タケ・タケ・エヴリバディ!

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目の見えない白鳥さんとアートを見にいく(書籍)

2024年12月14日 | 読みました!見ました!

ノンフィクション作家・川内有緒(かわうちありお)さんの「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」(集英社インターナショナル)を読了しました。

「あれ?どこかで見たことのある題名だな?」って感じた方、すばらしいです。先月にボクが近代美術館で行われた映写会で見てきた、映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」の原作となったのが、この本なのですよ。

 

目の見えない白鳥さん、アートを見にいく(映画) - タケ・タケ・エヴリバディ!

県立近代美術館(長岡市千秋)で行われた映画会で、映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」を観てきました。この映画は、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんと友人た...

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題名が微妙に違うのは、きっと映画と書籍それぞれの作者に、確固たる意図があるのでしょうね。まずはamazonの書籍紹介から、この本のPR文を引用しますね。


「2022年 Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」受賞! 書店員が選ぶ、いちばん読んでほしいノンフィクションに。発売直後から、数々の反響、すばらしい感想が寄せられた本書です。

「目の見えない人とアートを見る?」タイトルへの素朴な疑問は、驚きとともに解消されます。白鳥建二さんと現代アートや仏像を鑑賞すると、現れるのはこれまで見えていなかった世界。

「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」という著者の友人マイティの一言で、「全盲の美術鑑賞者」とアートを巡るユニークな旅は始まりました。視覚の不思議、アートの意味、生きること、障害を持つこと……などが白鳥さんや友人たちとの会話から浮かび上がってきます。そこに白鳥さんの人生、美術鑑賞をする理由などが織り込まれて…。

軽やかで明るい筆致の文章で、美術館巡りの追体験を楽しみながら、社会を考え、人間を考え、自分自身を見つめ直すことができる、まったく新しいノンフィクションです。


本を読み進めるうちに、「目が見えない人と一緒に美術館で絵を見るってどういうこと?」という疑問が解消し、「これは目の見えない白鳥さんのため」ではなく、「一緒に行く人(健常者)が楽しみむとともに感性を磨く」ってことに大きな意味があるのだ…と、新しい価値観に改めて気づかされました。映画を見た時には、白鳥さんのキャラクターに興味が向き、あまりこのことには考えが及ばなかったので新鮮でした。

ノーマライゼーションに関わる部分も多く散らばりつつ、全体として「芸術鑑賞友達ができていろんなとこ見に行ったよ!」的なノリで追体験できる内容は、とても読みやすく明るい気分にさせられました。中でもボクの心に刺さった部分を、2箇所ほど抜き出しますね。

●「見えるひと」が、「見えないひと」と一緒に作品鑑賞をすると、自分の思い込みや勘違いにたびたび気づかされる。普段、目が見える人々は、膨大な視覚情報にさらされながら生活してるのだが、細かい情報をすべて脳内処理することは不可能なので、目は必要な場所に注目し、必要な情報だけを取捨選択する。同時に必要のないものは視覚に入っても脳内で処理されない。(P118)

●この社会におけるできごとのすべてには異なる視座があり、異なる「正義」がある。経済のため、社会のため、効率のため、会社のため、国家のため。わたしには筆舌に尽くしがたいほど理不尽に感じる福島の原発事故にも、誰かの「正義」がある。どんなに人が苦しんでいても、「それでも原発は必要だ」と固く信じて主張し続ける人もいる。長崎・広島への原爆投下もシリア内戦も、視座が変われば誰かの「正義」がそこにある。そういった「正義」と「正義」はぶつかり合って、砕け散って、その破片はときになんの関係のないひとまで傷つけてしまう。だからもしかしたら、ひとつの正義を信じる自分もまた誰かにとって非道な刃になってるかもしれなかった。「悲劇」を後世に伝えるだけでなく、その多面性、複雑さを理解しながら、一歩ずつ先に進んでいかないといけない。白鳥さんが言わんとすることはそういうことなのではないだろうか。(P113)

う〜ん!なんか人生というか、人間としての生き方についても考えさせられました。いい本にめぐり逢いました。


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