―低周波音とはいったいいかなるものなのか、まずは〈音〉の構成単位であるヘルツとデシベルのお話から始めましょう。―
「低周波音症候群」とは、長年低周波音の測定を行い、被害者救済を切望する汐見文隆医師によって名づけられました。頭痛やめまいなどの不定愁訴は、一般には内因性の自律神経失調症ですが、汐見医師いわく、低周波音被害者の訴える不定愁訴は、外部からの低周波音被曝が原因の不定愁訴であるから、外因性自律神経失調症ということです。
私たちが日常聞いている〈音〉とは、空気が振動し耳の中の鼓膜という器官を震わせ、複雑な聴覚器官と聴覚神経によって脳に伝わり、〈音〉として知覚されます。太鼓を叩くと太鼓の振動が空気に伝わり、太鼓の〈音〉として聞こえる。手で太鼓を押さえ、太鼓の振動を止めると〈音〉も止むという仕組みです。ちなみに振動の伝わる媒体になる空気のない宇宙空間では一切の音が伝わらないため、無限の静寂の世界だそうです。
また、鐘を、木材、スイカを叩くと、大きかったり高かったりくぐもったり、太鼓は太鼓の、鐘は鐘のスイカはスイカの〈音〉がします。それは、素材によって振動や伝わり方が違うことで、聞こええてくる〈音〉が異なるためです。その違いは周波数(ヘルツ)で表わされ、〈音〉の大きさは音圧(デシベル)で表わします。
すべての〈音〉は周波数を持ち、人の話し声は100~400ヘルツ、車は20~50ヘルツ、88鍵のピアノは27.5ヘルツ~4186ヘルツ、時報は440ヘルツ~880ヘルツ等々。低い音は周波数(ヘルツ)が低く、高い音は周波数が高い、そして大きい音は音圧(デシベル)が大きい、と表現します。周波数は音色の高低、音圧は聞こえる大小でしょうか。
可聴音(人間に聞こえる音)の周波数はおおよそ20ヘルツから2万ヘルツ、低くて聞きにくい100ヘルツ以下を低周波音、聞こえない20ヘルツ以下を超低周波音といい、高すぎて聞こえない2万ヘルツ以上を超音波といいます。
音圧(デシベル)はむずかしい数式をはしょっても、かなりややこしいですが、対数表示なので50デシベルと60デシベルの10デシベル差は、20%増しではなく約10倍になります。10が12ではなく100になるのですから詐欺のような話です。現実には50デシベルの発生源が倍の2つになっても3デシベルしか増えないのです。倍の倍で発生源が4つになって6デシベル、8つになって9デシベル、16になっても12デシベル―。かなり簡易にいうと10デシベル差は10倍、20デシベル差は100倍、30デシベル差は1000倍です。
汐見医師によると、低周波音症候群の判断は、低周波音レベル計を用いて、苦情者が苦しいと訴える時を測定します。10~40ヘルツに60デシベル前後のピーク(卓越周波数)が測定されれば、おおむね低周波音被害と認定されます。低周波音発生源のない市街地だと、分析器は40デシベル前後のなだらかな曲線を描きますから、この20デシベル差が100倍の音圧であり、大きな意味を持ちます。
『週刊金曜日』暮らしコラム(2007年9月21日№.671号)津木とねこ
編集部03-3221-8521(禁無断転載)
(単位表記はデシベル;db/ヘルツ;Hzです)
「低周波音症候群」とは、長年低周波音の測定を行い、被害者救済を切望する汐見文隆医師によって名づけられました。頭痛やめまいなどの不定愁訴は、一般には内因性の自律神経失調症ですが、汐見医師いわく、低周波音被害者の訴える不定愁訴は、外部からの低周波音被曝が原因の不定愁訴であるから、外因性自律神経失調症ということです。
私たちが日常聞いている〈音〉とは、空気が振動し耳の中の鼓膜という器官を震わせ、複雑な聴覚器官と聴覚神経によって脳に伝わり、〈音〉として知覚されます。太鼓を叩くと太鼓の振動が空気に伝わり、太鼓の〈音〉として聞こえる。手で太鼓を押さえ、太鼓の振動を止めると〈音〉も止むという仕組みです。ちなみに振動の伝わる媒体になる空気のない宇宙空間では一切の音が伝わらないため、無限の静寂の世界だそうです。
また、鐘を、木材、スイカを叩くと、大きかったり高かったりくぐもったり、太鼓は太鼓の、鐘は鐘のスイカはスイカの〈音〉がします。それは、素材によって振動や伝わり方が違うことで、聞こええてくる〈音〉が異なるためです。その違いは周波数(ヘルツ)で表わされ、〈音〉の大きさは音圧(デシベル)で表わします。
すべての〈音〉は周波数を持ち、人の話し声は100~400ヘルツ、車は20~50ヘルツ、88鍵のピアノは27.5ヘルツ~4186ヘルツ、時報は440ヘルツ~880ヘルツ等々。低い音は周波数(ヘルツ)が低く、高い音は周波数が高い、そして大きい音は音圧(デシベル)が大きい、と表現します。周波数は音色の高低、音圧は聞こえる大小でしょうか。
可聴音(人間に聞こえる音)の周波数はおおよそ20ヘルツから2万ヘルツ、低くて聞きにくい100ヘルツ以下を低周波音、聞こえない20ヘルツ以下を超低周波音といい、高すぎて聞こえない2万ヘルツ以上を超音波といいます。
音圧(デシベル)はむずかしい数式をはしょっても、かなりややこしいですが、対数表示なので50デシベルと60デシベルの10デシベル差は、20%増しではなく約10倍になります。10が12ではなく100になるのですから詐欺のような話です。現実には50デシベルの発生源が倍の2つになっても3デシベルしか増えないのです。倍の倍で発生源が4つになって6デシベル、8つになって9デシベル、16になっても12デシベル―。かなり簡易にいうと10デシベル差は10倍、20デシベル差は100倍、30デシベル差は1000倍です。
汐見医師によると、低周波音症候群の判断は、低周波音レベル計を用いて、苦情者が苦しいと訴える時を測定します。10~40ヘルツに60デシベル前後のピーク(卓越周波数)が測定されれば、おおむね低周波音被害と認定されます。低周波音発生源のない市街地だと、分析器は40デシベル前後のなだらかな曲線を描きますから、この20デシベル差が100倍の音圧であり、大きな意味を持ちます。
『週刊金曜日』暮らしコラム(2007年9月21日№.671号)津木とねこ
編集部03-3221-8521(禁無断転載)
(単位表記はデシベル;db/ヘルツ;Hzです)