仕事と生活の授業(続き)

前に作ったホームページは、あまり読まれないようなのでブログで再挑戦です。

32.『常陸』の地名の由来

2023年09月11日 | 歴史
5月初旬、天気が良いので日の出を見に茨城県の日立駅に行きました。


日が立つというのはこういうことなんだな、と実感しました。
とてもきれいなピンク色でしたが、写真では目で見たような色は写りません。



行きの車の中で、奈良時代より前、律令制の時から国名の漢字が
「日立」ではなく、「常陸」なのは何故だろうと考えながら運転していました。
すると、目の前にその答えが現れました。


常陸という漢字を分析すると、左右平らに広がるように積み上げられた土地という意味になります。

日立に着く少し前に平らな山並みが巨大な壁のように近づいてきます。
初め遠くの曇り空かと思ったくらいに地平線を覆っているように見えました。
(写真はグーグルマップの昼間のストリートビューです。)

関東平野を南から走っていくと、平地の関東平野から高地の阿武隈高地の堺目が日立になります。
阿武隈高地は高い山がないので、山々の稜線が重なって平らな壁が左右に広がっているように見えます。
特に夜明け前で薄暗かったので、壁のように見えました。

帰ってから「常」の文字の語源を調べました。
煙のようなものが左右に広がるという意味の「尚」と
布や着物表す「巾」とで布が長く横に広がる様子を表すようです〔異説もありますが〕。
和服を作る反物を横に広げるイメージで、
「常」という字は、布を測る長さの単位にもなっているそうです。

常陸の「陸」の字は、聖徳太子の十七条憲法にでてくる「睦」という字に関連して調べたことがあります。
この「陸」の字はヘンもツクリも同じ意味で、土を高く積み上げていく形の象形です。

「睦む」とは目を何度も積み上げる、つまり何度も見る(会う)ということで、
何度も見て(会って)仲良くなることを意味しています。(良い言葉ですね。)

「陸」という字は、土を何層にも積み上げた土地のことです。
「常陸」は土地を左右に広く平らに積み上げたように見える場所という意味です。
私が常磐道から夜明け前に見た阿武隈高地の南端が壁のように見えた光景に「ぴったり」の名前です。

もう少し調べると、和語、やまとことばの「ひた」がどうやらさっきの「常」と同じ意味になるようです。
煮物で水を「ひたひた」に入れるというのは、具材と水がちょうど平らになるくらいという意味です。
「ひた」の原義は全体に遍(あまね)く行き渡るように平らに広げるというような意味ではないでしょうか。

「ぴったり」という言葉も「ひた」の派生だと思われます。
くっつくという意味のように思えますが、特に全体が遍(あまね)くくっつく状態を指しています。
長さがぴったりという時も
AとBが全体に遍(あまね)く対応する=同じ長さ=長さが“ひと”しい、という意味です。
大きさが合う、遍く平等に行き渡るという感じでしょうか。

平らに広がるという意味では、「額_ひたい」がその意味になります。
顔の中で平らに広がっている部分ですね。

(空間ではなく時間に意味を拡張して、)
時間の前後を問わず遍(あまね)く広がるという意味から
「ずっと」「つねに」という意味になって、
ずっと続けることの「ひたむき」「ひたぶる」という意味に繋がったのでしょう。

後で調べたのですが、尊敬する大野晋先生が参加された岩波の古語辞典では、
「ひた」は「等(ひと)しい」「一つ(ひとつ)」と同根だと書かれていました。

常陸を日立と書くのは、水戸藩を日本の源流、日のもと、日の出る場所としたい
水戸黄門様(光圀様)の思いからでた後付けかもしれませんね。

地理的に考えれば千葉の銚子、福島のいわき、宮城の石巻、岩手の宮古の方が
日立にふさわしいはずですよね。もちろん北海道ならなおさらです。


「常陸」は、関東平野側から見た阿武隈高地の、
壁のように平らにせり上がっている様子を、
「常」という漢字と「ひた」という和語で表しています。

ところで、
積み上がった土地という意味の漢字「陸」を「ち」と読んでいますが、
「ち」は和語なのでしょうか?
「地」という漢字の音読みのような気がします。
「土地_とち」や「土_つち」に「ち」が付いていますが漢語と和語の境目が分からなくなります。
「土地」や「陸」を表す和語はなんでしょう?

まだまだ分からないことだらけです。
言葉の問題は奥深いですね。


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