弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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労契法19条の適用により雇止めが制限された場合,どのような法律効果が生じるのですか?

2012-12-18 | 日記
Q230 労契法19条の適用により雇止めが制限された場合,どのような法律効果が生じるのですか?


 労契法19条の適用により雇止めが制限された場合,使用者は,従前の有期労働契約の労働条件と同一の労働条件(契約期間を含む。)で,労働者からの有期労働契約の更新または締結の申込みを承諾したものとみなされることになります。
 これは,有期労働契約の更新または締結の申込みに対する使用者の承諾を擬制することにより有期労働契約の更新または締結を認めるものであり,従来の雇止め法理が解雇権濫用法理の類推適用(濫用論)で処理していたのとは効果が異なります。
 また,本条では,契約期間についても,従前の有期労働契約の労働条件と同一であることが明確にされています。

弁護士 藤田 進太郎

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労契法19条の「当該契約期間の満了後遅滞なく」

2012-12-18 | 日記
Q229 労契法19条の「当該契約期間の満了後遅滞なく」とは,どれくらいの期間のことをいうのですか?


 労契法19条が適用されるためには,有期労働契約者による有期労働契約の締結の申込みは,当該契約期間満了後遅滞なくなされる必要があります。
 この要件が加えられることにより,使用者が契約期間終了後長期間不安定な法的状態に置かれ続けることを防止することができ,法的安定性に資することになります。
 もっとも,「当該契約期間の満了後遅滞なく」という要件は,必ずしも法律に詳しいわけではない労働者側に要求される要件であることを考慮すれば,比較的緩やかに解釈されることが予想されるところです。
 基発0810第2号平成24年8月10日「労働契約法の施行について」においても,「法第19条の『遅滞なく』は,有期労働契約の契約期間の満了後であっても,正当な又は合理的な理由による申込みの遅滞は許容される意味であること。」とされています。

弁護士 藤田 進太郎

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労契法19条の「更新の申込み」や「締結の申込み」

2012-12-18 | 日記
Q228 労契法19条の「更新の申込み」や「締結の申込み」があったといえるためには,どの程度のものが必要ですか?


 労契法19条の「更新の申込み」や「締結の申込み」があったといえるためには,有期契約労働者が雇止めに対し異議を表明したと評価できる必要があり,かつそれで足りるものと考えられます。
 基発0810第2号平成24年8月10日「労働契約法の施行について」では,「法第19条の『更新の申込み』及び『締結の申込み』は,要式行為ではなく,使用者による雇止めの意思表示に対して,労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよいこと。」「また,雇止めの効力について紛争となった場合における法第19条の『更新の申込み』又は『締結の申込み』をしたことの主張・立証については,労働者が雇止めに異議があることが,例えば,訴訟の提起,紛争調整機関への申立て,団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよいと解されるものであること。」とされています。

弁護士 藤田 進太郎

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有期労働契約者による有期労働契約の更新または締結の申込み(労契法19条)

2012-12-18 | 日記
Q227 労契法19条で,有期労働契約者による有期労働契約の更新または締結の申込みが新たに要件として規定されたのは,どうしてですか?


 従来の雇止め法理では,解雇権濫用法理の類推適用(濫用論)で処理されていたこともあり,有期契約労働者による有期労働契約の更新または締結の申込みは要件とはされていませんでした。
 これに対し,労契法19条は有期労働契約の申込みに対する使用者の承諾を擬制することにより有期労働契約の更新または成立を認めるものであるため,有期労働契約者による有期労働契約の更新または締結の申込みが新たに要件として規定されました。

弁護士 藤田 進太郎

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「当該有期労働契約の契約期間の満了時」(労契法19条2号)

2012-12-18 | 日記
Q226 労契法19条2号では,更新に対する合理的期待の判断時期が「当該有期労働契約の契約期間の満了時」であると規定されましたが,従来の雇止め法理と異なる解釈がなされると思いますか?


 労契法19条2号では,更新に対する合理的期待の判断時期が「当該有期労働契約の契約期間の満了時」であると規定されています。
 これは従来の雇止め法理では明示されていなかった要件です。
 新たな要件が明示されたことで,従来の雇止め法理と異なる解釈がなされるのかどうかが問題となりますが,ほとんど結論に影響がないのではないかと思います。
 基発0810第2号平成24年8月10日「労働契約法の施行について」では,「なお,法第19条第2号の『満了時に』は,雇止めに関する裁判例における判断と同様,『満了時』における合理的期待の有無は,最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されることを明らかにするために規定したものであること。したがって,いったん,労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず,当該有期労働契約の契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても,そのことのみをもって直ちに同号の該当性が否定されることにはならないと解されるものであること。」とされています。

弁護士 藤田 進太郎

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労契法19条は,従来の雇止め法理と同じ内容と考えてよさそうですか?

2012-12-18 | 日記
Q225 労契法19条は,従来の雇止め法理と同じ内容と考えてよさそうですか?


 基発0810第2号平成24年8月10日「労働契約法の施行について」では,「法第19条は,次に掲げる最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)の内容や適用範囲を変更することなく規定したものであること。」とされています。
 しかし,従来の雇止め法理では解雇権濫用法理の類推適用(濫用論)で処理されていたのに対し,本条は使用者の承諾みなしを規定したものであり,本条の構造は従来の雇止め法理とは異なっています。
 もっとも,雇止め法理を制定法化して明確化を図るという立法趣旨からすれば,本条の解釈にあたっては従来の雇止め法理が参考にされるものと考えられます。

弁護士 藤田 進太郎

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有期契約労働者の契約期間が満了したことを理由として辞めてもらう場合のトラブル

2012-12-18 | 日記
Q224 有期契約労働者の契約期間が満了したことを理由として辞めてもらう場合でも,トラブルになるリスクはありますか?


 有期労働契約は,契約期間が満了すれば,契約は当然に終了するのが原則です。
 しかし,労契法19条の要件を満たす場合は,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で有期労働契約者からの有期労働契約の更新の申込み又は有期労働契約の締結の申込み当該申込みを承諾したものとみなされるため,雇止めをしても労働契約を終了させることはできません。
 新労契法19条は,東芝柳町工場事件最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決,日立メディコ事件最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決等の最高裁判決で確立している雇止め法理を制定法化して明確化を図り,認識可能性の高いルールとすることにより,紛争を防止する趣旨の条文と説明されています。




(有期労働契約の更新等)

19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって,使用者が当該申込みを拒絶することが,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。



弁護士 藤田 進太郎

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