四国の徳島県にある「ジャストシステム」という会社から、今年も「一太郎バージョンアップのご案内」という小冊子の入った封書が届きました。「一太郎」…。懐かしい響きです。ボクらの世代にとって、「一太郎」は間違いなく人生の一定期間において大切なビジネスパートナーでした。
ボクが初めて「一太郎」と出会ったのは、20代半ばの頃だったと思います。半角カタカナしかプリントアウトできなかったそれまでのパソコンで、印刷屋さんのように活字が自由自在に印刷できる「ワープロソフト:一太郎」が使えることは、ボクらにとって産業革命に匹敵する大事件でした。
世間ではようやく1行モニタータイプのワープロ専用機が発売され出した頃です。その後ワープロ専用機(「書院」とか「ルポ」とか)が次々に発売されて人々がワープロを使い始めることになるわけですが、ボクは一貫して「一太郎一筋」の人生を歩み、ワープロ専用機には目もくれませんでした。パソコンが仕事に不可欠になる時代がもうすぐ来るって確信していましたからね。
当時は確か、5inchのフロッピーディスク(死語だ!)上で「一太郎」は動いていたと記憶しています。日本語に変換されるたびに「カシャカシャ」とフッロッピーディスクが音を立てていたのが思い出されます。
20年以上「一太郎」と共に人生を歩んできたボクですが、時代は「Windows」そして「Word」へと流れ移っていきます。「間違いなく『Wordよりも一太郎のほうが優秀だ』『一太郎のほうが使い勝手がいい』」と今もボクは確信していますが、時代の流れには逆らえませんでした。職場で一太郎を使うことが禁止されWordオンリーになってしまっては、もはやお手上げでした。もう15年ほど前になるでしょうか。ボクはWordに乗り換え、マイクロソフトに魂を売り渡しました。
それでも、今でもFAPは「ATOK」を使っていますし、自宅のノートパソコンには旧バージョンの「一太郎」は残してあります。大好きだった「一太郎」と完全に手を切ることはできないでいるのですよ。まぁバージョンアップをするつもりはありませんけどね。現役時代の膨大な「一太郎文書」のデータもありますから、念のためです。
ところが栄華を極めたマイクロソフトですが、ボクが今使っている文書作成アプリの中心は「Word」ではなく「ドキュメント」です。プレゼンアプリは「パワポ」ではなく「スライド」です。表計算アプリは「エクセル」でなく「スプレッドシート」です。使う用語も「ソフト」ではなく「アプリ」になっちゃいましたよ。
嗚呼、時代の流れは恐ろしい。この世は「盛者必衰」。おごれるものは久しからず。平家物語の世界です。ボクは再び、今度はGoogleに魂を売り渡してしまったというわけです。
それでも、「一太郎」とか「ロータス123」とか、まるで昔の彼女と過ごした時を懐かしむように思い出してしまうのですよ。年をとるって、イヤね。でもジャストシステム、まだ頑張っているんだなぁ。これもある意味で「すごい」です。