千葉妖怪伝説    ぴちゃぴちゃ小僧 

千葉妖怪伝説    ぴちゃぴちゃ小僧    
                              山口敏太郎

利根川は、千葉と茨城両県に豊富な水の恵みを与えているのだが、同時に圧倒的な水の脅威は様々な怪異伝説を生み出している。銚子の町には、「ぴちゃぴちゃ小僧」の伝説が密かに語られている。この妖怪「ぴちゃぴちゃ小僧」は利根川に住んでおり、時折人里に姿を現すという。雨の降る夜に家々の戸を叩いて廻るらしい、しかも、この時「ぴちゃぴちゃ」と気味の悪い足音をたてることからその名前がある。聞く分には、河童の一種のような気もするのだが、家々の戸を叩いて廻るというのが「亡魂(ぼうこん)」っぽい。つまり、水死者の霊である。但し、「ぴちゃぴちゃ」という近代に成立したと思われる音の表現が妖怪名に使用されている事から、意外と新しい妖怪なのかもしれない。
それにしても、「ぴちゃぴちゃ」という擬音のイメージはポジティブなものはない。どうしても液体がらみの仕草を連想してしまう。水で手足を遊ばせる擬音、雨の日の足音、そして男女の猥褻な絡み合い、そして唾液の音。これらの事からこの擬音が妖怪化した理由がなんとなく見えてくる。
驚くべき事に、伝承上では「小僧」と言いながら誰も見ていない。では何故この妖怪が、「小僧」なのかというと、「ぴちゃぴちゃ」という怪奇な足音には「小僧」が一番フィットするからである。「小僧」なら水中からあがって「ぴちゃぴちゃ」という足音をたてても不思議ではないキャラ設定であるからだ。これが「さらりさらり」「カランコロン」という足跡であれば女の妖怪になったのであろうし、「どすんどすん」「ばたんばたん」なら巨人・大入道タイプの巨漢の妖怪となったはずであろう。
 妖怪の伝承で、妖怪の姿が文中にある事は稀である。大概はよくわからない姿であったり、ただぼんやりと白いだけとか、黒いだけとか。その正体はいずれも不明である。また音しか聞こえなかったり、声や音楽、匂いや光・炎しか見えない場合も多い。しかるにこの妖怪も毎夜「ぴちゃぴちゃ」という足音しか聞こえない怪異であったのであろう。その怪異に小僧という名前とボデイの設定を与える事で妖怪化したのである。
 では人は何故、怪異を妖怪化するかと言うと、それは怪異を「妖怪」にすれば、一応説明がつき、正体不明の怪異という現象が解決するからである。日本において、名前をつける行為は、その現象に対し謎解きをする所作に近い。つまり、名前をつけて飼い慣らすのである。こうなると、怪異現象があっても、「○○小僧だろ」という一応の説明がつく。妖怪なら仕方ないやという妥協が生まれるのである。言い換えると、不思議を妖怪化するのは、日本人が一応安心する為のシステムであるのだ。
無論、インターネットの中にも妖怪は生まれつつある。謎のフリーズや、意味不明の故障などは「サイバーゴースト」、回線を移動する幽霊、死に神の開くホームページなどがあるのだ。当然、これは人間のネットへの潜在的恐怖感を説明する為に生まれた現代の妖怪なのだ。
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