『累』と祐天上人
古典怪談の一つである『累』は、『四谷怪談』と同じく実話を元にした怪談である。
明治期の落語家・三遊亭圓朝によって『真景累ヶ淵』として語り直されることによって人口に膾炙(かいしゃ)したが、初出は元禄三年(一六九〇年)に出版された仮名草子本『死霊解脱物語聞書』。浄土宗の教化のために書かれた本である。
『死霊解脱物語聞書』において、累の物語は、時間を遡る形で描かれる。
寛文十二年(一六七二年)、下総国岡田郡羽生村の百姓・与右衛門の娘・菊に怨霊がとり憑き、菊を苦しめ、村人を悩ませた・・・(この続きはこちらから)