「ご注意ください」
というMeiji Seikaファルマの一面広告。お詫びの広告かと思いきや、ファルマの新しいタイプ(レプリコンワクチン)の新型コロナワクチン「コスタイベ」の接種拒否について誤った認識への対応です。
さて、問題になっているのは、”コスタイベ筋注“に対して8月7日付けで日本看護倫理学会(JNEA)が「現段階において拙速にレプリコンワクチンを導入することには深刻な懸念を表明します。」と緊急声明を表明したことに対して、Meiji Seikaファルマ(MP)が10月9日づけで見解を公表しています。
それぞれの主張を簡単にまとめると、JNEAは、レプリコンワクチンに対して安全性に関する懸念があり、ワクチンの新しさや長期的なデータの不足を理由に、慎重な対応を求めており、MPは、レプリコンワクチンの安全性と有効性について科学的データについて、製造販売承認に至った既存の研究や臨床試験の結果を示しています。
レプリコンワクチンに対するJNEAの懸念は主に、開発国や先行治験国で認可されていないこと、レプリコンワクチンが「自己複製する mRNA」であるために、レプリコンワクチン自体が接種者から非接種者に感染(シェディング)する懸念があること、です。2つ目の懸念がSNSで拡散され、医療に関わる学会の声明だけに、フェイクとは思えないのが拍車を掛けた、コスタイベを打った人は入店禁止になるなど世間を騒がすことになったと考えられます。
JNEAの懸念に対してMPは下記のように見解を述べています。
- ヨーロッパで承認申請がなされ最終段階にあること、アメリカその他においても申請準備が進んでいること、日本では厳しい基準で実施した臨床試験の結果により有効性と安全性が確認されて厚生労働大臣が承認したものであり、安全性に懸念があるから海外で承認されてないというのは憶測で事実誤認である。
- mRNAワクチンは、スパイクタンパクというウイルスの一部分を使用しているので、感染性のあるウイルスを形成することはない。
ここで免疫とワクチンについてちょっと寄り道します。
免疫のタイプにも色々ありますが、抗体による異物(病原体)排除にフォーカスします。ウイルスなど病原体が体内に入ると、B細胞という免疫細胞がその病原体専用の抗体を作り、病原体にくっついて力を弱めて体外へ排出します。
B細胞は病原体のタンパク質(つまりアミノ酸のつながったもの)のアミノ酸の並び方(バーコード)を記憶します。2回目に病原体が入ってきたときはバーコードを読み取って、専用の抗体を素早く作ります。これを獲得免疫と言い、ワクチンは獲得免疫を利用します。
病原体のウイルスは自分自身で増殖することができないので、動物の細胞に入り込んで細胞をタンパク質の工場として利用して自分自身を複製増殖し、細胞の外へ出て行き、呼気などを通じて他人へ感染します。
ワクチンは、ウイルスのバーコードを予め体内に送り込んでおくことで、人工的に獲得免疫をつくり、準備するためのものです。
バーコードを何にするかによってワクチンの種類が異なります。インフルエンザワクチンのような従来のタイプのように、殺したウイルス(ウイルスは生きものではないので殺すという表現は相応しくない)の一部をバーコードとするのが(不活化ワクチン)です。麻疹や風疹で使われているウイルス本体を弱毒化した生ワクチンタイプのあります。
ファイザー(コミナティ)とかモデルナ(スパイクバックス)いう名前で知られるようになった新型コロナワクチンは、ウイルスの一部分(スパイクタンパク)のバーコードとして、体内の細胞でそのスパイクタンパクを作らせるための設計図を使うタイプで、この設計図がmRNAで、遺伝子組換えワクチン、mRNAワクチンもと呼ばれます。
MPのコスタイベは、細胞がタンパクを作るときに働くレプリカーゼという酵素も混ぜておいて効率的にmRNAを作らせるもので、レプリコンワクチンと呼ばれます。mRNAを使います。つまり、レプリコンワクチンはmRNAワクチンの進化形であり、ファイザーのmRNAワクチンよりもmRNAの量を少なくして、効果が持続するという利点があります。
JNEAの声明にある“シェディング”という言葉は、元々は英語で「取りのぞく、離れる、放つ」を意味する“shed”であり、生物学では「細胞内(工場)で作られたタンパク(ウイルス粒子)を細胞(工場)の外へ”出す”(参考:
Wikipedia)」という意味で使われるそうです。
悲しいかな、誰かが“シェディング”を「感染する」と日本語訳したのでしょうか、レプリコンワクチンの安全性への懸念の元になっているようです。感染という意味で使ったとして、病原性のないスパイクタンパクが感染しても新型コロナ感染症を引き起こすとは思えないです。むしろ、他人のつくったスパイクタンパクが獲得免疫を作ってくれるかも知れません。
閑話休題、コスタイベの研究結果は、厚生労働省のHPで公開されています。
ただ、厳しい審査を経て承認されたコスタイベであっても100%安全である)と言うのは難しい話です。以前のブログ「悪魔の証明」でお話ししたように、副反応が起こることが0%であることは証明できないので、代わりに、現時点でのデータに基づいてリスクが低いと評価されることが一般的です。JNEAの懸念の一つ、「mRNAがDNAそのものに影響を及ぼすのではないか(ヒトでの逆転写酵素の有無)」についても可能性はゼロではありません。ゼロあることを証明するのは悪魔の証明です。だからMPは、承認を得た科学的根拠をと述べているのです。
それに対して、科学的根拠のないJNEAの声明は憶測と(おそらく)感情的なもので稚拙という印象を受けました。
Meiji Seikaファルマは名誉毀損で反ワクチン団体を提訴するに踏み切ったようです。
コスタイベを承認した厚生労働省は9月17日に武見敬三・厚生労働大臣(当時)が、問題ないと表明し、昨日(10月18日)に武見敬三・前厚生労働大臣がコスタイベを公開接種したそうです。ファイザー製のコロナワクチンの時も、同じようなパフォーマンスがあったような・・・。
レプリコン問題はこの先、どうなることやら。いずれにしても、新型コロナに罹らない、ウイルスを感染させないことが大事です。感染者数が減少傾向にあり、ウイルスの毒性も弱くなってきているとは言え、後遺症は気になると琴です。特に高齢者、基礎疾患のある方、そしてその周りの方は、注意が必要ですね。免疫でウイルスから身を守るためには、タンパク質を中心にバランス良く栄養をしっかり摂って免疫細胞を元気にしておくことも対策の一つ。
Amazonのアソシエイトとして、yokochantarogooは適格販売により収入を得ています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます