日本のJAXA新型ロケット情報が、マルウェア感染で流出
2012.12.3
日本の最新ロケット「イプシロン」に関する情報が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のコンピューターから盗まれていたことが判明した。三菱重工も、宇宙事業関連情報が流出していた可能性があることを認めている。
11月30日付け「New York Times」紙の記事によると、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターのコンピューターが、外部のコンピューターに向けてデータを送信していることが判明したという。
問題のコンピューターでは、11月21日にマルウェアが見つかり除去されている。ほかにマルウェアに感染したコンピューターがないか調査をしたが、見つからなかったという。
マルウェアに感染したコンピューターから盗まれた情報のなかには、開発中の固体燃料ロケット「イプシロン」に関わるものが含まれていた、と記事は伝えている。イプシロンは、表向きには衛星や宇宙探査機の打ち上げ用とされているが、このサイズの固体燃料ロケットならば、大陸間弾道ミサイルでの軍事利用も可能だ。イプシロンはさらにパソコン程度の大きさの機器で制御が可能で、「モバイル管制」と呼ばれている。
この固体燃料は、米国も喉から手が出るほど欲しい最新技術であり、これを大陸間弾道弾に利用すれば、列車やトラックなどの移動輸送に搭載も可能となり、秘密基地の必要もなくなる。
各国の大企業(日本語版記事)や政府機関、人権活動団体など、世界中のさまざまなターゲットへのサイバー攻撃が頻発しており、その多くで中国政府とのつながりが示唆されている。
一方で、非常に高度なマルウェアを米国とイスラエルの政府が共同開発し、イランを標的としたスパイ活動等に使っていると報道されている。
◆日本のロケット開発
戦後間もない昭和28年, 旧中島飛行機から社名を変えた富士精密工業は 東京大学生産技術研究所(現, 文部科学省宇宙科学研究所)糸川英夫教授の指導を受け, ロケットの開発に着手した。
2年後の昭和30年にはペンシルロケットの初フライトに成功し, これが日本のロケット第1号となった。また 全長1メートル余の ベビーロケットの 発射実験に成功し, その後のロケット開発の基礎を作った。
富士精密工業は,やがてプリンス自動車工業,と名を変え、日産自動車へと変遷して行く。
大手自動車メーカー・日産自動車の一事業部門としてかつて存在していた「航空宇宙事業部」は、元々は吸収合併した「プリンス自動車工業」が手掛けていた固体燃料ロケット生産を引き継いだ事業。更に遡れば旧軍の戦闘機を多数開発・生産した「中島飛行機」の直系事業である。
日産自動車経営陣としては平和産業のイメージを大切にしたいがために、敢えて兵器生産を事業として明示してこなかった。
しかし日産自動車本体の事業は、その後急速に悪化。
売れ残った新車が本来自動車生産・販売とは無関係の航空宇宙事業部敷地内に大量にストックされ、ユーザーに引き取られる宛もないまま列を成し放置されている光景がしばらく続いた。
そしてついには、フランス資本のルノー傘下に入り、抜本的な再建を目指すことになる。
ところがルノーが日産自動車に資本参加するに際し、この「航空宇宙事業部」が障害となってしまう。
同事業部には、ミサイルやH-Ⅱロケットのブースター開発・生産を通じ、防衛機密や大陸間弾道弾にも転用可能なロケット技術が蓄積されている。日産自動車が外国資本傘下となれば、これらが国外に流出し安全保障を脅かし兼ねない。
このような事態を怖れた国の意向を請け、航空宇宙事業部は日産自動車から切り離され、石川島播磨重工業に譲渡。2000年に「アイ・エイチ・アイエアロスペース」(譲渡当時はアルファベットの商号が認められなかったのでカタカナ表記)が発足した。
◇株式会社IHIエアロスペース
http://www.ihi.co.jp/ia/company/about.html
会社名 株式会社IHIエアロスペース
英文名称 IHI AEROSPACE Co.,Ltd.
代表取締役社長 木内 重基
本社所在地 〒135-0061 東京都江東区豊洲三丁目1番1号 豊洲IHIビル
TEL 03-6204-8000
FAX 03-6204-8810
資本金 50億円
事業内容 宇宙機器、防衛機器等の設計、製造及び販売など
従業員数 約1000名
沿革
1924年(大正13):中島飛行機(株)の原動機工場 (東京・荻窪)
1945年(昭和20):富士産業(株)
1950年(昭和25):富士精密工業(株)
1961年(昭和36):プリンス自動車工業(株)
1966年(昭和41):日産自動車(株)
2000年(平成12):(株)アイ・エイチ・アイ・エアロスペース
2008年(平成20):(株)IHIエアロスペース(社名変更)
◇株式会社IHIエアロスペース・エンジニアリング
http://www.ihi-ise.co.jp/index.html
代表取締役社長 丸泉 春樹
会社案内
ごあいさつ
当社は1988年、ペンシルロケットゆかりの地、荻窪に宇宙開発をエンジニアリングで支えることを目的とし発足いたしました。発足以来IHIエアロスペース社に協力し、H-Ⅰロケット、M-Ⅴロケット、H-Ⅱロケットと日本の宇宙開発に貢献してまいりました。2000年以降は、IHIグループの一員として、航空関連製品、防衛関連製品等の開発研究にも力を注いでおります。
当社のビジョンは、社員一人ひとりが技術を磨き、これら製品、技術を通じ社会に貢献することです。そして、培った経験を元に、新たな技術の創造にも努めてまいります。まだまだ若い会社ですが、清新な力を集結し頑張ってまいります。
会社概要
商 号 株式会社IHIエアロスペース・エンジニアリング (IHIグループ)
設立年月日 昭和63年6月20日
資 本 金 2000万円
株 主 株式会社IHIエアロスペース(100%)
所 在 地 本社
〒370-2307 群馬県富岡市藤木900番地
TEL 0274-62-7739
FAX 0274-62-7733
役 員 代表取締役社長 丸泉 春樹
取 締 役 村松 祥二
取 締 役 横尾 文雄
取締役(非常勤) 高田 博行
監査役(非常勤) 水野 実
従業員数 250名(2011年7月1日現在)
・営業概要 宇宙機器、ロケット及び航空機に係る製品の設計製図及び研究、開発実験に関連する業務の受託
・ロケット等の地上燃焼試験、打上実験等に係る作業の受託
・ロケット関連機器、触媒成型品及び触媒応用関連装置並びに付属機器等の開発、製造、売買、賃貸借、修理、整備、保守及び管理
・労働者派遣事業
・前各号に付帯するその他の関連業務
【主な納入先】
株式会社IHI
株式会社IHIエアロスペース
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
沿 革
1988年 東京都杉並区荻窪に、前身の㈱日産エアロスペースエンジニアリングとして創業
(日産自動車100%出資)
日産自動車㈱宇宙航空事業部へ技術者派遣開始(宇宙技術部、特機技術部他)
M-Vロケットの開発プロジェクト他に参画
1989年 日産自動車㈱宇宙航空事業部からロケット製造用治工具・設備の設計・製造を
受注開始
1990年 日産自動車㈱宇宙航空事業部から各種ロケットの地上燃焼試験用テストスタンド
(推力2t級~)の設計、製造受託、試験支援業務を受注
1992年 日産自動車㈱宇宙航空事業部における人工衛星(SFU)用多層断熱材(MLI)
の設計を支援
1993年 日産自動車㈱宇宙航空事業部から防衛庁向けロケットの地上燃焼試験用大型
テストスタンド(推力20t級)の設計、製造受託、試験支援業務を受注
1995年 連発式救命信号筒の共同開発を始める
1996年 小型ガスタービン発電機応用乾燥トイレシステムの共同開発を始める
1997年 環境商品(乾燥トイレシステム試作車)を神戸で開催の震災展に出展
1998年 外部の航空宇宙研究開発組織(㈱ロケットシステム他)へ技術者の派遣を始める
宇宙開発事業団種子島宇宙センターの固体ロケット地上燃焼試験用大型
テストスタンド(推力250t級)の改修設計、製造受託、試験支援業務を行う
群馬県富岡市の現在地に移転(5月)
1999年 宇宙開発事業団へ技術者の派遣を始める
2000年 科学技術庁航空宇宙技術研究所(当時)へ技術者の派遣を始める
7月1日付けをもって日産自動車㈱グループを離れ、
石川島播磨重工業㈱グループの一員となる。
㈱アイ・エイチ・アイ・エアロスペース・エンジニアリングとして営業を継続
2001年 環境商品の自己処理型乾燥トイレシステムが
「うつくしま未来博(JAPAN EXPO IN FUKUSHIMA 2001 7/7~9/30)」
に採用される
2003年 自己処理型乾燥トイレシステムが富士山六合目の公衆トイレとして採用される
(設置者:山梨県 期間:7/1~9/7)
2005年 環境商品として酸化脱臭触媒の製造、販売を開始
2008年 創立20周年
2011年 小惑星探査機「はやぶさ」ミッションの成功により、はやぶさプロジェクトサポートチームの一員として、宇宙開発担当大臣、文部科学大臣から感謝状を授与される
◇三菱重工 航空宇宙事業本部
2012年12月19日ボーイング787型機向け複合材主翼100号機目を出荷
更なる生産レートアップへの対応を推進
2012年12月4日本部長メッセージを更新しました
2012年11月15日放射性物質を可視化する「放射性物質見える化カメラ」を開発
世界最先端の超広角コンプトンカメラをベースに
2012年9月27日H-IIBロケットの打上げ輸送サービス事業を開始
大型人工衛星も対応可能に、世界市場を積極開拓へ
2012年9月26日「Reaching for the skies 夢へ、空へ、明日へ」2012年国際航空宇宙展
H-IIBロケットや次世代リージョナルジェット機MRJ、宇宙太陽発電システムなどを展示
製品情報
http://www.mhi.co.jp/aero/products/index.html
三菱重工は、わが国の基幹ロケットであるH-IIAの打ち上げ輸送サービスを担当し、宇宙ステーションの 日本実験棟「きぼう」の開発・生産に携わるなど、わが国の宇宙開発に貢献しています。
◆三菱重工業、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は今年1月27日13時40分(日本標準時)、種子島宇宙センターから情報収集衛星レーダ4号機と実証衛星を搭載したH-IIAロケット22号機(H-IIA・F22)を打ち上げた。
打ち上げたロケットは正常に飛行し、両衛星の分離を確認、衛星は予定の軌道に投入された。これで情報収集衛星は計画していた4基が揃い、地球上の特定地点について1日1回以上観測できる体制が整うことになる。
H-IIAロケットは、日本の主力大型ロケットで、日本初の純国産ロケットH-IIロケットで培ってきた技術をもとに、人工衛星の打ち上げ・国際宇宙ステーションへの補給などの輸送需要に、低コストで対応するために開発された。13号機から、H-IIAロケットの打ち上げ事業は三菱重工業に移管され、JAXAは打ち上げ安全監理業務(地上安全確保業務、飛行安全確保業務、カウントダウン時の総合指揮業務)を実施している。
H-IIAの打ち上げ成功率は95.5%となった。
◇H-IIB ロケットの技術と将来展望
http://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/501/501074.pdf
イプシロンロケットの想像図。宇宙航空研究開発機構提供
◆新ロケット『イプシロン』
日本には、今、2種類のロケットがある。
大型ロケット「H2A」と、さらにその倍の打ち上げ能力を持つ「H2B」である。どちらも、国と宇宙航空研究開発機構が国費を使って開発した。H2Aは2007年に三菱重工業に移管され、同社が商用打ち上げ事業を実施している。H2Bも昨年、三菱重工への移管が決まった。
一方「イプシロン」は、H2AやH2Bと比べると、かなり小さいロケットだ。高度約300キロメートルへの打ち上げ能力は、H2Aの8分の1以下。国と宇宙機構で開発中であるが、いずれ製造を担当しているIHIエアロスペースに移管される予定である。政府と宇宙機構は、同社も三菱重工同様、商用打ち上げ事業に乗り出すことを期待している。
大きなロケットがあるのに、小さなロケットを新たに作るのは、衛星の大きさに応じて、ロケットを選べば、割安になると見られているからである。例えばH2Aは約100億円だが、イプシロンは約38億円。小型衛星を1基打ち上げるのに、大型ロケットを丸ごと調達したら、価格はとても高くなる。ロケットに隙間も空いて無駄だ。このため小型衛星を打ち上げるなら、イプシロンの方が安いという計算になる。
ロケットの目的は商用打ち上げだけではない。技術を維持・発展させ、次世代の研究者や技術者を結集させる重要な役割もある。特にイプシロンは「ペンシルロケット」で知られる糸川英夫博士の流れをくむ、日本の力で開発したロケットである。言わば、日本のロケット技術の象徴的存在。
新型ロケットは3段式で長さ24m、最大直径2.5m、打ち上げ可能な衛星の重さは1.2トン。3段とも固体燃料でつくる。H2Aのように液体燃料を充てんする手間が省け、射場に持ち込んでから1週間以内で打ち上がる。大きさや能力はH2Aの半分以下だが、中小型衛星を短期間に多数打ち上げられる。
またイプシロンでは、情報技術(IT)を駆使して、点検や発射などの作業に携わる人や時間を大幅に削減しようとしている。うまくいけば、低価格化や、日本発の「ロケット打ち上げ革命」につながるかもしれない。
という表向きの利用では納得行く説明にはならないだろう。
ご存じのように日本のH2ロケット技術は、宇宙に衛星を運び宇宙ステーションに物資を届け、再び成層圏に突入し高温を克服し、着地点へピンポイントで戻って来るという世界最高峰の技術を確立している。
惑星間航行速度のまま大気圏突入したカプセルを想定範囲のど真ん中に着地させた日本の技術。核兵器を使わなくともある程度の質量を減衰させないまま、想定地点に正確に落とす技術を日本は持っているということである。質量兵器は、非核三原則にも抵触しない。
アメリカの今使っている対地誘導系のミサイルは日本の技術で煙突の中を狙えるようになった。
このロケットは直ぐにでも大陸間弾道ミサイルとして転用できるものでもある。更に、この新ロケットは世界最高技術の固形燃料を持つロケットである。
液体燃料を注入するH2を始めとする各国の大陸間弾道ミサイルと違い、小型化されトラックや貨物列車、戦艦に搭載も可能な移動式核弾道ミサイルとなり、パソコン程度の大きさの機器で制御が可能で、「モバイル管制」と呼ばれている。
日本は当然平和利用に特化した使用をおこなっているが、法律さえ変えればいつでも軍事兵器として世界最高峰の精密なミサイルと変化するのは事実である。さればこそ米国も日本の武器輸出三原則の変更を心待ちにしているのだろう。