”瀬尾まいこ”さんの「春、戻る」(集英社)を読了しました。瀬尾さんと言えば、元教員の小説家で、学校などの教育現場を舞台にした小説を多く書いていますよね。ボクも今までにも彼女の作品を何冊か読んでいますが、ホンワカとした温かい気持ちにしてくれる作風で、好きな作家の一人です。
今回読んだ「春、戻る」ですが、ストーリーはこんな感じです。
結婚を控えたさくらの前に、兄を名乗る青年が突然現れた。どう見ても一回りは年下の彼は、さくらのことをよく知っている。どこか憎めない空気を持つその“おにいさん”は、結婚相手が実家で営む和菓子屋にも顔を出し、知らず知らずのうち生活に溶け込んでいく。彼は何者で目的は何なのか。何気ない日常の中からある記憶が呼び起こされていく。
このストーリーだけ読むと、「瀬尾さんにしては珍しく、学校や教育と無縁の小説なのか?」って思うのですが、決してそうでないのが瀬尾ワールドです。主人公のさくらには、県外僻地で小学校教員としての1年間の勤務経験と挫折経験があり、それがこの”おにいさん”の存在に大きく関わっているのです。
この小説は、突然現れた“おにいさん”によって、主人公が過去の出来事を思い出していく物語です。「思い描いたように生きなくてもいい、辛いのなら他の道を進んだっていいんだ」というメッセージが、ボクら読者の心に響きます。優しい人や、優しい言葉が溢れる本ですね。
字が大きくて行間も広くとても読みやすい本で、短時間で読めたのもヨカッタです。