池袋の通り魔事件と四面塔

池袋の通り魔事件と四面塔

池袋の不思議スポットで四面塔という史跡がある。奇妙な名前の史跡だが、この史跡は通り魔・辻斬りという凶悪犯罪の犠牲者を慰撫し、その犯罪の発生を封じ込める霊的システムである。

　事件は、今から約２８０年前の享保年間までさかのぼる。高田雑司ヶ谷から板橋へかけての街道と、礫川から東長崎へかけての街道の交わる四ツ辻付近(現在の西武線池袋駅東口)にて、夜間に通り魔や辻斬りが横行した。毎日死者がでる始末で、多い日には17人もの犠牲者が出たとされている。その為、地元住民は恐れ、夜間の往来が途絶えてしまい、その対策としてこの史跡が設置されたというわけだ。

　なお日本では珍しい四面塔だが、カンボジアのアンコール・トムのバイヨン寺院にもある。観音菩薩の顔をかたどった仏教建造物であるのだが、池袋の四面塔も、観音様の力で通り魔・辻斬りの犯人の狂気を癒し、犠牲者の成仏を願うという意図があるのであろうか。

　だが、再び悲劇は発生した。平成１１年９月８日の午前１１時頃、人々で賑わう東急ハンズ池袋店前で、通り魔事件が発生した。造田博容疑者が通行人など８人に包丁で襲い掛かったのだ。「犯人も学歴社会の犠牲者」とマスコミは容疑者を持ち上げたが、女性２人が死亡、６人が重軽傷を負ったこの事件は決して許されるものではない。悲しい事だが、四面塔によって封印されたかつて呪いは、平成の世に再び発動したのだ。


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