私的解釈『善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや』

浄土真宗の開祖、親鸞聖人の教えとして『歎異抄』にあるこのフレーズ、知らない人の方が少ないだろうし、意味も何となくどこかで聞いたことがあるだろう。しかしこの教え『悪人正機』は、親鸞聖人が突然変異的に発明したものではなく、日本における仏教の受容と発展の中で、段階的に育まれてきたものであった。
釈迦が入滅してから千五百年、あるいは二千年経つと、正しい教えが失われ、どんなに修行しても自力で往生することができなくなる、末法の世が来ると言う(末法思想)。
釈迦入滅の年は不明なので、いつから末法の世がはじまるかについては諸説あるが、日本では永承七(一〇五二)年が末法の始まりであると信じられ、人々に恐れられた。実際、平安後期の日本はと言うと、政治は藤原氏の専制が進み、庶民は戦乱や飢餓や疫病に怯え、救うべき僧侶は武装して(僧兵)現世利益を貪るというありさまであったから、人々が末法の到来を実感したのも無理からぬこと・・・(続く)

