り、55 年ごろから加吉川本流流域にも発見されている。

県下での捕獲数は年間50 匹ほどであったが、最近は数匹程度。 日本全体では年間2,000匹程度で、そ の90%以上が岡山県である。」

(1983年 兵庫県大百科事典下 神戸新聞出版センター より)

 

ヌートリアは農業などに被害を与える有害生物になっていった。ちなみに兵庫県の2018 年度の農作物被害金額はアライグマが最も高く約5千万円、次いでヌートリアの約1千万円となっている。

 

日本では、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」により、特定外来生物に指定し、ヌートリアを野外へ放つことや、飼育・販売・輸入が原則禁止されています。

 

環境省では、1973 年(昭和 48 年)から 40 年以上にわたって実施している自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)の一環として公表している冊子から、ヌートリアの分布を見てみましょう。

「2002 年(平成 14 年)以前のヌートリアの分布と並べてみると(※注1、注2)、東海地方以西に分布するという基本的なパターンには変化はありませんが、2002 年の分布域よりも周辺の広い範囲で確認され、特に近畿・中国地方にその傾向が目立っています。淡路島、小豆島のような瀬戸内海の島嶼でも確認されていますが、四国・九州地方への拡大は確認されていません。」とある

 

1980年代に一番多く取れた岡山県では、岡山理科大の小林 秀司(こばやし・しゅうじ)准教授の研究室から「獣扱いは理不尽!? 知るほどにカワイイ南米原産の大型ネズミ、ヌートリア」で「どうにかうまく共生していきたいですねぇ…。」とヌートリアの研究から述べている。

http://hotozero.com/knowledge/amazing-pencil/knowledgeanimals012/より

 


ツクシとスギナ

2023-03-23 | 兵庫の自然

ツクシが大きくなると、スギナになる?と考えている人が結構いるみたいです。ツクシは知っていてもスギナはご存じない人も多いので、ツクシとスギナの関係を知っているのはすごい人です。

ツクシとスギナは地下でつながっており、同じ植物です。

地下茎の節から地上に出ている茎に「ツクシ」と「スギナ」があります。

     

スギナを「栄養茎」、ツクシを「胞子茎」と呼びます。

栄養茎が出る前にツクシ「胞子茎」が出てくるので、注目されます。スギナはシダ類なので、花は咲きません。種子ではなく胞子でふえる植物です。ツクシは胞子を作っている場所になります。

スギナはシダ植物トクサのなかまといいましたが、トクサのなかまの化石がのこっています。石炭紀といういまから3億年前、森林時代のときに栄えた植物の一つです。化石になったトクサのなかまロボク(カラミテス:学名)は直径30cm、高さ30mもあったそうです。

 

食べる

春の山菜としてのツクシは、実はビタミンEやビタミンCを多く含むことで知られています。

ツクシを食べる習慣があるのは関東以南〜九州の地域だそうで、卵とじや天ぷら、佃煮などにして食べます。山菜の多い東北や北海道ではツクシは論外だったのかもしれませんね。

はびこるスギナ

畑や庭のスギナは困りもの

畑の土壌の状態を見る植物の一つにスギナがあります。

酸性土壌を好むので、スギナの生える畑は酸性土壌と判断できます。ほうれん草はアルカリのドジョウを好むので、スギナのあるところではアルカリにするために石灰などをまいて耕す必要があります。

しかし、長い地下茎が横に伸び、根の節々から芽を出して繁殖するので、耕して根が切れてもそこからまた生えていくので厄介者です。

地面の下では、深さ5~10cm、根茎の広がりは100cm以上にもなるそうです。根のまま引き出すことは無理なので、耕すときに切ってしまうとますます数が増えることになります。地下茎がある限り根絶は難しいのがスギナです。

 

 

 

スギナは主軸の節ごとに関節のある緑色の棒状の葉を輪生させますが、上の節ほどその葉が短いので全体としてスギの樹形に似ているので、「スギナ(杉菜)」と呼ばれます。


笹部新太郎 と サクラ

2023-03-18 | 兵庫の自然

笹部新太郎 1887~1978)とサクラ

 

笹部新太郎については「生きている武庫川」で武田尾から廃線跡の観察下では入り口近くにある桜の園(亦楽山荘)の説明、「生きている猪名川」では、川西市の多田神社の西に隣接する西方寺にお墓があることなどで、桜の話をするときには必ず紹介する人物である。

武田尾から桜の園方面を望む。

観察かいの様子

生きている猪名川では

「笹部新太郎氏は、東京帝国大学(現 東京大学)法学部に在籍するころより、独学でサクラの研究に取り組みました。父親の「月給取りにはなるな、この世に生を受けた甲斐のある事をのこして死ねば本懐ではないか」ということばを受け、卒業後私財をなげうち、兵庫県宝塚市武田尾の旧国鉄福知山線の武庫川渓谷に、ヤマザクラやエドヒガンなど在来の野生種のサクラを集めた桜の園(亦楽山荘)を作り、サクラの研究や育苗を行ないました。また、夙川のサクラ並木の造成なども指導したり、岐阜県荘川村にあった樹齢450年のエドヒガンの移植を指導されました。水上 勉の小説「桜守」は、笹部新太郎氏をモデルとして書かれています。

現在、笹部 新太朗氏の墓は兵庫県川西市の多田神社の西に隣接する西方寺にあります。」

と紹介する。

夙川の桜並木

 

詳しいことは

公益財団法人白鹿記念酒造博物館のホームページ(https://sake-museum.jp/sakura/

荘川桜のホームぺージ(https://www.jpower.co.jp/sakura/)で柴橋明子さんの取材されている。

またRikuryoWebサイト(https://www.rikuryo.or.jp/)で笹部桜考を連載している小林一郎氏が詳しい。

 

 


もうすぐ花見 猪名川流域で見られるサクラ

2023-03-17 | 兵庫の自然

猪名川流域で見られるサクラ

今年は例年より桜の開花がはやくなるというニュースが聞かれます。

猪名川流域でもつぼみがふくらんできたようです。猪名川のサクラについて紹介します。

 

私たちの身近な公園や学校の校庭、街路樹にはソメイヨシノが植えられ、4月初旬に満開となり、私たちの目を楽しませてくれます。しかし、ソメイヨシノは江戸時代末期に現在の東京都豊島区染井町の植木職人が作り出したものです。江戸時代末期ですと今から100年少ししか経っていません。ソメイヨシノは、花つきはいいのですが、雑種であるため種からあたらしい世代を作ることができません。

ソメイヨシノの親として考えられているのがエドヒガン(アズマヒガン)とオオシマザクラです。エドヒガンは各地に樹齢400年から600年を超えるものがあり、各地の名所のひとつになっているものもあります。たとえば岐阜県荘川村の荘川桜は、御母衣ダムの底に沈むはずの村から、大阪の桜翁と呼ばれた笹部 新太郎氏と京都の植木職人の佐野 藤衛門氏の手によって、園芸史上初めて樹齢400年を超す古木の移植を成功させたことで有名な桜です。このエドヒガンは猪名川周辺の里山にたくさんあり、ソメイヨシノの開花に先立って、ピンクのやや濃い花を咲かせます。

また、もう片方のオオシマザクラは、伊豆大島に多く自生する桜ですが、葉が大きく無毛で桜餅を包む葉としてもよく知られています。葉は、塩漬けにするとクマリンという物質の匂いがします。花は白色で大きな花が咲きます。

 

このほかに猪名川流域ではヤマザクラ、カスミザクラ、ウワミズザクラ、イヌザクラなど3月下旬から5月上旬にかけていろいろなサクラが私たちの目を楽しませてくれます。(生きている猪名川改訂版より)


兵庫県のタンポポの秘密

2023-03-14 | 兵庫の自然

兵庫県の在来タンポポ

田んぼの畦や山のへりではタンポポが咲き始めている。早いのがセイヨウタンポポ、寒い冬のなかでもみられた。

そのなかに、白い色のタンポポも、

今回はタンポポ調査から兵庫のタンポポのことについて

 

北のヤマザトタンポポ、南のカンサイタンポポ

タンポポ調査が2015年西日本で行われました。兵庫県では人と自然の博物館が兵庫県のタンポポ調査を集約しました。大阪で1975年にはじまったタンポポ調査は全国各地で広がりました。しかし、90年代に入って在来種と外来種のタンポポの間に雑種が形成されていることがわかりタンポポ調査の意義について疑問が出されたこともあり,あまり行われなくなりました。

タンポポ調査を西日本では継続的に行われ、2014~2015年に行われた調査報告があます。

 

タンポポの花のつくりからカンサイタンポポとセイヨウタンポポを見分ける。

 

タンポポを見分けるポイントになるのは、花の色とこの頭花の下の部分、セイヨウタンポポでは緑色の反り返った部分です。これを「総苞;そうほう」といいます。 

カンサイタンポポではこの部分は反り返らず、頭花に着いています

 

兵庫県にはもう一種類、ヤマザトタンポポがあります。

但馬•丹後•丹波の植物を調べた荒木英一氏が豊岡市出石町東 床尾山で採集した標本に基づいて、京都大学の北村四郎先生が1933 (昭和 8)年に新種として発表したものです。ヤマザトタンポポのタイプ標本(名前をつけた時の証拠(しょうこ)となる標本のこと)は、高知県の牧野(まきの)植物園に保管されており、そのラベルには採集地が兵庫県出石郡東床尾(とこのお)山と書かれています。

ヤマザトタンポポは花弁は黄色で総苞外片が上を向いていて、カンサイタンポポとまち がえられることが多いのですが、頭花が大きいこと、花の色がややうすいこと、そして花粉の形が違うので見分けられます。ヤマザトタンポポは北陸から山陰にかけての範囲に広く分布しており、岡山県北部・広島県東部にもある程度の分布があります。

ひとはく新聞より

この調査をまとめた鈴木 武(自然環境再生研究部)氏は次のような結論を発表しています。

「兵庫県のタンポポ調査データから、驚くべきことがわかってきました。 兵庫県の南部ではごく普通のカンサイタンポポは県北部の但馬にはほとんど なく、逆にヤマザトタンボポは但馬にはわリと分布していることがわかリました(図1)。ヤマザトタンポポは兵庫県RDBでは最も高いAランクでした。

が、この結果を受けて2009年の改訂でCランクとなりました。

図1の①の太線は但馬国の境界です。これを境に、カンサイタンポポは 南に、ヤマザトタンポポは北にほぼ分かれています。このあたりは中国山地ですので、平地に生えるタンポポは山を越えられないのかもしれません。

「タンポポ調査•西日本2010」により、ヤマザトタンポポは日本海側の 山陰地方に広く分布しておリ、山陰を象徴する植物といってよさそうで す。たかがタンポポですがなかなか奥が深いものです。

鈴木武(自然•環境再生研究部)」

参考文献 兵庫県および京都府北西部の在来タンポポの分布(鈴木 武, 菅村 定昌, 武田 義明)