演劇知

劇的考察譚

ニュースから~「頭冴える」はワナ…京都~

2012-01-05 23:23:06 | Weblog
葉っぱなどの絵が描かれた7~8センチ四方のパッケージがショーケースに並ぶ。約50種類、1000円未満から数千円まで値段は様々。壁には「禁止薬物は入っておりませんので、安心して購入いただけます」とワープロ打ちされた紙。店側は少量を火であぶり、香りを楽しむことを求めている。
 昨年、この「合法ハーブ」の問題が府内で表面化した。府警によると、火を付けてパイプで吸うと大麻に似た使用感が得られ、興奮作用を持つものもあり、調査で判明しただけで、そうして使った19人(17~41歳)が体調を崩し、意識障害を引き起こしたケースもあった。
 合法、違法の区別なく、あふれる<クスリ>。薬物依存者の社会復帰を支援する民間組織「京都ダルク【クリップ】」(伏見区)の施設長で自身も薬物依存から回復した加藤武士(46)は危機感を強める。「20~30年前までは、薬物の情報を持つ人間を知らないと入手できなかったが今は違う。薬物の垣根は曖昧になり、誰でも手に入れることができる」
 南区出身で30歳代前半のマサト(仮名)の場合は、市販薬だった。
 「集中力が出るし、気持ちよくなる」。高校2年になった直後、席が後ろのクラスメートに実物を見せられた。「薬局で売ってる」。その言葉が耳に残り、帰宅途中、2000円足らずで買い、帰宅後、教えられた通り大量に飲んだ。むせたが、眠気に襲われるような感覚に陥った。すぐに同量を再び服用すると「バチッときまった」。体がふわふわし、そして頭が妙に冴(さ)えた気がした。
 主に使ったのは試験の時。5段階評価で「2」や「3」ばかりだった成績は、「4」か「5」になった。希望していた大学には、指定校推薦での進学も決まった。
 「すごい」。“勘違い”から購入費は膨らみ、お年玉の貯金も尽きた。大学は「3~4日行っただけ」で、アルバイトで購入資金を稼ぐように。その頃から、飲めば何日も起き続け、飲まなければ何日も寝ているという生活が続く。薄々気付いていた親も心配し始め、約1か月間、入院した。
 「すぐにやめられる」。そう思っていたが、退院後、逆にエスカレートした。アルバイトの貯金でクスリを買い、金がなくなると、親のかばんやゴルフクラブを質屋に持ち込み、預金通帳を勝手に使って金を引き出した。「迷惑をかけて申し訳ないというより、使い続けたい気持ちが強かった」
 やがて体は悲鳴を上げる。下痢は止まらず、イライラして寝られない。だるさも抜けない。変化のきっかけは25歳の時。親が見つけたダルクに通い始めた。同じ苦しみを持つ仲間と体験を隠さず話す。「逃げ場がない」と思うと同時に、「自分だけ使うことはできない」と考えるようになった。
 以来、クスリに手は出していない。だが、体調は完全には戻っておらず、「もう一度……」との思いが消え去った訳でもない。
 昨年11月、同志社大、立命館大など「関関同立」の4大学が昨春の新入生を対象にした「薬物に関する意識調査」結果を発表した。薬物絡みで2008年、大学生の逮捕が各地で相次いだことを受け、翌09年から毎年実施している。
 この中で「絶対に使うべきではないし、許されない」としたのは92・3%で前回より0・5%減り、「他人に迷惑をかけなければ、使うかどうかは個人の自由」と答えたのは6・4%で前回より0・8%増えた。
 わずかとはいえ、薬物根絶を目指す社会の流れと逆行する結果。回答者の多くは、少し前まで高校生だった少年少女で、調査にあたった同志社大学生支援課長の西川真司(47)は「薬物問題への感心の低下が推測される」と危惧している。(読売新聞)



抑止力になるものは想像力である。使った際の短期的な想像力でなく、その後も続くであろう長期的な想像力である。そのためには「何故いけないのか」ということを徹底して指導する必要がある。

テレビドラマ金八先生で薬物問題を取扱ったシリーズがあった。わたしの周りの人間は「やり過ぎだ」といった声をあげていた。それくらい描写が激しく痛々しかったのだが、それを見れば知識が無い人間も薬物を取り込んだらどうなるかということが分かる。登場人物と視聴者が同年代であれば、登場人物に自身を当て嵌めて考えることも出来る。

そう考えると問題意識を持つために必要なものは、問題と己とを繋ぐ共感点であるといえる。